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第一章 《最下層追放編》
第二十二話 クレアの力と謎
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「エランくん!」
鈴なりのような声がした。
死を目前にして張り詰めた空気の中で、その声はまるで静かな水面に広がる波紋のように研ぎ澄まされていて――
刹那、硬い何かが別の何かに当たって砕けるような音が、断続的に響いた。
意識を瞬時に刈り取る痛みと衝撃を覚悟していたのに、一向にそれがやって来ない。
不思議に思い、おそるおそる目を開く。
「こ、これは……?」
思わず目を白黒させる。
僕も含めた地面に倒れている人達を丸ごと覆う薄黄色の光のドームが、直上に張り巡らされているではないか。
降ってきたジャイアント・ゴーレムの残骸は、そのことごとくが光のドームによって防がれ、ドームの傾斜によって端の方まで滑り落ちていた。
「助かった……のか?」
でも、一体誰の仕業なんだ……
頭の上に「?」マークが浮かんだそのとき。
「おーい、大丈夫? エランくん!」
『ももきゅ!』
パタパタと足音を立てて、クレアととーめちゃんが駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫……ちょっと血を吐いて意識がもうろうとしてるだけ」
「それ大丈夫とは言わないと思うけど!?」
目を見開いてツッコミを入れてくるクレアに、軽く微笑み返す。
「誰かが助けてくれたみたいで、助かっ――」
僕は、言いかけていた言葉を飲み込んだ。
僕の目が、信じられないものを捉えていたからだ。
「どうしたの?」
「いや……お前」
きょとんと首を傾げるクレアの手を見る。
細い指先から、まるで煙が立ち上るように薄黄色の靄が出ており、その靄は上に張られたドームへと続いている。
まるで、クレアが光のドームを生み出したかのような構図だ。
「もしかして、このドームを出したのって、クレア?」
「ん? たぶんそう」
「たぶんて……何その曖昧な答えは」
「だって、私もよくわかんないんだもん。皆がピンチで、「助けなきゃ」って思ったら、普通に出た」
クレアは、とくに不思議がる様子もなく平然と答える。
「えぇ……そんなんアリ?」
「まあ、結果オーライってことで」
クレアは片目を閉じてサムズアップしてみせる。
それに呼応するかのようにして、指先から立ち上る黄色い靄が消え、光のドームも消滅した。
後にはただ、戦闘の余韻と静けさだけが残る。
(今の、何のスキルだ……?)
たった今目の前で起きた現象が頭から離れない。
膝をついた体勢のまま、疲労と貧血でふわふわする頭で思案する。
(《空気障壁》? ……いや、違う。あんな広範囲に展開できるほど、優れたスキルじゃない。じゃあ、光魔法の《光膜壁》か? あれなら、広範囲の防御も可能だ……でも、《空気障壁》よりも脆かったはず。あんなに大量の残骸を、受け止められる強度はない)
僕の知っている防御系スキルには、さっきの光のドームは当てはまらない。
自分の知らない、別のスキルなのだろうか?
