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月夜の2回目
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「――月に照らされ映る影、それが今宵最後の命だ」
「その声……ネモネア、なのか」
砂漠に朽ち果てた遺跡の柱の上に座る禍々しい力を得たあたいの姿に驚きと恐怖の顔が3人。どうやら仲間が出来たようだ。
「ふふっ、ひさしぶりだね勇者アヴエロ」
「その姿は……どうしたんですか、まさか魔王の力でっ」
「そうさ、お前に屈辱を味合わせられたあと、苦痛に耐えて魔王様に力をあたえられたんだ!」
「苦痛に耐えてだって……君は。ネモネア、癒しの森で戦ったときも言いましたよね“間違っている”と」
「間違いだと? お前にあたいの何が分かってるって言うんだっ!」
見透かしたような勇者の眼にあたいの身体から屈辱と怒りの紫炎が包む。
「ネモネアッ」
「……うるさいんだよっ、あたいは世界を変える魔王ルモールの配下、んであんたは世界を護る勇者っ、それだけだろうがっ!」
「違うっ、君はっ!」
「あたいは魔王様の配下ネモネアだっ、屈辱を味合わされた恨み、魔王様の邪魔をする勇者とその仲間達を殺す者っ!」
柱からフワッと浮く、雑念を捨てあたいの頭の中を勇者を片付けることだけに集中、全力で潰す。
「ヴェノム・サンダーァァァッ!」
魔王様の力で覚えた毒の雷魔法。片手から放たれる不気味な雷が3人を上から襲いかかる。空に浮かんでいれば勇者達の動きはまる見え、魔法を紙一重で避けているがそれも時間の問題。
これだ、これこそが魔王様の力。あたいは弱い故に捨てられ地獄を味わった。でもそれは弱いのが悪い、今はもう逆らうものは誰でも殺れる強者なんだ。
「アハハハハッ、逃げろにげろっ、力のあるものがこの世を支配するんだぁーっ!」
「毒の雷か、うわぁっ!」
魔法を避けきれずに壁に激突する勇者、これで厄介者ともお別れと容赦なく撃つ。
だが勇者は咄嗟に雷の魔法を繰り出してあたいの魔法を相殺。
「ハァ……ハァ、相殺できた……」
「やるじゃないか、なら5発同時ならどうだぁぁーっ!」
勇者1人に対しあたいが出せる最大数のヴェノム・サンダーを放つ。
終わりだと思った。
いや終わりだと思いこんでいただけで、毒煙の先に勇者は立ってあたいを見上げている。
「どういうことだ……」
「あなたの毒の雷に私の雷を混ぜて、同じ属性の雷を浴びた仲間の杖に避雷針になってもらいました……“ウイング”!」
羽の魔法で空中に羽ばたく。あたいが勇者ばかりに気がいきすぎたせいだ。
「ちいっ、ヴェノム・サンダーッ!」
「無駄です!」
やはり混ぜ合わさった雷は杖に向かってしまう。
「避雷針……どうやらあたいのこの新たな魔爪で殺されたいらしいな」
魔王様の翼と紫色で不気味に強化された魔爪で勇者に仕掛けた。勇者も剣で払い続けていく。
「また防戦、なめやがってっ」
しかしあたいが攻めてもせめても避けられる。剣の腕も手慣れていて次第に焦っていく。勇者には動きがわかってきたのか笑みがこぼれる。
「くっ、どうして」
「……君は、空中の戦いになれていないからです」
勇者には気づかれていたようだ。でも、
「なぜ、あたいにわざわざそんなことを……まさかまた説得でもしようってんじゃ……」
「泣いていたんじゃないですか?」
「なに……」
「親に捨てられた時の幼い君は、泣いていたはずです」
「また話……」
『――お父ちゃんお母ちゃんっ、あたい何でも言うこときくからここからだしてよぉぉ――』
「孤独、だったでしょう……」
「ううぅっ……ハァハァ……なんだ」
頭を抱えながら、よぎったあれはあのとき両親に、魔性の森に捨てられたあたい。いつの間にか大量に汗もかきだした。
「ネモネア」
「よるなっ……何でお前は……おまえはぁぁぁーっ!」
