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命がけの戦い
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「――どうした、勇者」
「ガフッ……」
「これが現実だ、魔王ルモールを倒したからと現を抜かしてこのざま。私に敗北した貴様はもはや勇者ではない、ただの下等な人間だ」
アヴエロの胸ぐら掴む魔王シャンイレール、だが抵抗する力もなくぐったり。周りを見渡すと溜め息を付いた魔王はアヴエロを投げ捨てる。
「つまらん、誰もかかってこないとは」
あたいも意識はあっても身体が思うように動かせずうつ伏せ状態。もう手が、方法がない。
「ネモネアたち……やられちゃった……」
近くに避難したが、やはり気になって隠れて観ていたのはクレマ。そんな彼女の後ろに何か物が落ちたような音がする。
「な、なにっ?」
「いたたたっ」
「ワニ……魔物?」
「ぐうっ……身体が、ん、お主は……魔族か」
「あ、うん……」
「お主、回復魔法は使えるかっ?」
「はい……出来る、けど……」
「頼む、わしの身体を動けるように、いや、出来うるだけの回復をたのむ!」
隠れてるクレマの後ろから瞬間移動で現れたのはアクアン老師。彼は魔王のたったの一撃でも魔法使いなため深手受け、回復を頼み込んだ。
「どうして……あたしが……」
「うっ、なにか迷ってるようじゃな」
「……どうすればいいか、わからなくて。悪い奴の仲間だったあたしが、いまさら勇者の仲間を助けるなんて……」
「そうじゃな、ちゃんちゃらおかしいかもしれん」
一度手を染めれば消えない人生の一緒傷。
「じゃがわしは、魔王の手先でも自分の恥を受け入れ勇者のために命を落とした者を知っておる」
「え……」
「その者は、勇者に好意をいだき努力し信頼を得てみんなの花となった……お主も変わりたければ、迷いを断ち切り一歩を踏み出すことじゃ」
「迷いを、断ち切る……」
クレマの中で何が動いた。自分の考えではなく、自分の本当の想いを感じて動き始めた。
「回復、します」
「すまん」
「……ワニおじちゃんあたし、なんでかわからないけどネモネアを助けたい」
「なぬ? お主をネモネアを知っておるのか」
「……あたしね、ネモネアの妹と、なの」
「ふふふ、そうかその赤い髪に緑の顔、はははっ、そうか……名は?」
「クレマ……クレマ・ルージュ。おじいちゃん?」
「クレマ、わしの最後の頼みを聞いとくれ……」
「くっくっくっ、まずはこの勇者の首を跳ねる」
「やっ、やめてよっ!」
「もう動けず声を出せないはず、流石だな魔族の女、フッフッフッ」
「首なら……首ならあたしのをやるから……お願い、やめて……」
アヴエロの首が跳ねるところなんて見たくない、想像だって嫌なんだ。そんなの見るくらいなら、好きな人が死ぬくらいなら、死んだほうがマシ。
「ううっ……うっ」
「ハッハッハッ、そんなにコイツの死に様が嫌だか……なおさら殺したくなった」
そう言って構える魔王シャンイレール。
「やめてよっ、おねがいっ!」
「まず1人っ!」
「アヴエロォォォーッ!」
「うあぁぁぁっ!」
「なに……」
仰向けに倒れたアヴエロは、突然目を覚まして魔王シャンイレールに斬りかかり頬と髪を掠った。
魔王はありえないその突然の状況に2秒程の僅かな時間、頭の中は白い景色のみ。
「魔王ぉぉぉっ!」
その隙にソレイルは獣魔法で早くなって魔王に激しく斬る。
「ソレイル、なんで……あっ!」
アヴエロとソレイルが急に今戦い始まったような動きと思ったとき、あたいの身体もダメージがなかったように元気に。
「「竜魔法ッ!」」
モントも起きて共に魔法を唱え魔王に向かっていく。
「これは……なんだ」
ソレイルの激しい剣に一度引こうとする魔王の足が地面から出ているなにかに捕まる。
「ファイア・ウィップッ!」
「ネモネアとモントッ、攻めろフォルスッ!」
「「うあぁぁぁっ」」
強化されたあたいらは竜爪と竜剣でこれでもかと腕が引きちぎれる思いで攻撃をした……。
「ど、どうだ……はぁ、はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ……もう腕が上がらないよ」
あたいとモントの今のすべての力を使って最後は突き飛ばしたつもり。ここまで力を出したのは初めてかも。
「そうだモント……この回復はどういう事だろう、スオーロなの?」
「いや、私じゃない」
じゃあどうしてと周りを見渡すけどみんな知らない。すると歩く音の方に顔を向けるとクレマだった。両手で何かを抱えてる。
「クレマ、にげろって言ったのに……その人は?」
「勇者の皆さんにネモネア……この人は」
抱えてるいたのは目を閉じているアクアン老師だった。
「どうして、傷だらけの血だらけなの!」
「それは」
「……ダメージを無くす魔法です……ネモネア・プリンセス」
「えっ!」
あたいたちが急に立てるようになったのはそういう理由だったんだ。みんなはそこで時が止まったように、目を閉じてるアクアン老師を見ていた。
「アクアン、老師……」
「アヴエロ……」
あの元気で可愛いとワニ顔のアクアン老師が、エメールも黙ってしまった。こんな、これが戦いだった、命を掛けるとはこういうことなんだ。この戦いで一つの命が散ったんだ……。
