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「あなたの屋敷ってどういうことよ」

「言葉の通りです。ここは、私の父から譲られた屋敷ですから」

「…………」

ドルシーは眉を上げる。
慣習だったら、そういうものを用意するのは跡取りになる方の……
つまりそれは男性優位が根強いこの国でいうと、大多数の場合で夫側の用意すべきもの、と言うことになる。

「リュートには、婿に来てもらう予定だったんですよ」

「あなた、さっきから一体何言ってるの……?」

ドルシーが私を見る目は、もはや詐欺師を見ているようなそれに近い。
本当の詐欺師をしているのは、騙しているのは誰なのか……順番に、知らせていかないといけないわ。

「でも、婚約破棄をしたからには、あなた達をこの屋敷に住まわせる義理もなくなったので」

「待ってよ、リュートはそんなこと一言だって……」

そう、やっぱり。
彼は何も伝えてなかったのね。

私は、たっぷりの憐れみを込めてドルシーの目を見た。

「何も、リュートから聞いてなかったんですね……」

ドルシーは、眉間の皺を深くした。
これで何度めになるか、あと何度そうすることになるかは分からないけど……丁寧に事実を突きつけてあげる。

「当主になるのは、私ですよ」

「はっ……はぁあ……っ!?」

驚きの声は悲鳴に似ていた。

「あなたは……あなた達は特に仕事もせず居候してただけですから、例え仕事部屋だろうと作る予定もないわ」

「な、な…………」

ドルシーは目を見開き、口をパクパク動かしてる。

「寝泊まりも散々させてあげてたけど、それも今日でおしまい。さっさと身一つで出ていってください」
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