わけあって美少女達の恋を手伝うことになった隠キャボッチの僕、知らぬ間にヒロイン全員オトしてた件

果 一

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第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる

第26話 関係が変化しつつある予感

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 恥も外聞も捨ててプロに丸投げしただけはある。
 結論から言えば、南嶋先輩コーディネイト大作戦は、かなり良い感じに仕上がったと言えよう。

 ゆるふわコーデにもいろいろあるらしく、さっきのものよりも全体的にゆったりとした印象を与える空色のワンピースをチョイス。
 派手な色の髪はシュシュでポニーテールに括り、さらには小物類で少し年上の落ち着いた物腰を与えるようにしてくれている。

 あとは、派手なネイルを落とせば更にグッと清楚系ヒロインに近づきそうだが、まあここは勢滝卯を言わないでおこう。
 
 店員さんに選んでもらった服を買って、着たままなのはいいものの、やはり慣れないのか、気恥ずかしそうにしながら僕の隣を歩く南嶋先輩。
 
 ふむ、道行く人達の視線を感じる。
 さっきまでは、目のやり場に困る格好をしていたからか、南嶋先輩を見た瞬間頬を赤らめて目を逸らしてしまう人も多くいたのだが――今は、むしろ見とれる人の方が多い。

 あ、あそこのカップル。男性が南嶋先輩に見とれてたせいで、彼女に耳引っ張られてる。
 ざまあみろ、リア充め。(なお、端から見たら僕もそう見える可能性があることには気付いていない)

「しかし、僕の見立ては完璧だったな」
「……お前は店員に泣きついただけだろうが」

 そう言われてしまうとぐうの音も出ない。
 南嶋先輩はなぜか少しふて腐れたように、ぼそりと呟いた。

「まったく、男なら「どんな服でも似合っている」と言うのが甲斐性だろうが、普通。なんでプライドを通さず店員に頼むんだ」
「なんでって、それは――」

 そんなこと、最初から決まってる。

「―― 

 僕が可愛いと言うために、南嶋先輩を連れ回しているわけではない。
 大前提としてこれは、形だけのデートだが、忘れるな。僕はモテない陰キャ。彼女の思い人は、他にいるのだ。
 だったら、変に浮かれるべきではない。彼女の恋を成就させるために、全力を尽くすべきなのだ。

「そ、そうだな。……そう、だったな」

 歯切れ悪く答える南嶋先輩。
 心なしか、少し寂しそうにも見えるのはなぜだろう。
 僕は少し疑問に思いながらも、

「その格好、粕壁先輩が見たら「可愛い」って言ってくれるといいですね」

 勇気づけるように、そう続ける。
 しかし――返ってきた言葉に、僕はほんの少しだけ時を忘れた。

「お前は、言ってくれないのかよ」

 ……。
 …………え?

「どういう、意味ですか?」
「え、あ、あれ? ……な、なんでもねぇよ」
「いや、なんでもないってことは――」
「なんでもねぇって言ってんだろ、いいから忘れろ!」

 言った本人すら困惑しているのか、慌てたように叫ぶ南嶋先輩に気圧されて、僕は思わず肩をビクリと震わせる。
 清楚系の見た目で普段の迫力――ううむ、ギャップ萌え……というよりは、普段温厚な教師がぶち切れたときのような怖さがあるな。

 しかし、気まずいな。
 少しの間、距離を開けた方がいいかもしれない。なにやら、南嶋先輩も困惑気味なようだし。

「あの、僕お手洗い行ってきますね」
「お、おうわかった。ウチはそこの楽器屋の前で待ってっから」

 どことなくぎこちない雰囲気を残し、僕等は別れた。

――。

 洗面器で手を洗いながら、僕は物思いに耽る。
 さっきの南嶋先輩の表情は、いったい何だろう。それに、あの発言の意味は?

「ただ、似合ってるって僕の口からも言って欲しかった……ってだけだよな?」

 それ以外考えられない。
 女心というのは、つくづく難しいなと思う。

 とりあえず、気を取り直して彼女の元へ向かうとしよう。
 そんな風に考え、僕はお手洗いを後にした。

 南嶋先輩が待っていると告げたのは、この先にある楽器屋さんだったか……ん?
 楽器屋の正面入り口をみつけた僕は、しかしそこで足を止めた。

 入り口の前に、美女がいる。
 それはもちろん南嶋先輩なのだが……僕の目には他にも数名の男を映していた。
 南嶋先輩に群がる3人の高校生と思しき男子達……あれは、ナンパか?
 
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