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姉(光)
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平和な時間は長くは続かない。
隼人さんのお母さんが帰ってきた。
荷物を持って、自分の家に帰る。
隼人さんは、お母さんと話していたが、すぐに出てきて、一緒に歩く。
「ごめん、急で。」
首を横に振る。
「こちらこそ。いつまでもいていいわけじゃないのに。」
少し語尾が、言い訳がましく聞こえるかな。
「家に帰る?」
隼人さんは、手を僕の頭に置いたまま、尋ねる。
「はい、多分もうそろそろ大丈夫だと思うので。」
掌から体温が伝わる。安心する。
「送る。」一緒に歩き出す。
隼人さんの家から数分、家の前に誰かの影が見え、緊張が走った。
隼人さんが僕の前に立って隠してくれる。その影は振り返ると、僕に向かって大きく手を振った。
「光~、おかえり~。」
隼人さんが、僕の表情を伺っている。
「姉さん。どうしたの?」
意外な人物が現れた。
帰ろうとした隼人さんの服の裾を掴んで
お願いする。
「一緒にいて下さい。」
また頭をポンポンとして、頷く。
姉と一緒に部屋に入る。姉は隼人さんに挨拶をして、笑顔を見せた。
「久しぶりだね。やっと会えた。」
ほっとした様子の姉にこちらも安堵する。
「急にきてごめんね。光に謝りたくて。ずっと、助けてあげられなくてごめん。」
頭を下げられる。
え。何が。
「お父さんとお兄ちゃんの件だよ。あいつらもう光に近づかせないから大丈夫。」
姉の話では、父が光に対して行ってきた行為が虐待と認められたため、接見禁止になった、という。両親は別れたそうで、母、姉、妹の三人で引っ越しをしたそうだ。
兄はまだ前の家に父と住んでいるらしく、前の家にはもう行ってはいけない、と言われた。
つい、この間、家に行ったのに、その時には何も聞かなかったのに。
どうやら母は僕にあった時、僕に申し訳なかったそうだ。別れた後、父は話し合いを求めていたようだが、母はそれには応じなかった。
母は姉に証拠を見せられるまで、全く気がつかなかったようで、相当ショックを受けていたらしい。
姉は姉で、自分一人ではどうしていいか分からず、とりあえず証拠を集めることに集中した、ということだった。
大学の先輩に、相談したところ、弁護士さんを勧めてくれて、バイト代全てきれいになくなったけれど、漸く膿を落とすことができた、と喜んでいた。
僕は、放心していた。姉とは仲良しとは到底言えなかったからだ。
姉は僕を見るといつも、真顔でニコリともしない。
ニヤけた顔をされる兄や父よりはいいけれど、やっぱり苦手だったから。
姉にいろいろ考えさせていたのだと、愛されていたのだと、思えて嬉しかった。
泣いてまだ謝り続けている姉の手を取る。
僕だって、言葉が足りなかった。
一言、助けて、と言えばよかったのだと。
「ありがとう、姉さん。ありがとう。」
泣き笑いみたいな笑顔になって、ちゃんと声に出していたかは定かではないけれど、姉が笑ったのはわかったし、横にいた隼人さんがもらい泣きしてるのが、見えたから、まぁ、いいか。
僕たちは和解した。
隼人さんのお母さんが帰ってきた。
荷物を持って、自分の家に帰る。
隼人さんは、お母さんと話していたが、すぐに出てきて、一緒に歩く。
「ごめん、急で。」
首を横に振る。
「こちらこそ。いつまでもいていいわけじゃないのに。」
少し語尾が、言い訳がましく聞こえるかな。
「家に帰る?」
隼人さんは、手を僕の頭に置いたまま、尋ねる。
「はい、多分もうそろそろ大丈夫だと思うので。」
掌から体温が伝わる。安心する。
「送る。」一緒に歩き出す。
隼人さんの家から数分、家の前に誰かの影が見え、緊張が走った。
隼人さんが僕の前に立って隠してくれる。その影は振り返ると、僕に向かって大きく手を振った。
「光~、おかえり~。」
隼人さんが、僕の表情を伺っている。
「姉さん。どうしたの?」
意外な人物が現れた。
帰ろうとした隼人さんの服の裾を掴んで
お願いする。
「一緒にいて下さい。」
また頭をポンポンとして、頷く。
姉と一緒に部屋に入る。姉は隼人さんに挨拶をして、笑顔を見せた。
「久しぶりだね。やっと会えた。」
ほっとした様子の姉にこちらも安堵する。
「急にきてごめんね。光に謝りたくて。ずっと、助けてあげられなくてごめん。」
頭を下げられる。
え。何が。
「お父さんとお兄ちゃんの件だよ。あいつらもう光に近づかせないから大丈夫。」
姉の話では、父が光に対して行ってきた行為が虐待と認められたため、接見禁止になった、という。両親は別れたそうで、母、姉、妹の三人で引っ越しをしたそうだ。
兄はまだ前の家に父と住んでいるらしく、前の家にはもう行ってはいけない、と言われた。
つい、この間、家に行ったのに、その時には何も聞かなかったのに。
どうやら母は僕にあった時、僕に申し訳なかったそうだ。別れた後、父は話し合いを求めていたようだが、母はそれには応じなかった。
母は姉に証拠を見せられるまで、全く気がつかなかったようで、相当ショックを受けていたらしい。
姉は姉で、自分一人ではどうしていいか分からず、とりあえず証拠を集めることに集中した、ということだった。
大学の先輩に、相談したところ、弁護士さんを勧めてくれて、バイト代全てきれいになくなったけれど、漸く膿を落とすことができた、と喜んでいた。
僕は、放心していた。姉とは仲良しとは到底言えなかったからだ。
姉は僕を見るといつも、真顔でニコリともしない。
ニヤけた顔をされる兄や父よりはいいけれど、やっぱり苦手だったから。
姉にいろいろ考えさせていたのだと、愛されていたのだと、思えて嬉しかった。
泣いてまだ謝り続けている姉の手を取る。
僕だって、言葉が足りなかった。
一言、助けて、と言えばよかったのだと。
「ありがとう、姉さん。ありがとう。」
泣き笑いみたいな笑顔になって、ちゃんと声に出していたかは定かではないけれど、姉が笑ったのはわかったし、横にいた隼人さんがもらい泣きしてるのが、見えたから、まぁ、いいか。
僕たちは和解した。
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