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第一章 《最下層追放編》

第二十九話 決戦前のレベルアップ!

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《エラン視点》

「……去ったか。カルム達と何を話してたんだろう」



 ウッズが視界から消えたのを確認した僕は、《ズーム》と《暗視ナイト・ビジョン》を切って思案に耽った。



 まさか、僕の噂話を……?



「いや、ありえないな」



 僕は自嘲気味に吐き捨てる。

 役立たずと決めたヤツは容赦なく切り捨てるのが、ウッズという人間だ。僕の事なんて、頭の片隅にもないだろう。



「ねぇ、ねぇってば!」



 後ろからゆさゆさと肩を揺すられ、振り返る。

 クレアが不機嫌そうな面持ちで、僕を凝視していた。



「さっきから、一人で納得してるみたいなんだけど、何を見たのか私にもちゃんと説明してくれないかな?」

「え~。う~~~ん……」



 ひとしきり唸った後、サムズアップして答えた。



「男の因縁……みたいなものだよ。だから首を突っ込まない方が良い。火傷するぜ?」

「……」



 ジト目で睨んでくるクレア。

 しばらくの間無言の時が流れた後、不意にクレアはぷいっとそっぽを向いてしまった。



「ま、カッコ付けたいなら勝手にすればいいけど?」

「……う、うん。ごめん」



 はぐらかし方を間違えたと、後悔する僕であった。



「そんなことより、早く行こうよエランくん」

「ああ、そうだね」



 僕は頷いて、また歩き出した。

 ジャイアント・ゴーレムを倒した場所に戻ったら、また新たなステージに行かねば。

 二人+一匹は、薄暗いダンジョンを突き進むのだった。(ちなみにとーめちゃんは《威嚇シャウト》によりまだ気絶中のため、クレアが肩に乗っけている)」



△▼△▼△▼



 ――ジャイアント・ゴーレムを倒した先の道は、そこそこに険しいものだった。



 今まで戦った中でも屈指の防御力を誇る、Sクラスモンスターの《鋼骸骨スチール・スカル》の大群や、圧倒的なスピードを誇るSSクラスモンスター《アクセラー》など。

 

 単体でサイクロプスにも引けを取らない強さを持つモンスターが、後から後から無尽蔵に湧き出てくる魔窟。

 流石、最下層と言う他なかった。



 が、僕には《交換リプレイス》がある。

 敵に有利なスキルをゲットしまくり、立ちふさがるモンスターを片っ端から蹂躙する。



 防御力特化のモンスターには、それを打ち砕く攻撃力で。スピード特化の奴等には、更に上回るスピードで。

 気が付けば、鎧袖一触と呼ぶことすら烏滸がましいレベルにまで、強くなっていた。



 まあ、他の冒険者もよくやっている地道なレベル上げをS~SSクラスモンスターでやっているのだから、当然と言えば当然なのかもしれないが。



 ただ一つ、敵を撃破していく中で、度々最下層にいるはずのない低ランクモンスターを見かけたのだけが気がかりではあった。



 そんなこんなで、行く手を阻むモンスターを片っ端から片付けていった結果。最下層最後の敵――ラスボスに当たるまでに、ステータスが爆上がりしていた。



◆◆◆◆◆◆



 エラン

 Lv 135 → 248

 HP 3120 → 6500

 MP 548 → 1020

 STR 520 → 999

 DEF 387 → 875

 DEX 151 → 226

 AGI 172 → 240

 LUK 118 → 172



 スキル(通常)《衝撃拳フル・インパクト》 《サーチ》 《飛行フライト》 《ズーム》 《速度超過スピードアップ》 《標的誘導ターゲット・インデュース》 《超跳躍ハイ・ジャンプ》 《硬質化ウェア・ハード》 《暗視ナイト・ビジョン》 《威嚇シャウト》New! 《衝撃波ソニック・ウェーブ》 New! 《反発バックラッシュ》New! 《集団爆撃クラスター・ボム》New! 《軟化ソフト》New!

 スキル(魔法)《火炎弾フレイム・バレット》 《冷却波クール・ウェーブ》 《蒼放電ブルー・リリース》 《紅炎極砲フレア・カノン》 《上昇烈風ノックアップ・ゲイル》 《火炎付与フレア・エンチャント》New! 《閃光噴射フラッシュ・ジェット》New! 《積層土壁ラミネート・グランドウォール》New!   

ユニークスキル 《交換リプレイス

アイテム 《ナイフ》×1 《HP回復ポーション》×44→120 《MP回復ポーション》×38→44 《状態異常無効化の巻物》×26→38 《魔鉱石・赤》×36→78 《魔鉱石・黄》×69→106 《魔鉱石・青》×104→212 《魔除けのブレスレット》×1 《ガントレット(左手)》×1New!

 個人ランクS

 所属 《緑青の剣》(追放)



◆◆◆◆◆◆



「大分強くなったね、エランくん」

「うん、そうだね」



 にこにこ笑顔で僕の方を覗き込んでくるクレアに、頷き返す。

 斜め後ろから付いてくるとーめちゃんが、満足げに『きゅう!』と鳴いた。



 《テンペスト》と別れてから、おそらく四、五時間は経ったろう。

 「お腹空いたな~」と思いながら、敵を倒しまくり進んでいくウチに、ダンジョンの様子も少し様変わりした気がする。



 洞窟のような通路も広くなり、全体的に赤黒い不気味さを湛えている。

 ふと進む先に、ぽつりと明かりが見えた。

 その向こうから、とてつもない邪気を感じる。ジャイアント・ゴーレムとは比較にならないレベルの、強い邪気を。



「――いよいよ、ラスボスみたいだ」

「そうだね」



 僕は気を引き締め、唾を飲み込む。

 やがて、その明かりの先に踏み込んだ。その先で見たものは、想像を絶するほどの相手ラスボスで――思わず僕は、不敵な笑みを浮かべるのだった。

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