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悔いを残さない道
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――話し合いが終わって教会に帰ってきたけど、あたいは憂鬱な夜。
「……なあアヴエロ、どうしてあたいは残るんだ」
「それは……」
「どうしたのネモネア」
「カルタ、さっき言ったけどあたいに残れって言うから」
「どうして? アヴエロ」
「ネモネアは、これまで辛い思いをしてきました。そんな君にこれ以上、魔王の事に関わってほしくない」
「そんな……」
「恐くないんですか、再び悪魔を感じるあの場所が」
アヴエロに言われてハッとした。たしかにあの魔王城には一度は悪に染まった自分、拷問、アヴエロたちを傷つけた死闘の場所。行きたいなんて思うはずはない、けど、あたいは……。
「ですから無理する必要はありません」
そう言ってあたいの肩にポンと手を置く。
「僕らに任せてください」
「……う、うん……」
返事をしてしまった。するとドクンッと胸の鼓動、どうしてだろう……やっぱり、後悔しないのだろうか……。
――くっ、ルモール
こ、これは……あっ、魔王っ!
それに、アヴエロもボロボロじゃないか!
スオーロ、ソレイル、アクアン老師っ!
「我に恥をかかせおって永劫許さぬわっ! 死ねぇぇぇーっ!」
やめろぉぉぉっ――。
「うわっ、はぁ……はぁ……ゆめ、か……」
魔王ルモールが生きている、アヴエロたちが殺される、こんな夢を見るなんて。
ドクンッ、また胸が痛い。いままでのようなドキドキして楽しいとかじゃない。まるで心臓を掴まされてるようで溺れるような苦しさだ……。
「――ふぅ、外は冷えるわね……あら、起きてたのねネモネア」
「シスター……カルタ……」
「どうしたの? 元気のない顔して」
悪夢のあと眠れずに外に出た。あたいは今、自分が分からない、どうしたいのか。魔王を倒した仲間で行ったほうが連携とか色々いいに決まってるし、アヴエロの言うことは正しいと思う。
あたいが付いていけばかえって足手まとい……でも……本音は付いていきたい、これってただのわがままだし、何が正解か、わからない。
「どうしたらいいかわからない、か……」
「変だよね」
シスター・カルタは静かにあたいの横に並んで空を見た。真っ暗いけど少し山に青黒い空が、朝が始まろうとしてる。
「あの時も夜だったわ」
「あのときって?」
「私が若い頃……ネモネアくらいだった年にね、修道士の修練としてラングネスの城下町からラナロースへ馬車で向かってたの」
そうして世界を周り知ることが修道士としての道だという。
「そのとき聞こえた」
「なにが?」
「女神フラデーアのお告げが」
「女神って……」
たしかクリスロッサ城でも神を祀るというその女神の名前がフラデーアってソレイルから聞いた。
「フラデーアは若く未熟な私に『シスター・カルタ貴女が身寄りのない子どもたちを救って、それは……』あなたにしかできない」
「……でもそれって……気のせいとか思わなかった?」
「思わなかった」
「どうして……」
「みんなに止められたわ、でも私の中ではたしかに聞いたという不思議な自信があった」
シスター・カルタは誰にでも優しい皆のお母さんみたいな人。でも、
「そこからすぐに、この教会を建てて身寄りのない子どもたちを探し始めた」
「カルタ……」
「フフ……私はね、自分の信じる気持ちに正直になって行動したの」
優しいだけじゃない。自分の信じた道を行く心の強さも持ってる人。
「ネモネアは、自分に正直に生きてるかしら?」
「あたいは……」
わからない、シスター・カルタの問に答えることは出来なかった……。
