私の日常を返してください

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捜索は困難

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ユージーンの命を受けて未だに公爵家に戻る事が出来ていないランディの元に、ルースより新しい指令が届いていた。カトリーヌお嬢様が世話になった平民の侍女が偽物だった為に本物を速やかに連れて来い、とのことだが、よくわからない。

カトリーヌお嬢様がいて、なりすましなんてあり得るのか?ランディは潜入していた頃に少し見たことのあるカトリーヌとリラの姿を思い出す。平民のリラという侍女は、ロニエス商会からの紹介で入って来た。本人は至って普通の雰囲気を醸し出していたが、正直何故商会で働かないのか不思議なくらい、仕事のできる娘だった。お嬢様を彼女に付けたのは偶々だったのだろうが、ランディは誰よりも彼女がお嬢様の教育係でよかったと安堵した。

というのも、紹介状なしで放り出す事になった他の使用人達は本当に酷いものだった。侍女という仕事を実質していたのは、リラとお嬢様くらいであとは、仕事もせずに給料だけ奪っていくような奴らだった。

公爵家に雇い入れるように自ら働きかけたランディにすれば、どうしてそんな彼女が偽物なんてことになるのか不思議でならなかった。指令によると、そのあたりの細かい事情は知らされない為、想像する他ないが、ランディの想像の範囲を越えていて全くわからない。

「要は彼女を連れていけば良いんだろ。」

とても簡単なことだと思っていたが、リラの行方は中々掴めなかった。最初の住居は、平民街の端の方にある公爵家にほど近い場所だった筈だが、そこはとうに売り払われていて、その先も行けどもいけども姿が見えない。

まるで誰かから逃げているかのよう……と考えて、ふと、ランディは近くの職業斡旋所に足を伸ばした。

こんなに引っ越しを繰り返すなら先立つものは必要だ。ならば、短期の仕事でも見つけて頻繁に仕事をこなしては辞めていた筈だ。

ランディの読みは当たっていた。リラのことは、受付の娘が覚えていた。彼女曰く、リラは真面目で人気があったが、ある事情から一箇所に長居することが出来ないと言っていたらしい。

「詳しくは迷惑がかかるかもしれないから、と教えていただけなかったのですが、どうやらお貴族様に、命を狙われている、と怯えていたようです。あれって、単なる被害妄想だと思っていたんですが、違ったんですね。」

申し訳なさそうに話をする彼女は、ランディを彼女が言っていた追手だと勘違いしたようだ。

間違ってないために、否定はしなかったが、気になることを聞いてみた。

「私以外に彼女を追って来た人はいるのかな。」

「ああ、えーと、いました、ねえ。リラさんかどうか今まで判断はつかなかったのですが、お兄さんの話を聞いて、多分あの人もそうじゃないのかな、って人が。確か、伯爵家だったかな?なんかその関連の方が女性を探してました。その時はその特徴と、私が知ってるリラさんが結びつかなかったもので、違うのかなと思って、お役には立てなかったのですが。」

リラは逃げる為に印象を変えていた。ランディは彼女を見つけることが限りなく難しくなっているのを認めなければならなかった。




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