48 / 80
第2章 キングスロード
48話 ダンジョンの能力
しおりを挟む
「シンイチはアホにゃ~」
「とりあえず、シンイチの腕試しでいいんじゃねえか?」
「応援してるわよ! シンイチくん!」
リリさん、アビゲイルさん、エマさんは、無事に釈放された俺にそんな事を言ってくる。
現在4人で集まって、俺が泊まる宿屋で、お昼を食べている最中だ。
「せっかくなんで、特命全権公使の身分をもらえるように頑張ります。けど、リリさんは何を言ってるんですか?」
「冒険者証があれば、どの国でも出入国が出来るにゃ~。無条件では無いけどにゃ」
「あっ!? あのクソガキ!!」
俺は乗せられた上に、騙された事に気付く。
「まあ、第3王子とは言え、ネイサン様は貴族だ。腹芸《はらげい》ではシンイチも敵わないだろ」
アビゲイルさんはそう言うけど、あんな子供に一杯食わされたというのは、中々くるものがある。
「ぐぬぬぬ」
「でも、シンイチくん、無条件で出入国できるのは、大きいと思うわよ?」
「シンイチのパパさんと妹さんも、見つけやすくなるにゃ~」
俺が父さんと妹を探している事は、この3人には話した。というのも、これ以上色々と隠しておくのは、不義理だと感じたからだ。
そして「俺は地球から来た、異世界人です」とも打ち明けた。
ただ、そこまで驚かれなかったのが引っかかる。
「どっちにしても、シンイチが国外で両親を捜すなら、特命全権公使の身分はもらっておいたほうがいい」
「と言うと?」
「シンイチはGランクの冒険者だろ?」
「そっか!」
信用もランクも高い、アビゲイルさんのような冒険者であれば、国境を越える時の審査が甘く、逆にランクの低い、俺みたいな冒険者だと、最悪の場合、入国審査で拒否される場合があるのだ。
それでも、出入国は出来るのだが、そこでかなりの時間を取られる事になる。
やはり優勝を目指そう。
「それはそうと、アランはどうなりました?」
「ああ、あれは第3騎士団が尋問してるって聞いたぞ」
俺の問いに、アビゲイルさんがそう答えた。
しかし、第3騎士団か……俺みたいな素人から見ても、あの騎士団長はあまり優秀には見えなかった。
「大丈夫ですかね」
「シンイチの言いたい事は分かるが、マイヤーを基準に考えると、どこもかしこも武力的に劣って見えてしまうぞ?」
「そんなもんなんですかねえ」
「まあ、そっちは本職の騎士団に任せとけばいい。それより、シンイチは武闘大会の会場は見た事無いだろ? 選手登録しなきゃいけないし、今から行こうと思ってるんだが、どうする?」
「行ったほうがいいにゃ~」
「わたしも賛成よ、シンイチくん」
こうして俺たちは、武闘大会が行われている会場へ向かう事になった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「……でかっ! これがリンデンバーグ闘技場!?」
王都内を走る駅馬車を乗り継ぎ、やっと武闘大会の会場に到着すると、それは10万人規模で収用できるような、どでかいスタジアムだった。
その周りには、色々な屋台が出ており、賭けの予想屋が熱弁を振るい、明日の優勝者が誰なのか語っていた。
武闘大会は、この100万人都市の一大イベントなのだろう。今日は何も無いはずなのに、大変な賑わいだ。
「でも、なんかイメージと違うんだよな」
俺が勝手に、ヨーロッパ中世前期のイメージを持っているので、急にこんな建物が目に入ると驚いてしまう。
というのも、実はここヨーロッパにあるサッカースタジアムなんです、と言っても、違和感なく信じてしまいそうなほど近代的なのだ。
「シンイチ、選手登録は闘技場の中だ。この入口は選手登録以外では入れない。俺たちはこの辺で待ってるからな」
アビゲイルさんにそう言われて、俺は闘技場の関係者入口へ入った。
「ん?」
『『『やっぱ気付いた~』』』
ダンジョンに入った感覚があって、俺が声を出すと、ここしばらく大人しかったナナイロたちが、反応した。
『どうした? ここダンジョンだろ?』
『シンイチ、ちょっとそこの壁が凹むようにイメージして~』