「――ではシスター・カルタ」
「戦いに、ならないといいわね。せっかく平和に暮らせると思ったのに」
「大丈夫ですよ」
「アヴエロ」
「それが勇者になった私の選んだ道ですから」
アヴエロはいつもの笑顔にシスター・カルタもあたいも不安がなくなっていく。
「……選んだ、道……」
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃいアヴエロ、必ず帰ってきてね」
「はい」
ドクンッ、こんなときに。
「……あっ……」
行ってしまう。
ドクンッ、ドクンッ、より強く胸の鼓動が鳴る。アヴエロが見えなくなってくる、本当にこれでいいのか、あたいは、ほんとうに、これで。
「ネモネア」
「シっ、シスターッ……」
真っ直ぐ見つめてくるシスターの優しい眼にあたいはみることができない。
「ネモネア、自分に正直に生きてる?」
夜中に問われた言葉……正直に、あたいは、あたいは。
「シスターッ、あたいやっぱり……やっぱり、アヴエロについていくっ。足手まといかもしれないけど、嫌われちゃうかもしれないけど……あたいは、あたいはやっぱりアヴエロについていきたいっ」
「そう、貴女が選びたい道なら行ってきなさい」
「シスター!」
「みんな」
教会からジュリや子どもたち、ブリジットもこっそりと集まった。
「ネモネアいっちゃうの」「さびしいよ」
「ごめん、あたいのわがままだけど、行ってくる」
「ネモネアさんの無事をお祈りしています」
「ありがとうジュリ……あとみんな」
「ここが貴女の帰る場所、ですからね」
「うん……じゃあ、シスター・カルタ、ネモネア行ってきます」
教会のみんなはあたいが見えなくなるまで見守ってくれた。足手まといとかどうでもいい、なんと言われようとアヴエロに付いていきたい。そしてシスター・カルタと教会で出会ったブリジットや子どもたち、その後やってきたジュリがあたいの家族、絶対に解決してまた帰るんだあたいの家に……。
「――お~いっ」
「え、ネモネアどうして」
「あたいもいく」
「でも、君に魔王とは距離を」
「あたいは元魔王の配下で勇者達より魔王に詳しいし邪魔にはならない」
「……しかし」
「これは自分で決めた事だっ、ダメって言われても付いていくから」
困った顔してるけど、どうしてもアヴエロやその仲間たちだけで行かせるわけには行かない。皆いい奴だから。
「ふぅ、言う事を聞いてくれる雰囲気じゃありませんね。わかりました」
「や、やった、ありがとうアヴエロ」
「まだ敵がいるかは分かりませんが、無理しないでくださいね」
「わかってる」
こうしてなにわともあれ崩壊した魔王の城にあたいも付いて行けることとなった……。
「……なあアヴエロ、どうしてあたいは残るんだ」
「それは……」
「どうしたのネモネア」
「カルタ、さっき言ったけどあたいに残れって言うから」
「どうして? アヴエロ」
「ネモネアは、これまで辛い思いをしてきました。そんな君にこれ以上、魔王の事に関わってほしくない」
「そんな……」
「恐くないんですか、再び悪魔を感じるあの場所が」
アヴエロに言われてハッとした。たしかにあの魔王城には一度は悪に染まった自分、拷問、アヴエロたちを傷つけた死闘の場所。行きたいなんて思うはずはない、けど、あたいは……。
「ですから無理する必要はありません」
そう言ってあたいの肩にポンと手を置く。
「僕らに任せてください」
「……う、うん……」
返事をしてしまった。するとドクンッと胸の鼓動、どうしてだろう……やっぱり、後悔しないのだろうか……。
――くっ、ルモール
こ、これは……あっ、魔王っ!
それに、アヴエロもボロボロじゃないか!
スオーロ、ソレイル、アクアン老師っ!