心を狂わせる存在、勇者。奴の言葉におかしくなるあたいは激高して、言葉を忘れたくてなりふり構わず突撃した。
ドサッ、と地面に落ちたのは翼を切られたあたい。
「そ、んな……また」
「頭によぎらせて苦しませてしまって、すまない」
言葉は耳に聞こえていたが、あたいは自分に呆れていた。魔法は攻略され、空中の慣れなさを見極められ、最後には我を失い敵に情けをかけられている。
「でもねネモネア、苦しいってことはそれは君が本当は両親の愛情がほしかったってことなんだよ」
「……あい、じょう」
「君は両親を愛していたんだ」
あい……。
「くっ……次で最後……あたいの全てを掛けて勇者を倒す……」
「ネモネア、どうして……」
あたいはその場から消えた。やっぱり変だ、勇者の話を聞くと自分自身がおかしくなる。それにどうしてあたいにそんな……。
だがそれもこれも魔王様が2度目の失敗許してくださるかどうかだ。
「魔王……さま……」
黒い衣の魔王様はいつもより不気味で恐く、大きな水晶を見ても振り向いてはくれない。しばらく膝を付き頭を下げた。
「……ネモネアよ」
「は、はい」
「また、勇者に負けたようじゃな……」
「はい……もうしわけ、ありません……」
「あの時、魔性の森で魔獣達が大人しいのに気が付き、原因を探ってみればネモネアよ、お前が現れた」
魔性の森で初めて魔王様を見かけてあたいは襲いかかったがあっさりやられた。殺されるかと思ったが『お前の力がほしい』とあたいにスカウトしてきて、のった。
「あの時のお前はまさに野獣そのもの、ぜひ我が部下にとスカウトした……だが今のお前はなぜか野獣性が失せているようにみえる。勇者に何をされた?」
頭も上がらない、不甲斐ない自分。
「それは、わかりません……魔王様……その……“あい”……っとはなんですか?」
「あい……“愛”か……」
「小さな頃両親に捨てられたあたいは、ただ生き残るためだけに殺して食べて、また殺しては食べて、そうして魔性の森で生きてきました。だから、“あい”と言うものがよく、わからなくて……」
「愛、か……それは――」
「その声……ネモネア、なのか」
砂漠に朽ち果てた遺跡の柱の上に座る禍々しい力を得たあたいの姿に驚きと恐怖の顔が3人。どうやら仲間が出来たようだ。
「ふふっ、ひさしぶりだね勇者アヴエロ」
「その姿は……どうしたんですか、まさか魔王の力でっ」
「そうさ、お前に屈辱を味合わせられたあと、苦痛に耐えて魔王様に力をあたえられたんだ!」
「苦痛に耐えてだって……君は。ネモネア、癒しの森で戦ったときも言いましたよね“間違っている”と」
「間違いだと? お前にあたいの何が分かってるって言うんだっ!」
見透かしたような勇者の眼にあたいの身体から屈辱と怒りの紫炎が包む。
「ネモネアッ」
「……うるさいんだよっ、あたいは世界を変える魔王ルモールの配下、んであんたは世界を護る勇者っ、それだけだろうがっ!」
「違うっ、君はっ!」
「あたいは魔王様の配下ネモネアだっ、屈辱を味合わされた恨み、魔王様の邪魔をする勇者とその仲間達を殺す者っ!」
柱からフワッと浮く、雑念を捨てあたいの頭の中を勇者を片付けることだけに集中、全力で潰す。
「ヴェノム・サンダーァァァッ!」
魔王様の力で覚えた毒の雷魔法。片手から放たれる不気味な雷が3人を上から襲いかかる。空に浮かんでいれば勇者達の動きはまる見え、魔法を紙一重で避けているがそれも時間の問題。
これだ、これこそが魔王様の力。あたいは弱い故に捨てられ地獄を味わった。でもそれは弱いのが悪い、今はもう逆らうものは誰でも殺れる強者なんだ。
「アハハハハッ、逃げろにげろっ、力のあるものがこの世を支配するんだぁーっ!」
「毒の雷か、うわぁっ!」
魔法を避けきれずに壁に激突する勇者、これで厄介者ともお別れと容赦なく撃つ。
だが勇者は咄嗟に雷の魔法を繰り出してあたいの魔法を相殺。
「ハァ……ハァ、相殺できた……」
「やるじゃないか、なら5発同時ならどうだぁぁーっ!」