『は? 何言ってるのナナイロ――?』
妙な事を言う、と思い、壁が凹んだイメージをしてしまうと、その通りになってしまった。
ここはダンジョンコアが居て、管理しているはずなのに、俺がイメージしたら変形するとか、どういう事なの。
『『『ダンジョンの使い方も変だ~! わ~い!!』』』
『……3人とも、喜んでるところ申し訳ないんだけど、どういう事?』
『『『シンイチはダンジョンの王様になるんだよ~!』』』
『何を言って――』
『あはははっ!』
俺が混乱していると、このダンジョンの分身まで出てきた。
『スタジアムダンジョンの分身?』
『げっ!? 見つかってる!!』
俺の足下に、ちびっこいフィギュアが立っている。
髪の毛も服装も白くて、はだし。
『見つかるも何も、見えるんだよ。あと、また面倒くさくなるから、お前の名前はカスミな』
『うわ~、なんか雑に扱われてる。そのカスミってなに~?』
『白くて小さな花の名前だ』
『やった~、初めて名前を付けてもらった~』
そう言って、白いフィギュアがくるくると回っている。
このままだと前に進めないので、つまみ上げて、ナナイロたちの横に乗せる。
すると、4人で視線を合わせ、また繋がるという行為を始めた。
俺はそれを見て、先に進む。
さくっと登録を終わらせて、今日は休もう。
『お邪魔します~』
『ん? なにが?』
カスミの声が聞こえて、そちらを向いてみると、俺の肩に沈んでいく最中だった。
この感覚は、この前ナナイロたちが、足から俺の体内に入ったときと同じ。
『側脳室に入ったよ~』
念話ではない、カスミの声が聞こえてきた。
『やっぱりそうか。俺に異常がなければいいけどさ。というかサクラは俺の脳内に入ってないの?』
『シンイチが寝てるときに、入ってるよ~』
俺がダンジョンになったとか、脳内にダンジョンコアの分身が入ったとか、そういった事も、特に何も感じない。
『……お前たちがやる事は、もう慣れたよ』
『『『『わっほ~い! これからもよろしくね~! おうさま~』』』』
『やかましい、脳内で騒ぐな』
4人分の声がリンクして聞こえてくる。
あと、おうさまって何だよ。
『シンイチ~、わたしのダンジョンで見たゴーレムを思い出せる~?』
『ああ、ナナイロのダンジョンにいた奴な』
肩の上のナナイロの声に、俺がそう答えると、通路一面にゴーレムが現れた。
(ヤベえ!?)
消えろ、と俺が思った瞬間、そのゴーレムたちは姿を消した。
『んじゃ次は、財宝!』
『は? 今のゴーレムは何?』
そう俺が聞いていると、目の前にゴトリと音を立て、金塊が現れた。
「嘘だろ……これ、金箔を張り付けた岩とかじゃ?」
こんなのここに置いていけないな、と思うと、煙のように金塊が消える。
分かってる。これは、ダンジョンの能力の1つで、魔素から物質を創っているのだ。しかし、考えただけで、ゴーレムが出てきたり、金塊が現れたりするのは、反応がよすぎる。
そう考えると、その反応速度が弱くなった。多分。
『大丈夫そうねっ! シンイチはもうダンジョンなの。わたしたちの王様だから、これからよろしくねっ!』
俺の肩の上に居たナナイロは、そう言ってすっと消えてしまった。
ツバキもサクラも、同じく『『もう大丈夫よ~』』と手を振って消えていく。
「まあ、慌ててもしょうがない。いつものことだ」
宇宙服を着て、わざわざ同行していたのは、おそらくダンジョン化した俺が、大丈夫なのかどうか、経過観察をしてたって所だろうな。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「遅かったな」
「はい、すみません」
闘技場で選手登録を済ませて出ると、アビゲイルさんだけが、外で待っていた。
「エマさんとリリさんは?」と俺が聞くと、屋台を回って買い食いをしているそうだ。
俺も少しつまんでみるかなと考えていると、猫の獣人に話し掛けられた。
「あんたも、明日の武闘大会に出るのか?」
「はあ、一応その予定です」
そんな会話をしていると、アビゲイルさんが会話に加わった。
「おぉ!? ハキムじゃねえか!! お前も明日出るのか?」
