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「ふざけないで!!」
手を出さんばかりの勢いでドルシーが叫ぶと、リュートが顔を嫌そうにしかめた。
体の脇で握りしめた、ドルシーの拳が震えています。
吊り上がった目でリュートを睨み……
「騙されてたのはこっちよ!侯爵になるなんて嘘ついて!」
喚くように言いました。
……改めて口に出されると、リュートの情けなさが際立つと言うか……
どうしてすぐにバレる嘘をついてたのかしら、彼。
どの道、時が来れば婚姻となって、当主がどちらになるかなんて知れてしまうのだけれど。
今さえ良ければそれで良かった……もしくは、現実逃避にちょうど良かった?
リュートはそれには答えずに、首を竦めながら嵐に行き当たったような声を出します。
「怒鳴らないでくれ、これだから女のヒステリーは嫌なんだ……!」
迷惑千万と吐き捨てられて、ドルシーの怒りが更に加算されたよう。
「こっちだってあんたみたいな甲斐性無しの蝙蝠男冗談じゃないわ!」
放っておいたら乱闘にでも発展しそうな、聞くに堪えない罵り合い。
ここは郊外で屋敷の敷地もそれなりに広い。
だから、他人に聞かれる心配もそこまでは無いけれど……
……うん、だからね。
あなた達ね。
二人とも自業自得じゃない……
「はぁ……」
当然だけれど、どちらの肩を持つ気にもなりません。
持つ必要もない事ですし……
最早どちらとも私の事は既に眼中になくなっているみたいなので、そっと仕事部屋に戻ります。
机の上に置いてあるベルを持ち上げ、今度は二度、鳴らしました。
チリンチリン──
手を出さんばかりの勢いでドルシーが叫ぶと、リュートが顔を嫌そうにしかめた。
体の脇で握りしめた、ドルシーの拳が震えています。
吊り上がった目でリュートを睨み……
「騙されてたのはこっちよ!侯爵になるなんて嘘ついて!」
喚くように言いました。
……改めて口に出されると、リュートの情けなさが際立つと言うか……
どうしてすぐにバレる嘘をついてたのかしら、彼。
どの道、時が来れば婚姻となって、当主がどちらになるかなんて知れてしまうのだけれど。
今さえ良ければそれで良かった……もしくは、現実逃避にちょうど良かった?
リュートはそれには答えずに、首を竦めながら嵐に行き当たったような声を出します。
「怒鳴らないでくれ、これだから女のヒステリーは嫌なんだ……!」
迷惑千万と吐き捨てられて、ドルシーの怒りが更に加算されたよう。
「こっちだってあんたみたいな甲斐性無しの蝙蝠男冗談じゃないわ!」
放っておいたら乱闘にでも発展しそうな、聞くに堪えない罵り合い。
ここは郊外で屋敷の敷地もそれなりに広い。
だから、他人に聞かれる心配もそこまでは無いけれど……
……うん、だからね。
あなた達ね。
二人とも自業自得じゃない……
「はぁ……」
当然だけれど、どちらの肩を持つ気にもなりません。
持つ必要もない事ですし……
最早どちらとも私の事は既に眼中になくなっているみたいなので、そっと仕事部屋に戻ります。
机の上に置いてあるベルを持ち上げ、今度は二度、鳴らしました。
チリンチリン──
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