勇者1人に対しあたいが出せる最大数のヴェノム・サンダーを放つ。
終わりだと思った。
いや終わりだと思いこんでいただけで、毒煙の先に勇者は立ってあたいを見上げている。
「どういうことだ……」
「あなたの毒の雷に私の雷を混ぜて、同じ属性の雷を浴びた仲間の杖に避雷針になってもらいました……“ウイング”!」
羽の魔法で空中に羽ばたく。あたいが勇者ばかりに気がいきすぎたせいだ。
「ちいっ、ヴェノム・サンダーッ!」
「無駄です!」
やはり混ぜ合わさった雷は杖に向かってしまう。
「避雷針……どうやらあたいのこの新たな魔爪で殺されたいらしいな」
魔王様の翼と紫色で不気味に強化された魔爪で勇者に仕掛けた。勇者も剣で払い続けていく。
「また防戦、なめやがってっ」
しかしあたいが攻めてもせめても避けられる。剣の腕も手慣れていて次第に焦っていく。勇者には動きがわかってきたのか笑みがこぼれる。
「くっ、どうして」
「……君は、空中の戦いになれていないからです」
勇者には気づかれていたようだ。でも、
「なぜ、あたいにわざわざそんなことを……まさかまた説得でもしようってんじゃ……」
「泣いていたんじゃないですか?」
「なに……」
「親に捨てられた時の幼い君は、泣いていたはずです」
「また話……」
『――お父ちゃんお母ちゃんっ、あたい何でも言うこときくからここからだしてよぉぉ――』
「孤独、だったでしょう……」
「ううぅっ……ハァハァ……なんだ」
頭を抱えながら、よぎったあれはあのとき両親に、魔性の森に捨てられたあたい。いつの間にか大量に汗もかきだした。
「ネモネア」
「よるなっ……何でお前は……おまえはぁぁぁーっ!」
心を狂わせる存在、勇者。奴の言葉におかしくなるあたいは激高して、言葉を忘れたくてなりふり構わず突撃した。
ドサッ、と地面に落ちたのは翼を切られたあたい。
「そ、んな……また」
「頭によぎらせて苦しませてしまって、すまない」
言葉は耳に聞こえていたが、あたいは自分に呆れていた。魔法は攻略され、空中の慣れなさを見極められ、最後には我を失い敵に情けをかけられている。
「でもねネモネア、苦しいってことはそれは君が本当は両親の愛情がほしかったってことなんだよ」
「……あい、じょう」
「君は両親を愛していたんだ」
あい……。
「くっ……次で最後……あたいの全てを掛けて勇者を倒す……」
「ネモネア、どうして……」
あたいはその場から消えた。やっぱり変だ、勇者の話を聞くと自分自身がおかしくなる。それにどうしてあたいにそんな……。
だがそれもこれも魔王様が2度目の失敗許してくださるかどうかだ。
「魔王……さま……」
黒い衣の魔王様はいつもより不気味で恐く、大きな水晶を見ても振り向いてはくれない。しばらく膝を付き頭を下げた。
「……ネモネアよ」
「は、はい」
「また、勇者に負けたようじゃな……」
「はい……もうしわけ、ありません……」
「あの時、魔性の森で魔獣達が大人しいのに気が付き、原因を探ってみればネモネアよ、お前が現れた」
魔性の森で初めて魔王様を見かけてあたいは襲いかかったがあっさりやられた。殺されるかと思ったが『お前の力がほしい』とあたいにスカウトしてきて、のった。
「あの時のお前はまさに野獣そのもの、ぜひ我が部下にとスカウトした……だが今のお前はなぜか野獣性が失せているようにみえる。勇者に何をされた?」
頭も上がらない、不甲斐ない自分。
「それは、わかりません……魔王様……その……“あい”……っとはなんですか?」
「あい……“愛”か……」
「小さな頃両親に捨てられたあたいは、ただ生き残るためだけに殺して食べて、また殺しては食べて、そうして魔性の森で生きてきました。だから、“あい”と言うものがよく、わからなくて……」
「愛、か……それは――」
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