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【七十七】心配は毒にしかにゃらにゃあいにゃあ!

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 徳田康代と女子高生キャビネットの織畑信美、前畑利恵、豊下秀美、明里光夏と天宮静女は、生徒会執務室の応接テーブルを囲んで朝のお茶を飲んでいた。

「康代殿、これは、何でござるか」
『このアイスティーは、ブレックファーストよ』

「そのままでござるな」
『ところで、最近、予知夢の報告が相次いでいるらしいが・・・・・・。
ーー みんなには火消しをお願いしたい。
ーー 予知夢を否定するつもりは些かもありません。
ーー けれども、大きな噂になれば、負のエネルギーに油を注ぐ結果になります』

秀美が口を開く。
「康代さん、全国女子高生会議と徳田幕府の女子高生支部にお願いしませんか?」
『あいにく、夏休みだからね。
ーー それに、人の口に戸は立てられぬから困る・・・・・・』

「じゃあ、どうしますか?」
『何かで相殺するかーー 上書きするしかないな』



 神使のセリエが三毛猫の姿で徳田康代たちの前に現れた。

「康代よ、心配は毒にしかにゃらにゃあいにゃあ。
ーー 人の口に戸は立てられぬのにゃら、塞げば良いにゃあ。
ーー 最強神使のセリエに任せにゃあー」

『セリエさま、ありがとうございます』

 セリエは消えて虹色の光になって金色に輝いた。

「いつ見ても美しいでござる」
『静女も十分美しいわよ』

 神使セリエの言葉を受けて、予知夢騒動の話題を終えた。



「康代さん、連日の猛暑で、夕涼みの代わりに水泳大会をしませんか」
『悪くないわね。体育祭の前倒しの水泳大会ーー いいわね』

「じゃあ、生徒会にお伝えしますね」
『秀美に、任せるわ』

「じゃあ、康代さん、
ーー 今日の宝田劇団の団員二十名の受け入れが終わったら生徒会にお伝えします」

『明日は、もう八月十日ね、あっという間の三カ月ね』



 豊下、明里は、地下の水平移動エレベーターで学園寮の茶色の土の棟の玄関前に移動した。
朝川、夜神、赤城、大河原が待っている。

「豊下さん、明里さん、連日ありがとうございます」
「朝川さん、気になさらないでください。役目ですので」

「今度、体育祭の前倒し企画で、水泳大会を開催します」
「わー、懐かしいわ」
夜神だった。

「夜神さんは、昔、水泳の選手でしたものね」
朝川が説明を加えた。

「豊下さん、日程が分かったら教えてくださいね」
「夜神さんに、お伝えすれば良いでしょうか」

「そうしてください」

 学園寮前に空中浮遊タクシーが数台到着した。
車の中から宝田劇団の美女団員が次々に降りて来る。

「夜神監督、ご無沙汰してます」
「あら、元気だった」

「お陰さまで・・・・・・」

 夜神たちは、一連の顔合わせを済ませて豊下と明里にお任せして、かるた部に移動する。

「朝川さん、昨日、徳田さんから教えて貰った水平移動エレベーターを利用しませんか」
夜神だった。

「そうね、ショートカット出来るわね」
四人は、水平移動エレベーターで学園校舎の地下玄関前に出た。

「これを使えば、ショッピングセンターも近いわね」
赤城だった。

 大河原が赤城に相槌あいづちを打って笑みを浮かべた。

 朝川と夜神たちが部室に入ると、安甲晴美あきのはるみかるた部顧問が待っていた。

「じゃあ、朝川さんと夜神さんは、
ーー 明日の認定大会準備の練習試合を三試合してください。
ーー 対戦カードを言います。
ーー 夜神さんは、夏生、春日、三笠の順で対戦してください」

 次に安甲は朝川を見て、対戦相手を指名した。
「朝川さんは、春日、三笠、夏生の順でお願いします」

 更に安甲がアドバイスを続ける。
「夜神さん、朝川さん、相手はC級だからね。
ーー 焦らずに自分の自陣かるたをしてみてください」

 安甲は、部員を見て次々に指名する。

「今日の読手は、B級の唐木田部長にお願いするわ。
ーー B級の森川さんとA級の徳田さんは、交代で新人部員の相手をして上げてください。
ーー 但し、攻めかるたを禁止にします」
ーー 自陣攻略出来ずに敵陣攻略は難しいので、徹底して練習よ」

 安甲の細かいアドバイスが続く。

「あと、明日の大会に出場する人は、膝の下に置くタオルと・・・・・・。
ーー 出来れば汗止めの鉢巻きがあるといいわね。
ーー ドリンクも必須よ。あとは、朝食に注意してください」

 安甲は、すべてを伝えて、朝川と夜神の練習試合を見ていた。
C級相手に二人は、善戦していた。
攻めかるたをせずに自陣攻略を徹底している様子に安甲は満足している。

 安甲の予知能力が、朝川と夜神の認定試合の結果を見ていた。

「夜神さん、朝川さん、いいわよ。その調子よ」

 練習試合の対戦結果は二人とも三連敗だった。
善戦しての僅少差は、嬉しい誤算になった。



 八月十日、神聖女学園かるた会代表の安甲晴美は、夜神紫依と朝川夏夜と認定大会の会場に到着した。

「あら、安甲先生、お久しぶりですわ」
「白波女子の由良ゆら先生ですか?」

「こんなに早く、お会い出来るとは驚きましたわ」
「私も同じです」

「それで、そこのお二人は?」
「神聖女学園かるた会の会員です」

「かるた会をお作りになったのですか」
「その方がかるたの機会が増えると思って・・・・・・」

「先生のご指導なら期待出来ますわね」
「まだ始めたばかりの初心者ばかりですから、お手柔らかにお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 大会が始まると、安甲の予知能力を裏付けるように、朝川、夜神が一勝を上げた。

 第二試合は大会規定に従い、一勝同士の対戦カードが組まれたが、白波女子とも当たらず、夜神たちは連勝した。
 次は、二勝同士のカードとなったが、夜神と朝川は、僅少差で破れた。
二人の結果は二勝一敗となりD級に昇段となる。

 夜神と朝川は、縁起を担ぎ赤いティシャツに練習着のジャージ姿だった。

「安甲先生、お陰さまで昇段出来ました」
「おめでとう、夜神さん、朝川さん、次はC級よ」

「はい、守りかるたを極めます」
「その意気よ・・・・・・」



 神聖女学園の学園寮では、この日も豊下秀美と明里光夏が団員二十名の到着に対応していた。
先に到着した宝田劇団のスタッフが、夜神と朝川の依頼を受けて劇団員の到着確認を手伝っている。



 徳田康代、姫乃水景、和泉姫呼、赤城麗華、大河原百合の五名は校内かるた大会に向けて調整していた。

「森川さん、今日の読手をお願いします」
唐木田あおいだった。
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