(仕方ない。これ以上スキルを使うのは、体力的な面でキツいんだけど……)
スキル《サーチ》を起動する。
とたん、咳き込んで血を吐き出すが、今だけ我慢だ。
防御力も高く、防御範囲も広いスキルだった。今後見つけたら獲っておきたい。
スキル反動臨界症のことを無視してでも、このスキルの詳細を知っておきたかった。
(さっきのスキルは……)
《サーチ》でクレアのステータスを確認する。
と、その瞬間。
思わず「は?」と声を上げてしまった。
僕の瞼の裏には、とんでもないものが映し出されていた。
◆◆◆◆◆◆
クレア(仮称)
Lv 0
HP ―
MP ―
STR ―
DEF ―
DEX ―
AGI ―
LUK ―
スキル(通常) ―
スキル(魔法) ―
ユニークスキル ―
アイテム 《衣装(女の子用)》×1
個人ランク ―
所属 ―
◆◆◆◆◆◆
「は……? なに、これ……」
鈴なりのような声がした。
死を目前にして張り詰めた空気の中で、その声はまるで静かな水面に広がる波紋のように研ぎ澄まされていて――
刹那、硬い何かが別の何かに当たって砕けるような音が、断続的に響いた。
意識を瞬時に刈り取る痛みと衝撃を覚悟していたのに、一向にそれがやって来ない。
不思議に思い、おそるおそる目を開く。
「こ、これは……?」
思わず目を白黒させる。
僕も含めた地面に倒れている人達を丸ごと覆う薄黄色の光のドームが、直上に張り巡らされているではないか。
降ってきたジャイアント・ゴーレムの残骸は、そのことごとくが光のドームによって防がれ、ドームの傾斜によって端の方まで滑り落ちていた。
「助かった……のか?」
でも、一体誰の仕業なんだ……
頭の上に「?」マークが浮かんだそのとき。
「おーい、大丈夫? エランくん!」
『ももきゅ!』
パタパタと足音を立てて、クレアととーめちゃんが駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫……ちょっと血を吐いて意識がもうろうとしてるだけ」
「それ大丈夫とは言わないと思うけど!?」
目を見開いてツッコミを入れてくるクレアに、軽く微笑み返す。
「誰かが助けてくれたみたいで、助かっ――」
僕は、言いかけていた言葉を飲み込んだ。
僕の目が、信じられないものを捉えていたからだ。
「どうしたの?」
「いや……お前」
きょとんと首を傾げるクレアの手を見る。
細い指先から、まるで煙が立ち上るように薄黄色の靄が出ており、その靄は上に張られたドームへと続いている。
まるで、クレアが光のドームを生み出したかのような構図だ。
「もしかして、このドームを出したのって、クレア?」
「ん? たぶんそう」
「たぶんて……何その曖昧な答えは」
「だって、私もよくわかんないんだもん。皆がピンチで、「助けなきゃ」って思ったら、普通に出た」
クレアは、とくに不思議がる様子もなく平然と答える。
「えぇ……そんなんアリ?」
「まあ、結果オーライってことで」
クレアは片目を閉じてサムズアップしてみせる。
それに呼応するかのようにして、指先から立ち上る黄色い靄が消え、光のドームも消滅した。
後にはただ、戦闘の余韻と静けさだけが残る。
(今の、何のスキルだ……?)
たった今目の前で起きた現象が頭から離れない。
膝をついた体勢のまま、疲労と貧血でふわふわする頭で思案する。
(《空気障壁》? ……いや、違う。あんな広範囲に展開できるほど、優れたスキルじゃない。じゃあ、光魔法の《光膜壁》か? あれなら、広範囲の防御も可能だ……でも、《空気障壁》よりも脆かったはず。あんなに大量の残骸を、受け止められる強度はない)
僕の知っている防御系スキルには、さっきの光のドームは当てはまらない。
自分の知らない、別のスキルなのだろうか?
(仕方ない。これ以上スキルを使うのは、体力的な面でキツいんだけど……)
スキル《サーチ》を起動する。
とたん、咳き込んで血を吐き出すが、今だけ我慢だ。
防御力も高く、防御範囲も広いスキルだった。今後見つけたら獲っておきたい。
スキル反動臨界症のことを無視してでも、このスキルの詳細を知っておきたかった。
(さっきのスキルは……)
《サーチ》でクレアのステータスを確認する。
と、その瞬間。
思わず「は?」と声を上げてしまった。
僕の瞼の裏には、とんでもないものが映し出されていた。
◆◆◆◆◆◆
クレア(仮称)
Lv 0
HP ―
MP ―
STR ―
DEF ―
DEX ―
AGI ―
LUK ―
スキル(通常) ―
スキル(魔法) ―
ユニークスキル ―
アイテム 《衣装(女の子用)》×1
個人ランク ―
所属 ―
◆◆◆◆◆◆
「は……? なに、これ……」
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