「我に恥をかかせおって永劫許さぬわっ! 死ねぇぇぇーっ!」
やめろぉぉぉっ――。
「うわっ、はぁ……はぁ……ゆめ、か……」
魔王ルモールが生きている、アヴエロたちが殺される、こんな夢を見るなんて。
ドクンッ、また胸が痛い。いままでのようなドキドキして楽しいとかじゃない。まるで心臓を掴まされてるようで溺れるような苦しさだ……。
「――ふぅ、外は冷えるわね……あら、起きてたのねネモネア」
「シスター……カルタ……」
「どうしたの? 元気のない顔して」
悪夢のあと眠れずに外に出た。あたいは今、自分が分からない、どうしたいのか。魔王を倒した仲間で行ったほうが連携とか色々いいに決まってるし、アヴエロの言うことは正しいと思う。
あたいが付いていけばかえって足手まとい……でも……本音は付いていきたい、これってただのわがままだし、何が正解か、わからない。
「どうしたらいいかわからない、か……」
「変だよね」
シスター・カルタは静かにあたいの横に並んで空を見た。真っ暗いけど少し山に青黒い空が、朝が始まろうとしてる。
「あの時も夜だったわ」
「あのときって?」
「私が若い頃……ネモネアくらいだった年にね、修道士の修練としてラングネスの城下町からラナロースへ馬車で向かってたの」
そうして世界を周り知ることが修道士としての道だという。
「そのとき聞こえた」
「なにが?」
「女神フラデーアのお告げが」
「女神って……」
たしかクリスロッサ城でも神を祀るというその女神の名前がフラデーアってソレイルから聞いた。
「フラデーアは若く未熟な私に『シスター・カルタ貴女が身寄りのない子どもたちを救って、それは……』あなたにしかできない」
「……でもそれって……気のせいとか思わなかった?」
「思わなかった」
「どうして……」
「みんなに止められたわ、でも私の中ではたしかに聞いたという不思議な自信があった」
シスター・カルタは誰にでも優しい皆のお母さんみたいな人。でも、
「そこからすぐに、この教会を建てて身寄りのない子どもたちを探し始めた」
「カルタ……」
「フフ……私はね、自分の信じる気持ちに正直になって行動したの」
優しいだけじゃない。自分の信じた道を行く心の強さも持ってる人。
「ネモネアは、自分に正直に生きてるかしら?」
「あたいは……」
わからない、シスター・カルタの問に答えることは出来なかった……。
「――ではシスター・カルタ」
「戦いに、ならないといいわね。せっかく平和に暮らせると思ったのに」
「大丈夫ですよ」
「アヴエロ」
「それが勇者になった私の選んだ道ですから」
アヴエロはいつもの笑顔にシスター・カルタもあたいも不安がなくなっていく。
「……選んだ、道……」
「じゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃいアヴエロ、必ず帰ってきてね」
「はい」
ドクンッ、こんなときに。
「……あっ……」
行ってしまう。
ドクンッ、ドクンッ、より強く胸の鼓動が鳴る。アヴエロが見えなくなってくる、本当にこれでいいのか、あたいは、ほんとうに、これで。
「ネモネア」
「シっ、シスターッ……」
真っ直ぐ見つめてくるシスターの優しい眼にあたいはみることができない。
「ネモネア、自分に正直に生きてる?」
夜中に問われた言葉……正直に、あたいは、あたいは。
「シスターッ、あたいやっぱり……やっぱり、アヴエロについていくっ。足手まといかもしれないけど、嫌われちゃうかもしれないけど……あたいは、あたいはやっぱりアヴエロについていきたいっ」
「そう、貴女が選びたい道なら行ってきなさい」
「シスター!」
「みんな」
教会からジュリや子どもたち、ブリジットもこっそりと集まった。
「ネモネアいっちゃうの」「さびしいよ」
「ごめん、あたいのわがままだけど、行ってくる」
「ネモネアさんの無事をお祈りしています」
「ありがとうジュリ……あとみんな」
「ここが貴女の帰る場所、ですからね」
「うん……じゃあ、シスター・カルタ、ネモネア行ってきます」
教会のみんなはあたいが見えなくなるまで見守ってくれた。足手まといとかどうでもいい、なんと言われようとアヴエロに付いていきたい。そしてシスター・カルタと教会で出会ったブリジットや子どもたち、その後やってきたジュリがあたいの家族、絶対に解決してまた帰るんだあたいの家に……。
「――お~いっ」
「え、ネモネアどうして」
「あたいもいく」
「でも、君に魔王とは距離を」
「あたいは元魔王の配下で勇者達より魔王に詳しいし邪魔にはならない」
「……しかし」
「これは自分で決めた事だっ、ダメって言われても付いていくから」
困った顔してるけど、どうしてもアヴエロやその仲間たちだけで行かせるわけには行かない。皆いい奴だから。
「ふぅ、言う事を聞いてくれる雰囲気じゃありませんね。わかりました」
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