「アビゲイル! 帰ってたのかあ! もしかして、リリも?」
このハキムと呼ばれる猫獣人の男性は、白猫のリリさんとは対照的で、すべて黒だ。頭の上にある猫耳は同じ。装備を見ると、動きやすそうな革鎧に、短剣が2本腰に差してある。
話し方からすると、リリさんを知ってそうなのだが。
「アビゲイル、この人族は、強いのか?」
ハキムさんが、俺を見ながらアビゲイルさんにそう言う。
「ああ、強い」
「そっか、明日は俺も負けねえからな。俺はハキムってんだ、よろしく」
「シンイチって呼んで下さい。よろしくお願いします」
ハキムさんとガッチリ握手をして、しばらく立ち話になった。
「ハキムさんとリリさんは、同じ学校なんですね」
リリさんが、たまに学校の事を口走っていたのは、彼女がこの王都にある、冒険者学校の生徒だったからだ。子供の頃は、マイヤーにあるシスター・クロエの家族がやっている教会の孤児院で育ち、マイヤーの冒険者ギルドでお金を稼いだ後、王都の冒険者学校へ進んだのだそうだ。
リリさんは、たしか俺と同い年で17だったはず。
そしてハキムさんの年齢は俺の1つ上で、18歳。
リリさんと同じくAランクの冒険者だそうだ。
そんな会話をしていると、リリさんとエマさんが戻ってきて、ハキムさんと久しぶりに再開したということで、夕食へ行く事になった。
ただ「俺は少しやる事があるので」と言って、今回はパスさせてもらった。
もちろん、ほったらかしにしている、かあさん達に会いに行くからだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「かあさん、七瀬さん、なんだか久し振り!」
「こら真一! 言い出しっぺが家に帰ってこないとは、どういう了見なの!」
「と言いつつ、お義母さんは、ナナイロちゃんたちに様子を聞いて、無事だと知ってましたけどね~」
「とりあえず、シンイチの腕試しでいいんじゃねえか?」
「応援してるわよ! シンイチくん!」
リリさん、アビゲイルさん、エマさんは、無事に釈放された俺にそんな事を言ってくる。
現在4人で集まって、俺が泊まる宿屋で、お昼を食べている最中だ。
「せっかくなんで、特命全権公使の身分をもらえるように頑張ります。けど、リリさんは何を言ってるんですか?」
「冒険者証があれば、どの国でも出入国が出来るにゃ~。無条件では無いけどにゃ」
「あっ!? あのクソガキ!!」
俺は乗せられた上に、騙された事に気付く。
「まあ、第3王子とは言え、ネイサン様は貴族だ。腹芸《はらげい》ではシンイチも敵わないだろ」
アビゲイルさんはそう言うけど、あんな子供に一杯食わされたというのは、中々くるものがある。
「ぐぬぬぬ」
「でも、シンイチくん、無条件で出入国できるのは、大きいと思うわよ?」
「シンイチのパパさんと妹さんも、見つけやすくなるにゃ~」
俺が父さんと妹を探している事は、この3人には話した。というのも、これ以上色々と隠しておくのは、不義理だと感じたからだ。
そして「俺は地球から来た、異世界人です」とも打ち明けた。
ただ、そこまで驚かれなかったのが引っかかる。
「どっちにしても、シンイチが国外で両親を捜すなら、特命全権公使の身分はもらっておいたほうがいい」
「と言うと?」
「シンイチはGランクの冒険者だろ?」
「そっか!」
信用もランクも高い、アビゲイルさんのような冒険者であれば、国境を越える時の審査が甘く、逆にランクの低い、俺みたいな冒険者だと、最悪の場合、入国審査で拒否される場合があるのだ。
それでも、出入国は出来るのだが、そこでかなりの時間を取られる事になる。
やはり優勝を目指そう。
「それはそうと、アランはどうなりました?」
「ああ、あれは第3騎士団が尋問してるって聞いたぞ」
俺の問いに、アビゲイルさんがそう答えた。
しかし、第3騎士団か……俺みたいな素人から見ても、あの騎士団長はあまり優秀には見えなかった。
「大丈夫ですかね」
「シンイチの言いたい事は分かるが、マイヤーを基準に考えると、どこもかしこも武力的に劣って見えてしまうぞ?」
「そんなもんなんですかねえ」
