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第三章

王都探索

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ガヤガヤと話声で賑わう学園内食堂の一角でアリアローズはいつもと変わらない昼食をとっていた。

「セリーヌ今日は何にしたの?一口ちょーだい」

「まぁ、お行儀悪いですわよ」

「はは、なら僕にもアリアローズの一口頂戴」

そう、これが日常になりつつあった。
あの日学園内を案内した事によりアルベルトとは何故か昼食も一緒に取る様になっていた。勿論周りから注目を集めたが今では慣れつつあり多少の視線は感じるが初め程注目もされなくなっていた。
アルベルトはと言うと、初めは人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していたのだが、心を許してくれたからかだいぶ砕けてきて今では冗談を言い合うくらいになっている。と言うより意外と悪戯好きな様だ。
ただ、未だに友達として認められていない人には塩対応なのだが…

「あぁ、そうだアリアローズとセリーヌは次の休みに予定ってある?」

「いえ、特には…」

「あ、私は少しブルックス様との予定がございますわ」

どうやらセリーヌは婚約者とデートらしい。

「そっか、ならアリアローズは僕の視察に付き合って欲しいんだけど」

「し、視察ですか?えっと何処の?と言うか2人でですか!?」

セリーヌの返事を待ってから答えれば良かったと後悔したが既に手遅れだ。

「あぁ、この国に来てから6つ月が過ぎているからね。祖国より王都などを色々と視察をして来いと言われているんだ。でも1人ではつまらないし折角親しい人もいるんだし一緒でも構わないでしょ?」

隣国の王太子と視察とか構う所しかないが、果たして断っていいのかも分からないしここは頷くしかないだろう。

「良かった、なら次の休みは外出申請出しておいてよ」



休みの日ガタガタと揺られる馬車の中にはアルベルトとアリアローズ、そしてアルベルトの侍女係兼護衛騎士のダブリンが乗っていた。ダブリンは隣国からアルベルトと一緒に来た侍女や護衛騎士の一人でセクタールの伯爵令嬢らしいがその身体能力の高さ故騎士として身を置いているらしい。
外には別の護衛騎士も同行しているが、流石に馬車に未婚の男女を2人にする訳にはいかないとダブリンを同行させたのはアルベルトの配慮だった。

「あのアルベルト様、今日はこれから何処に行くのですか?そう言えば聞いてなかったような…」

「あー、そう言えば話してなかったような…今日は王道の王都アクアーレンに行こうと思ってるよ」

アクアーレンなら最近行ったばかりだし、美味しいお店も薬屋も既に把握済みだ。少しくらいなら案内もできるし何かしらやらかす事はないだろう。

王都アクアーレンに着くとダブリンは護衛騎士の役割に戻り他の護衛と一緒に遠くから見守っている。いつもはセリーヌと常に3人でいるのでアルベルトと2人になるのは多分初めてだ。
そういえば、家族以外の男性と2人で出掛けること自体初めてな気がする。そう思うと何だか少し緊張してきた…
ギクシャクしながら隣を歩くと何かを察したのか様でクスクス笑っている。

「そんなに緊張しないでよ、いつも通りのアリアローズでいてよ、ねっ」

「う、うん。頑張ります…」

「はは、さぁ、視察開始しよう」

緊張で普段どうやって接していたか分からなくなりそうだったがアリアローズの手を取り王都へと導かれるといつも通りのアルベルトに合わせるように少しずつ緊張も溶けて行った。

「まっ、待ってください!ちょっ、と早いですってー!!」



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