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第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる
第27話 あの生意気な後輩に、何を求めているのだろうか?
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《南嶋柚香サイド》
「はぁ~、やっちまった」
楓がトイレに消えていったあと、1人残されたウチは深々とため息をついた。
その理由は、他でもない。
――「お前は、言ってくれないのかよ」――
あのとき、確かウチはそんなことを言っていた……気がする。
一体、なんてことを口走っているんだろうか?
これではまるで、楓に「可愛い」と言って欲しいみたいじゃないか。
再度ため息をついて、自分の胸に手を当ててみる。
ウチが好きなのは、粕壁燐斗。
それは今も変わっていないはずだ。でも……同時に、あのちょっと可愛くて生意気な後輩が、ウチのことを見ていない気がして、すごく胸が苦しくなる。
ウチは、自分で自分のことがチョロい人間だとわかっている。
この性格と見た目のせいで、今まで彼氏の1人もできたことがない。だからウチは、そういうものに憧れをもっているし、好きだと言ってくれた人のことを好きになる、そんな単純な女なのだと思う。
でも、ここにきてわからなくなった。
ウチは一体、あのお人好しで生意気な後輩に、何を期待しているんだろうか?
と、そのときだった。
「なあなあ、そこのお姉さん。ちょっくら俺達と遊ばねぇ?」
ぶっきらぼうな声が、投げかけられた。
睨みつけるように前を見ると、そこには3人の男がいた。
派手な色に染めた髪に、ピアスやネックレス。典型的な、チャラい男達だった。
「あん? なんの用だよ」
この手の突っかかってくる輩は今までにも多くいた。
身の程を弁えない、弱いヤツらだ。まあ、路地裏ではなくショッピングモールで喧嘩を売ってきたあたり、度胸はあると見てもよいか?
ウチは臨戦態勢を取り、常に3人の挙動が見える位置に僅かに向きを変える。
さあ、どこからでもかかってきやがれ――
「なんの用って……今言ったろ。俺達とショッピングモールを回らねぇかって意味だよ」
「……は?」
拳を握ったまま硬直してしまう。
ショッピングモールを回らないか? って、何かの隠語……じゃないよな?
だというのならば、これはまさか……な、ナンパ!?
「な、なな、な……」
ウチは、口をパクパクしたまま思考停止に陥っていた。
まず、大前提としてウチにはナンパされた経験などまったくない。これが初めてだ。ただ喧嘩をふっかけてきた相手なら、コテンパンにしてやっただろうが……その、こ、好意を向けてきた相手には、どう接すればいい?
「いや、あの。そんなことをいきなり言われても、困ると言うか……」
普段のウチを見ている人ならば、卒倒するようなことを呟くことしかできない。
「(なあ? やっぱりチョロいだろ)」
「(ああ、この分だとヤらせてくれるかもしれねぇな)」
「(何かしら理由こじつけりゃ、いいように転がせるって。このタイプのアマはよぉ)」
何やらウチに熱烈な視線を向けつつ、ひそひそと話しているが、その話は耳に届かない。
「なあ、お姉さんよぉ。俺等と楽しいことしようぜ?」
まだ心の準備ができていないウチへさりげなく手を伸ばしてくる1人の男。
正直、思考が追いつかないまま、それを呆然と眺めているしかなく――
パシンッと。乾いた音が響いた。
見れば、男の手を横から誰かの手が叩いていた。
「ってぇな! 誰だよ! 邪魔すんのは!」
不機嫌そうに舌打ちした男と同時に、ウチの視線もそちらへ向けられる。
すぐ横に――見慣れた人影が立っていた。
小柄な体躯ながら、その目には芯の通った光を宿した、憎たらしい後輩の姿があった。
「はーい、お兄さん達そこまで」
楓は、にこやかにそう告げて、ウチと男達の間に身体を滑り込ませる。
「あ? んだよテメェ」
「まさか、コイツの彼氏! ……には見えねぇが」
訝しむような目線を向けてくる男達にはもう用はないとばかりにウチの方を向いて。
「さ、行こ姉さん。母さん達もフードコートで待ってるから」
「え、あ、ちょ……!」
姉さん?
姉さんって、ウチのことか!?
ていうか、ちょっと待ってくれ! アイツ等は、放っておいていいのか!?