「なるほど、そういう事か」
アクアン老師に哀しむあたいたちをあざ笑うような顔で魔王シャンイレールは生きていた……。
「ガフッ……」
「これが現実だ、魔王ルモールを倒したからと現を抜かしてこのざま。私に敗北した貴様はもはや勇者ではない、ただの下等な人間だ」
アヴエロの胸ぐら掴む魔王シャンイレール、だが抵抗する力もなくぐったり。周りを見渡すと溜め息を付いた魔王はアヴエロを投げ捨てる。
「つまらん、誰もかかってこないとは」
あたいも意識はあっても身体が思うように動かせずうつ伏せ状態。もう手が、方法がない。
「ネモネアたち……やられちゃった……」
近くに避難したが、やはり気になって隠れて観ていたのはクレマ。そんな彼女の後ろに何か物が落ちたような音がする。
「な、なにっ?」
「いたたたっ」
「ワニ……魔物?」
「ぐうっ……身体が、ん、お主は……魔族か」
「あ、うん……」
「お主、回復魔法は使えるかっ?」
「はい……出来る、けど……」
「頼む、わしの身体を動けるように、いや、出来うるだけの回復をたのむ!」
隠れてるクレマの後ろから瞬間移動で現れたのはアクアン老師。彼は魔王のたったの一撃でも魔法使いなため深手受け、回復を頼み込んだ。
「どうして……あたしが……」
「うっ、なにか迷ってるようじゃな」
「……どうすればいいか、わからなくて。悪い奴の仲間だったあたしが、いまさら勇者の仲間を助けるなんて……」
「そうじゃな、ちゃんちゃらおかしいかもしれん」
一度手を染めれば消えない人生の一緒傷。
「じゃがわしは、魔王の手先でも自分の恥を受け入れ勇者のために命を落とした者を知っておる」
「え……」
「その者は、勇者に好意をいだき努力し信頼を得てみんなの花となった……お主も変わりたければ、迷いを断ち切り一歩を踏み出すことじゃ」
「迷いを、断ち切る……」
クレマの中で何が動いた。自分の考えではなく、自分の本当の想いを感じて動き始めた。
「回復、します」
「すまん」
「……ワニおじちゃんあたし、なんでかわからないけどネモネアを助けたい」
「なぬ? お主をネモネアを知っておるのか」
「……あたしね、ネモネアの妹と、なの」
「ふふふ、そうかその赤い髪に緑の顔、はははっ、そうか……名は?」
「クレマ……クレマ・ルージュ。おじいちゃん?」
「クレマ、わしの最後の頼みを聞いとくれ……」
「くっくっくっ、まずはこの勇者の首を跳ねる」
「やっ、やめてよっ!」
「もう動けず声を出せないはず、流石だな魔族の女、フッフッフッ」
「首なら……首ならあたしのをやるから……お願い、やめて……」
アヴエロの首が跳ねるところなんて見たくない、想像だって嫌なんだ。そんなの見るくらいなら、好きな人が死ぬくらいなら、死んだほうがマシ。
「ううっ……うっ」
「ハッハッハッ、そんなにコイツの死に様が嫌だか……なおさら殺したくなった」
そう言って構える魔王シャンイレール。
「やめてよっ、おねがいっ!」
「まず1人っ!」
「アヴエロォォォーッ!」
「うあぁぁぁっ!」
「なに……」
仰向けに倒れたアヴエロは、突然目を覚まして魔王シャンイレールに斬りかかり頬と髪を掠った。
魔王はありえないその突然の状況に2秒程の僅かな時間、頭の中は白い景色のみ。
「魔王ぉぉぉっ!」
その隙にソレイルは獣魔法で早くなって魔王に激しく斬る。
「ソレイル、なんで……あっ!」
アヴエロとソレイルが急に今戦い始まったような動きと思ったとき、あたいの身体もダメージがなかったように元気に。
「「竜魔法ッ!」」
モントも起きて共に魔法を唱え魔王に向かっていく。
「これは……なんだ」
ソレイルの激しい剣に一度引こうとする魔王の足が地面から出ているなにかに捕まる。
「ファイア・ウィップッ!」
「ネモネアとモントッ、攻めろフォルスッ!」
「「うあぁぁぁっ」」
強化されたあたいらは竜爪と竜剣でこれでもかと腕が引きちぎれる思いで攻撃をした……。
「ど、どうだ……はぁ、はぁ、はぁ」
「はぁ、はぁ……もう腕が上がらないよ」
あたいとモントの今のすべての力を使って最後は突き飛ばしたつもり。ここまで力を出したのは初めてかも。
「そうだモント……この回復はどういう事だろう、スオーロなの?」
「いや、私じゃない」
じゃあどうしてと周りを見渡すけどみんな知らない。すると歩く音の方に顔を向けるとクレマだった。両手で何かを抱えてる。
「クレマ、にげろって言ったのに……その人は?」
「勇者の皆さんにネモネア……この人は」
抱えてるいたのは目を閉じているアクアン老師だった。
「どうして、傷だらけの血だらけなの!」
「それは」
「……ダメージを無くす魔法です……ネモネア・プリンセス」
「えっ!」
あたいたちが急に立てるようになったのはそういう理由だったんだ。みんなはそこで時が止まったように、目を閉じてるアクアン老師を見ていた。
「アクアン、老師……」
「アヴエロ……」
あの元気で可愛いとワニ顔のアクアン老師が、エメールも黙ってしまった。こんな、これが戦いだった、命を掛けるとはこういうことなんだ。この戦いで一つの命が散ったんだ……。
「なるほど、そういう事か」
アクアン老師に哀しむあたいたちをあざ笑うような顔で魔王シャンイレールは生きていた……。
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