「まあ、そっちは本職の騎士団に任せとけばいい。それより、シンイチは武闘大会の会場は見た事無いだろ? 選手登録しなきゃいけないし、今から行こうと思ってるんだが、どうする?」
「行ったほうがいいにゃ~」
「わたしも賛成よ、シンイチくん」
こうして俺たちは、武闘大会が行われている会場へ向かう事になった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「……でかっ! これがリンデンバーグ闘技場!?」
王都内を走る駅馬車を乗り継ぎ、やっと武闘大会の会場に到着すると、それは10万人規模で収用できるような、どでかいスタジアムだった。
その周りには、色々な屋台が出ており、賭けの予想屋が熱弁を振るい、明日の優勝者が誰なのか語っていた。
武闘大会は、この100万人都市の一大イベントなのだろう。今日は何も無いはずなのに、大変な賑わいだ。
「でも、なんかイメージと違うんだよな」
俺が勝手に、ヨーロッパ中世前期のイメージを持っているので、急にこんな建物が目に入ると驚いてしまう。
というのも、実はここヨーロッパにあるサッカースタジアムなんです、と言っても、違和感なく信じてしまいそうなほど近代的なのだ。
「シンイチ、選手登録は闘技場の中だ。この入口は選手登録以外では入れない。俺たちはこの辺で待ってるからな」
アビゲイルさんにそう言われて、俺は闘技場の関係者入口へ入った。
「ん?」
『『『やっぱ気付いた~』』』
ダンジョンに入った感覚があって、俺が声を出すと、ここしばらく大人しかったナナイロたちが、反応した。
『どうした? ここダンジョンだろ?』
『シンイチ、ちょっとそこの壁が凹むようにイメージして~』
『は? 何言ってるのナナイロ――?』
妙な事を言う、と思い、壁が凹んだイメージをしてしまうと、その通りになってしまった。
ここはダンジョンコアが居て、管理しているはずなのに、俺がイメージしたら変形するとか、どういう事なの。
『『『ダンジョンの使い方も変だ~! わ~い!!』』』
『……3人とも、喜んでるところ申し訳ないんだけど、どういう事?』
『『『シンイチはダンジョンの王様になるんだよ~!』』』
『何を言って――』
『あはははっ!』
俺が混乱していると、このダンジョンの分身まで出てきた。
『スタジアムダンジョンの分身?』
『げっ!? 見つかってる!!』
俺の足下に、ちびっこいフィギュアが立っている。
髪の毛も服装も白くて、はだし。
『見つかるも何も、見えるんだよ。あと、また面倒くさくなるから、お前の名前はカスミな』
『うわ~、なんか雑に扱われてる。そのカスミってなに~?』
『白くて小さな花の名前だ』
『やった~、初めて名前を付けてもらった~』
そう言って、白いフィギュアがくるくると回っている。
このままだと前に進めないので、つまみ上げて、ナナイロたちの横に乗せる。
すると、4人で視線を合わせ、また繋がるという行為を始めた。
俺はそれを見て、先に進む。
さくっと登録を終わらせて、今日は休もう。
『お邪魔します~』
『ん? なにが?』
カスミの声が聞こえて、そちらを向いてみると、俺の肩に沈んでいく最中だった。
この感覚は、この前ナナイロたちが、足から俺の体内に入ったときと同じ。
『側脳室に入ったよ~』
念話ではない、カスミの声が聞こえてきた。
『やっぱりそうか。俺に異常がなければいいけどさ。というかサクラは俺の脳内に入ってないの?』
『シンイチが寝てるときに、入ってるよ~』
俺がダンジョンになったとか、脳内にダンジョンコアの分身が入ったとか、そういった事も、特に何も感じない。
『……お前たちがやる事は、もう慣れたよ』
『『『『わっほ~い! これからもよろしくね~! おうさま~』』』』
『やかましい、脳内で騒ぐな』
4人分の声がリンクして聞こえてくる。
あと、おうさまって何だよ。
『シンイチ~、わたしのダンジョンで見たゴーレムを思い出せる~?』
『ああ、ナナイロのダンジョンにいた奴な』
肩の上のナナイロの声に、俺がそう答えると、通路一面にゴーレムが現れた。
(ヤベえ!?)