そんな風に疑問に思うも、口にする隙は与えないとばかりにぐいぐいと手を引っ張ってくる。
ちらりと後ろを振り返ると、
「ちぇっ、家族連れかよ」
「惜しいな……上玉だったのによぉ」
などという言葉が聞こえてきたが、直後に前を行く楓からの有無を言わせぬ言葉で、全部吹き飛んだ。
「正直……僕、怒ってますよ」
「はぁ~、やっちまった」
楓がトイレに消えていったあと、1人残されたウチは深々とため息をついた。
その理由は、他でもない。
――「お前は、言ってくれないのかよ」――
あのとき、確かウチはそんなことを言っていた……気がする。
一体、なんてことを口走っているんだろうか?
これではまるで、楓に「可愛い」と言って欲しいみたいじゃないか。
再度ため息をついて、自分の胸に手を当ててみる。
ウチが好きなのは、粕壁燐斗。
それは今も変わっていないはずだ。でも……同時に、あのちょっと可愛くて生意気な後輩が、ウチのことを見ていない気がして、すごく胸が苦しくなる。
ウチは、自分で自分のことがチョロい人間だとわかっている。
この性格と見た目のせいで、今まで彼氏の1人もできたことがない。だからウチは、そういうものに憧れをもっているし、好きだと言ってくれた人のことを好きになる、そんな単純な女なのだと思う。
でも、ここにきてわからなくなった。
ウチは一体、あのお人好しで生意気な後輩に、何を期待しているんだろうか?
と、そのときだった。
「なあなあ、そこのお姉さん。ちょっくら俺達と遊ばねぇ?」
ぶっきらぼうな声が、投げかけられた。
睨みつけるように前を見ると、そこには3人の男がいた。
派手な色に染めた髪に、ピアスやネックレス。典型的な、チャラい男達だった。
「あん? なんの用だよ」
この手の突っかかってくる輩は今までにも多くいた。
身の程を弁えない、弱いヤツらだ。まあ、路地裏ではなくショッピングモールで喧嘩を売ってきたあたり、度胸はあると見てもよいか?
ウチは臨戦態勢を取り、常に3人の挙動が見える位置に僅かに向きを変える。
さあ、どこからでもかかってきやがれ――
「なんの用って……今言ったろ。俺達とショッピングモールを回らねぇかって意味だよ」
「……は?」
拳を握ったまま硬直してしまう。
ショッピングモールを回らないか? って、何かの隠語……じゃないよな?
だというのならば、これはまさか……な、ナンパ!?
「な、なな、な……」
ウチは、口をパクパクしたまま思考停止に陥っていた。
まず、大前提としてウチにはナンパされた経験などまったくない。これが初めてだ。ただ喧嘩をふっかけてきた相手なら、コテンパンにしてやっただろうが……その、こ、好意を向けてきた相手には、どう接すればいい?
「いや、あの。そんなことをいきなり言われても、困ると言うか……」
普段のウチを見ている人ならば、卒倒するようなことを呟くことしかできない。
「(なあ? やっぱりチョロいだろ)」
「(ああ、この分だとヤらせてくれるかもしれねぇな)」
「(何かしら理由こじつけりゃ、いいように転がせるって。このタイプのアマはよぉ)」
何やらウチに熱烈な視線を向けつつ、ひそひそと話しているが、その話は耳に届かない。
「なあ、お姉さんよぉ。俺等と楽しいことしようぜ?」
まだ心の準備ができていないウチへさりげなく手を伸ばしてくる1人の男。
正直、思考が追いつかないまま、それを呆然と眺めているしかなく――
パシンッと。乾いた音が響いた。
見れば、男の手を横から誰かの手が叩いていた。
「ってぇな! 誰だよ! 邪魔すんのは!」
不機嫌そうに舌打ちした男と同時に、ウチの視線もそちらへ向けられる。
すぐ横に――見慣れた人影が立っていた。
小柄な体躯ながら、その目には芯の通った光を宿した、憎たらしい後輩の姿があった。
「はーい、お兄さん達そこまで」
楓は、にこやかにそう告げて、ウチと男達の間に身体を滑り込ませる。
「あ? んだよテメェ」
「まさか、コイツの彼氏! ……には見えねぇが」
訝しむような目線を向けてくる男達にはもう用はないとばかりにウチの方を向いて。
「さ、行こ姉さん。母さん達もフードコートで待ってるから」
「え、あ、ちょ……!」
姉さん?
姉さんって、ウチのことか!?
ていうか、ちょっと待ってくれ! アイツ等は、放っておいていいのか!?
そんな風に疑問に思うも、口にする隙は与えないとばかりにぐいぐいと手を引っ張ってくる。
ちらりと後ろを振り返ると、
「ちぇっ、家族連れかよ」
「惜しいな……上玉だったのによぉ」
などという言葉が聞こえてきたが、直後に前を行く楓からの有無を言わせぬ言葉で、全部吹き飛んだ。
「正直……僕、怒ってますよ」
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