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【一〇五】アトランティスの悲劇再来‼️

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 【終末!地球の裁きと神々の結界】

 徳田康代大統領の女子高生キャビネットは、徳田幕府を通じてメディアの監視を強化していた。
神聖女学園内では、女子高生警備と幕府の女子高生支部からの応援が増強されている。
 女子生徒たちの授業や活動は普段通りに行われていた。

 宝田劇団は、旧体育館を中心に舞台稽古を再開している。
劇団の生徒たちは多目的ルームで頻繁に見かけるようになった。

 神聖女学園かるた部は、神聖会派、白波会派、有馬会派の三会派が、旧武道場の大きな部室で合同練習を重ねていた。

 学園都市内では、学園寮の新築工事が進み、国民住宅の整備も完成目前だったが・・・・・・。
 地球の神罰は、学園都市の予定通りには動いてくれない。
世界の終末時計は更に短くなっていた。



 生徒会執務室のマジックミラーは徳田大統領と連動して、留守中に確認することは出来なかった。

「光夏、マジックミラーが見えないのですが」

「秀美、康代さんから聞いていないの」

「ええ、何を」

「あの鏡、康代さんが留守の時は姿を消すのよ」

「まるで忍者ね」

 豊下秀美と明里光夏のいつもの井戸端会議が終わった。

 生徒会執務室に徳田康代が現れマジックミラーも出現した。
 康代は神使セリエに教えてもらった操作を試す。
すると、マジックミラーの画面がテレビのように変わり、大都や永畑町の火口を確認することができた。
 
 次に康代は、南和大陸を確認した。

「康代さん、南和大陸、ほぼ水没していますね」
秀美の声だった。

 その時、南和大陸の海底火山が大きな火柱を上げた。
 マジックミラーが西和大陸の画面に切り替わると地鳴りが聞こえている。
獣の雄叫び似た不気味さが異様だ。

[ゴゴーゴゴゴゴーゴゴーゴゴゴゴゴゴー]

 田沼光博士と若宮咲苗助手は神聖女学園の研究室で地震波形を見ていた。
二人とも真っ赤なワンピースを着ていた。

「先生、合図が来ました」

「そうね、振り切れているわ」

「若宮さん、波形記録を保存して執務室に急ぎましょう」

「はい、先生」

 田沼光博士と若宮咲苗助手は生徒会執務室への廊下を急いだ。

 徳田康代大統領は、女子高生キャビネットと関係者を執務室に集めた。
織畑信美首相、豊下秀美副首相、前畑利恵副大統領、明里光夏大統領補佐官、天女の天宮静女、陰陽師安甲晴美と徳田康代を合わせた七人はマジックミラーの前に集まり世界の終末を見つめていた。

『みなさん、今、見ている映像は映画ではありません。
ーー 歴史が変わろうとしています。
ーー みなさんは歴史の目撃者として心に刻み
ーー 後世にその記録をのこすのが私たちの使命です』



 徳田康代の会話中に田沼光と若宮咲苗が駆け込んで来た。

「康代さん、地震波が振り切れました」

『分かっているわ。
ーー あなたたちもマジックミラーを見て!
ーー 今の世界状況を目に焼き付けてください』



 神使のセリエがマジックミラーの前に黒猫の姿で現れた。

「康代よ、今、西和で巨大地震が発生した」

『セリエさま、合図ですね』

「もう時間は残っていないじゃろ」

 マジックミラーには、南和大陸の破局噴火が起きて火柱が幾度も成層圏を突き抜ける。
断末魔のような轟音が繰り返され西和大陸を引き摺り込む。

 西和大陸では、巨大地震が発生してマジックミラーからも激しい揺れが伝わる。
マグニチュード十超の巨大地震が無制限に繰り返されていた。

「先生、マグニチュードが十を軽く突破していますが・・・・・・」
若宮の言葉にみんなの血の気が引く。

「先生、マグニチュード十一でしょうか」

「十二を突破したら地球が割れてしまうが・・・・・・」



 船が沈没間際に船首が垂直になるように割れた大陸の岩盤が垂直になった。
無数の岩盤は崩壊を繰り返しながら数千メートル持ち上がり海面に叩き付けられている。
ブラックストン、ゴールドストン、レッドストンがあった場所は無惨な残骸を残し消えていた。

『あああー』

 徳田康代大統領が嗚咽を漏らした時、西和大陸に巨大な火柱が立ち上がる。
火柱は西和大陸を東西南北十字に貫き、大陸を引き裂きながら燃えていた。

 ウエディングケーキにナイフを入れるように、何度も八つ裂きに引き裂き無数の火山弾が成層圏を突き抜けた。

 大陸は何度も浮き上がり沈み、その度に巨大な大津波が発生した。
津波の高さは数千メートルを超えて地球を周回しようした。

「大陸が裂けてる・・・・・・」

 田沼と若宮は、床にへたり込み茫然自失となっている。
女子高生キャビネットも同じだった。



 ストップモーションのようにマジックミラーのリアルタイム映像が停止した。

 時の神エルミオの神使ルニャが赤猫の姿でセリエの前に現れた。

「セリエさま、時間停止をかけました」

「ルニャさま、ありがとうございます」

 セリエと八百万の神々が皇国に結界を張り巡らす時間稼ぎだった。

 風神と水神が巨大な渦を形成して巨大津波を渦の中に沈める。
巨大津波は生き物のように、渦の中をグルグルと激しく回転してうねるが、出口はない。
 エンドレスに回転を続け、大陸の残骸は渦の底に消えた。

「先生、メビウスの輪みたい」

「巨大津波も巨大渦の敵ではなかったみたいですね。若宮さん」

「蟻地獄、いいえ底無し沼でござるよー」

 火神は巨大津波の一部を蒸発させ、雷神が天空を暴れ龍神がぽっかりと空いた渦の中央に豪雨を滝のように降らせた。
 渦の中央には海底が見え、周囲を巨大な水柱が取り囲んでいる。
一部は水神と風神により巨大竜巻となり海水を天に巻き上げた。



 太平洋を挟んだ皇国の近くまで、巨大津波の群れは幾度も押し寄せる。
皇国の神々の結界が海の落とし穴に無数の渦を作り津波を拒絶していた。
津波は無数の穴に吸い込まれるように消え、皇国は八百万やおよろずの神々の結界に守られた。

 しかし、地球の神々は慈悲無く、北和、中和、東和の三大大陸を不毛の大地に変えるだけだった。

 西和大陸、南和大陸が沈没してから半月が過ぎた。
津波が徐々に小さくなり海は元の静けさを取り戻した。



 時の神の時間停止のお陰で皇国の時間にはズレが生じていたが徐々に戻りつつある。

 残された三大大陸は人や建物が消失して荒廃していた。
神々の大掃除は容赦なく実施され削除と駆除が繰り返された。

 地球は地球自身の自浄作用で正常を取り戻しつつあった。
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