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【一三七】康代殿、練習会に間に合うでござる!

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 徳田康代と大統領キャビネットは、万が一に備え待機することになった。
大統領執務室の隣に併設されている仮眠室のベッドで、徳田幕府司令部からの緊急連絡に備えている。

「康代さん、火星基地から映像が届いています」

『なにかしら』

「通信障害発生時の磁気嵐と聞いています」

『じゃあ、光夏、隕石じゃないの』

「いいえ、隕石と磁気嵐の両方と火星基地のスタッフが伝えています。
ーー 火星基地は、偶然被害なくスタッフも機材も無事との連絡がありました」

『光夏、火星って、どのくらい離れていますか』

「はい、司令部が伝えるところ、約二億五千三百万キロだそうです」

『月は、どのくらいですか』

「はい、今日の場合ですが、三十九万九千キロです」

『分かったわ。必要あれば、そちらのアナログ対応も必要になるわね。
ーー まあいいわ、今夜は静かそうなので、そろそろ仮眠しましょうか』

 大統領執務室のホログラムスクリーンに、指令部からの映像が写し出され、仮眠が棚上げになる。

三神みかみ司令、何かしら』

 大統領補佐官の明里光夏あかりみかが対応する。

「三神さん、ご苦労さまです。
ーー 何か動きがありましたか」

「はい、停電は回復していますが・・・・・・。
ーー 降雪量がこれまでにない規模で追いつきません」

「大統領と相談して折り返しで、よろしいでしょうか」



 脇で聞いていた徳田康代は、豊下秀美副首相を呼び、対応を指示した。
『そういう訳で、秀美は幕府に連絡を入れて・・・・・・。
ーー 明日をにしてください』

「康代さん、すべてを停止させるんですね」

『神使セリウスに相談して見るけど・・・・・・。
ーー 国民に被害が及ばないように政府は対応したいだけなの』

 明里光夏が康代に尋ねる。

「康代さん、臨時休日の発表は、どうなされますか」

『徳田幕府の緊急メールシステムで一斉配信させましょう。
ーー あと、光夏がネットからも、休日を宣言してください』



 徳田大統領は、臨時休日発表の書面にサインして、陛下に連絡を入れた。

『ご無沙汰しております。陛下』

「康代、今はどうされている」

『セリエさまとセリウスに支えられています』

「それで、明日の臨時休日な訳ですか」

『はい、時間稼ぎが必要かと』

「それが懸命です。君子危うきに近寄らずだ。
ーー 康代何かあったら、このホットラインで予を呼ぶのだよ」

『はい、ありがとうございます。陛下』

 明里は、ネット配信、豊下は幕府の対応に追われている。

「康代さん、神使ルニャに相談してみましょうか」

『神々を顎で使うようで気が進みませんが』

「康代さん、神さまは、そんなこと思いませんから、神頼みでよろしいかと」

『じゃあ、セリウス、お願いしてもいい』

 神使セリウスは、赤猫に変身して康代の前から消え光になった。



 セリウスは、神使ルニャの元を訪れ相談した。

「セリウス殿、頭を上げてください」

「ありがとうございます。ルニャさま。
ーー 時の女神さまのご機嫌が心配でございます」

「女神エルミオさまは、いつもすこぶるご機嫌でございます。
ーー セリウスさまの杞憂きゆうでございます。
ーー 我が主人あるじはセリウスさまの心の波動を捉えています」

 セリウスは驚きながらルニャを見つめていた。

「ルニャさま、では地球の異常気象を察しておられるのですか」

「はい、今、地球の天候は大幅に回復されていると思いますが」

「ルニャさま、ありがとうございます」

 セリウスは一礼してルニャの元から消えて光になった。



 翌日の朝、寝不足気味の大統領キャビネットのメンバーは、執務室の窓から差し込む陽射しに胸を撫で下ろしていた。

 東都の天候は未明に一時的な豪雨となり、大雪は雪解け水となり下水に溢れ出していた。
指令部は、大量の雪解け水に対応するセキュリティーを手動に緊急シフトした。
 水は下水道の中で蒸気と変わり消えて行った。

 臨時休日の宣言は消されずに皇国の国民は、それぞれの趣味に没頭することが出来た。
 国民思いの徳田大統領の中にあるのは幸せ政策があるだけと、すべての皇国国民が思っている。

 大統領執務室に生徒会役員の門田菫恋がやって来た。

「康代さん、安甲先生と廊下ですれ違って、伝言を受けています」

『門田さん、なんでしょうか』

「ちょっと連絡して欲しいとのことで、それ以外はなにも」

『そうですか。分かりました。
ーー 門田さん、ありがとう』

 康代は門田に礼を伝えるとホログラム携帯から安甲先生を呼び出した。

『変ね。お話中になるわ』

 康代は、静女、セリウスと数人の女子高生警備を従えてかるた部に移動する。

 唐木田葵部長と森川楓副部長が挨拶しに来た。

「康代さん、今日の臨時休日をみんな有効活用するべく集まっています」

『先生は、おられますか』

「ちょっと、遅れると連絡がありました」

『そうですか?』

「康代さん、すれ違いは、よくあることですよ」
セリウスだった。

「康代殿、すれ違いは杞憂でござる」



 静女が言った時だった。
 安甲晴美が袴姿の正装で部室の中に入ってきた。

『先生、今日はなにかあるのでしょうか』

 康代が、そう言って周囲を見渡すと全員が和装になっていることに気付く。
但し、練習用に見えた。

「徳田さん、和装には慣れが必要なのよ・・・・・・。
ーー 全員に和装をお願いして練習着を着用してもらったわ」

『私、知りませんでした』

「徳田さんからの連絡がないので・・・・・・。
ーー 掛けてみたがお話中で諦めたのよ」

 安甲が説明していると、由良道江先生と松山八重先生が現れた。
その後ろには、宝田劇団のスター五人が着物姿でいた。

「徳田さん、昨夜は、お疲れ様でした」
朝霧雫が言った。

 逢坂めぐみが、朝霧の前に擦り寄り、徳田にねぎらいの言葉を掛けた。

「徳田さん、お疲れでしょうが・・・・・・。
ーー 私たちと練習をお付き合いください」
 逢坂めぐみの言葉に、康代の心も雪解けのように解放される。

 神聖女学園の部室の外には、光が溢れていた。

「康代殿、雪解けのあとの練習会でござる」

 天女天宮静女の両手には康代の着物と袴があった。
『静女、帯がないわよ』

 静女は空間から帯を取り出し微笑んでいる。

「康代殿、練習会に間に合うでござる」

『静女は本当に優しい神さまね』
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