消えろ、と俺が思った瞬間、そのゴーレムたちは姿を消した。
『んじゃ次は、財宝!』
『は? 今のゴーレムは何?』
そう俺が聞いていると、目の前にゴトリと音を立て、金塊が現れた。
「嘘だろ……これ、金箔を張り付けた岩とかじゃ?」
こんなのここに置いていけないな、と思うと、煙のように金塊が消える。
分かってる。これは、ダンジョンの能力の1つで、魔素から物質を創っているのだ。しかし、考えただけで、ゴーレムが出てきたり、金塊が現れたりするのは、反応がよすぎる。
そう考えると、その反応速度が弱くなった。多分。
『大丈夫そうねっ! シンイチはもうダンジョンなの。わたしたちの王様だから、これからよろしくねっ!』
俺の肩の上に居たナナイロは、そう言ってすっと消えてしまった。
ツバキもサクラも、同じく『『もう大丈夫よ~』』と手を振って消えていく。
「まあ、慌ててもしょうがない。いつものことだ」
宇宙服を着て、わざわざ同行していたのは、おそらくダンジョン化した俺が、大丈夫なのかどうか、経過観察をしてたって所だろうな。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「遅かったな」
「はい、すみません」
闘技場で選手登録を済ませて出ると、アビゲイルさんだけが、外で待っていた。
「エマさんとリリさんは?」と俺が聞くと、屋台を回って買い食いをしているそうだ。
俺も少しつまんでみるかなと考えていると、猫の獣人に話し掛けられた。
「あんたも、明日の武闘大会に出るのか?」
「はあ、一応その予定です」
そんな会話をしていると、アビゲイルさんが会話に加わった。
「おぉ!? ハキムじゃねえか!! お前も明日出るのか?」
「アビゲイル! 帰ってたのかあ! もしかして、リリも?」
このハキムと呼ばれる猫獣人の男性は、白猫のリリさんとは対照的で、すべて黒だ。頭の上にある猫耳は同じ。装備を見ると、動きやすそうな革鎧に、短剣が2本腰に差してある。
話し方からすると、リリさんを知ってそうなのだが。
「アビゲイル、この人族は、強いのか?」
ハキムさんが、俺を見ながらアビゲイルさんにそう言う。
「ああ、強い」
「そっか、明日は俺も負けねえからな。俺はハキムってんだ、よろしく」
「シンイチって呼んで下さい。よろしくお願いします」
ハキムさんとガッチリ握手をして、しばらく立ち話になった。
「ハキムさんとリリさんは、同じ学校なんですね」
リリさんが、たまに学校の事を口走っていたのは、彼女がこの王都にある、冒険者学校の生徒だったからだ。子供の頃は、マイヤーにあるシスター・クロエの家族がやっている教会の孤児院で育ち、マイヤーの冒険者ギルドでお金を稼いだ後、王都の冒険者学校へ進んだのだそうだ。
リリさんは、たしか俺と同い年で17だったはず。
そしてハキムさんの年齢は俺の1つ上で、18歳。
リリさんと同じくAランクの冒険者だそうだ。
そんな会話をしていると、リリさんとエマさんが戻ってきて、ハキムさんと久しぶりに再開したということで、夕食へ行く事になった。
ただ「俺は少しやる事があるので」と言って、今回はパスさせてもらった。
もちろん、ほったらかしにしている、かあさん達に会いに行くからだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「かあさん、七瀬さん、なんだか久し振り!」
「こら真一! 言い出しっぺが家に帰ってこないとは、どういう了見なの!」
「と言いつつ、お義母さんは、ナナイロちゃんたちに様子を聞いて、無事だと知ってましたけどね~」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
334
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる