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23話:大好きだよ
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「触られたって言っても、頭をくしゃくしゃにされただけだよ! いつも綾瀬くんはそうやって僕をからかうから」
「……いつも?」
理由を説明したけれど、アランの表情はより一層険しくなる。
なんて言ったら正解だったのか分からずに困っていると、アランはバツの悪そうな顔をしてまた謝ってくる。
「ごめん、さっき反省したばっかなのに……また、同じことをしてた」
「だ、大丈夫だよアラン。僕は気にしてないから」
ヘヘッと笑いかけると、アランはまた僕をぎゅっと抱きしめてくれる。
抱きしめられた腕の力はいつもより強くて、アランが不安を感じているんだと思った。
彼が何に対しての不安を感じているのか、考えを巡らせる。
ーー僕が白雪さんと無理矢理くっつけようとしたから? それとも、僕が怒っているかもしれないと感じたから?
考えれば考えるほど答えは見つからない。
僕は思い切って素直に問いかける。
「ねぇ、アラン。さっき、怒っていたのは……僕が白雪さんのことを話して不快に思った、から?」
僕の問いかけに、アランは俯き少し間を置いて答えてくれる。
「怒ってたわけじゃないよ。ただ、ケイが白雪と仲良くなるのが……イヤ、だった」
それは、白雪さんがアランの運命のオメガで、無意識に大切な人を独占したいという気持ちが湧き上がったんだろうか……
胸が痛んだけれど、よく考えればそれは二人にとっていいことだ。
運命は、誰も変えられない……
「そっか……。じゃあ、僕はもう白雪さんには近づかないよ」
そう答えるとアランは真面目な顔で問いかけてくる。
「なぁ、ケイは白雪のことどう思っているの? 友達? それとも……もっと特別な存在?」
白雪さんとのことを問われて僕は苦笑いを浮かべる。
「白雪さんは友達だよ」
「本当に? オレのせいで……白雪への気持ちを……諦めてるんじゃない?」
ーー白雪さんへの気持ち!?
何を言いたいのか分からずに混乱したままアランの顔を見つめる。
アランは辛そうな顔できゅっと口を結び、何かにたえているような表情を見せる。
「白雪さんへの気持ちって言われても、僕は何も思っていないよ……」
「本当に? 絶対?」
「う、うん」
「……あとで、好きだった……とか言わない?」
ーー!?!?
アランとの会話がまったく噛み合わなくて、今までの会話を頭の中で巡らせる。
ーー何度も白雪さんへの気持ちを確認されたけど……もしかして、アランは僕が白雪さんを好きだと勘違いしているの!?
そう思った僕は慌てて口を開く。
「アラン! 僕は白雪さんのことを好きじゃないよ!」
誤解を解こうと必死に伝えると、アランはまだ信じきれていないのか不安そうに尋ねてくる。
「本当に? あとから、『実は……』とか言ってくるのもなしだよ?」
「そんなこと言わないよ」
「絶対に?」
「だから言わないって! だって……白雪さんは、アランにとって特別な人でしょ?」
「……え?」
「ん?」
二人して首を傾げ沈黙が流れ、しばらくして、アランが口を開く。
「ケイは、オレと白雪のことどんな関係だと思ってたの?」
「どんなって……二人は、運命の番だって思ってて……」
「運命の番!? そんなでたらめ……もしかして、白雪から聞かされた?」
「……うん」
僕が頷くと、アランは大きな大きなため息を二回吐いて僕を強く抱きしめ、早口でぶつぶつと呟く。
「……クソ。また、あいつに踊らされた……」
「え? アラン?」
「ごめん。白雪が言ったことは嘘だから。オレはアイツと運命でも何でもないんだ」
「え? え? ほんと、に? でも、白雪さんのフェロモンに当てられてこの前はヒートになっちゃったんだよね?」
「それはそうだけど、オメガのフェロモンだったらアルファは簡単に発情してしまうからな」
「でもでも、アランの発情すごく長かったでしょ? それは、運命の番のフェロモンだったからって白雪さんが……」
何がなんだか分からずにアランに問いかけると、アランはバツが悪そうに口を開く。
「あれは……その……」
「その?」
「その……あの……」
アランが答えにくそうに口をもごつかせる。
僕は真剣な顔をしてじっと見つめると、アランも答えてくれる気になったのか、僕に真剣な眼差しをくれる。
「あれは、ケイに触れたかったから、最初の日以降は発情したふりをしてたんだ」
「…………ん?」
ーー僕に……触れ、たかった?
目を瞬かせながら、アランの言葉を頭の中で繰り返す。
そして、言葉の意味を理解したと同時に、頬がカッと熱くなり心臓が跳ね、間抜けな声を出してしまう。
「あ、う、えーー!?」
口をパクパクさせていると、アランは恥ずかしそうに眉を下げて僕を見つめる。
「あの時は、嘘ついてごめんね」
「あ、う、うん!」
今、アランに嘘だったからと謝られても何がなんだか分からないので、とりあえず頷いておく。
ーー僕に触れたかった? なんで? どうして?
アランが発情した時の記憶も一緒に蘇り、あの行為が発情でもなんでもなくて、シラフの状態だったと思うと驚きと疑問と恥ずかしさが入り混じり、僕の頭はさらに混乱する。
そして、混乱した頭で、僕はアランに問いかける。
「な、なんで……僕とあんなことしたの?」
「なんでって……オレはケイのことが大好きだから」
「す……き……?」
今日一番に大きく首を傾げてアランの言葉を繰り返すと、アランはその問いに目を細め答える。
「うん、大好き」
彼の答えに放心していると、灰色の瞳が弧を描きいつもの優しい微笑みをくれる。
そして、頬を撫でられ、額から順にアランの唇が降りてくる。
額、鼻先、頬……そして、最後に唇。
柔らかな唇が離れ、その唇がまた僕に愛の言葉をくれる。
「ケイ、大好きだよ」
そう言って、アランはまた僕に軽くキスをした。
「……いつも?」
理由を説明したけれど、アランの表情はより一層険しくなる。
なんて言ったら正解だったのか分からずに困っていると、アランはバツの悪そうな顔をしてまた謝ってくる。
「ごめん、さっき反省したばっかなのに……また、同じことをしてた」
「だ、大丈夫だよアラン。僕は気にしてないから」
ヘヘッと笑いかけると、アランはまた僕をぎゅっと抱きしめてくれる。
抱きしめられた腕の力はいつもより強くて、アランが不安を感じているんだと思った。
彼が何に対しての不安を感じているのか、考えを巡らせる。
ーー僕が白雪さんと無理矢理くっつけようとしたから? それとも、僕が怒っているかもしれないと感じたから?
考えれば考えるほど答えは見つからない。
僕は思い切って素直に問いかける。
「ねぇ、アラン。さっき、怒っていたのは……僕が白雪さんのことを話して不快に思った、から?」
僕の問いかけに、アランは俯き少し間を置いて答えてくれる。
「怒ってたわけじゃないよ。ただ、ケイが白雪と仲良くなるのが……イヤ、だった」
それは、白雪さんがアランの運命のオメガで、無意識に大切な人を独占したいという気持ちが湧き上がったんだろうか……
胸が痛んだけれど、よく考えればそれは二人にとっていいことだ。
運命は、誰も変えられない……
「そっか……。じゃあ、僕はもう白雪さんには近づかないよ」
そう答えるとアランは真面目な顔で問いかけてくる。
「なぁ、ケイは白雪のことどう思っているの? 友達? それとも……もっと特別な存在?」
白雪さんとのことを問われて僕は苦笑いを浮かべる。
「白雪さんは友達だよ」
「本当に? オレのせいで……白雪への気持ちを……諦めてるんじゃない?」
ーー白雪さんへの気持ち!?
何を言いたいのか分からずに混乱したままアランの顔を見つめる。
アランは辛そうな顔できゅっと口を結び、何かにたえているような表情を見せる。
「白雪さんへの気持ちって言われても、僕は何も思っていないよ……」
「本当に? 絶対?」
「う、うん」
「……あとで、好きだった……とか言わない?」
ーー!?!?
アランとの会話がまったく噛み合わなくて、今までの会話を頭の中で巡らせる。
ーー何度も白雪さんへの気持ちを確認されたけど……もしかして、アランは僕が白雪さんを好きだと勘違いしているの!?
そう思った僕は慌てて口を開く。
「アラン! 僕は白雪さんのことを好きじゃないよ!」
誤解を解こうと必死に伝えると、アランはまだ信じきれていないのか不安そうに尋ねてくる。
「本当に? あとから、『実は……』とか言ってくるのもなしだよ?」
「そんなこと言わないよ」
「絶対に?」
「だから言わないって! だって……白雪さんは、アランにとって特別な人でしょ?」
「……え?」
「ん?」
二人して首を傾げ沈黙が流れ、しばらくして、アランが口を開く。
「ケイは、オレと白雪のことどんな関係だと思ってたの?」
「どんなって……二人は、運命の番だって思ってて……」
「運命の番!? そんなでたらめ……もしかして、白雪から聞かされた?」
「……うん」
僕が頷くと、アランは大きな大きなため息を二回吐いて僕を強く抱きしめ、早口でぶつぶつと呟く。
「……クソ。また、あいつに踊らされた……」
「え? アラン?」
「ごめん。白雪が言ったことは嘘だから。オレはアイツと運命でも何でもないんだ」
「え? え? ほんと、に? でも、白雪さんのフェロモンに当てられてこの前はヒートになっちゃったんだよね?」
「それはそうだけど、オメガのフェロモンだったらアルファは簡単に発情してしまうからな」
「でもでも、アランの発情すごく長かったでしょ? それは、運命の番のフェロモンだったからって白雪さんが……」
何がなんだか分からずにアランに問いかけると、アランはバツが悪そうに口を開く。
「あれは……その……」
「その?」
「その……あの……」
アランが答えにくそうに口をもごつかせる。
僕は真剣な顔をしてじっと見つめると、アランも答えてくれる気になったのか、僕に真剣な眼差しをくれる。
「あれは、ケイに触れたかったから、最初の日以降は発情したふりをしてたんだ」
「…………ん?」
ーー僕に……触れ、たかった?
目を瞬かせながら、アランの言葉を頭の中で繰り返す。
そして、言葉の意味を理解したと同時に、頬がカッと熱くなり心臓が跳ね、間抜けな声を出してしまう。
「あ、う、えーー!?」
口をパクパクさせていると、アランは恥ずかしそうに眉を下げて僕を見つめる。
「あの時は、嘘ついてごめんね」
「あ、う、うん!」
今、アランに嘘だったからと謝られても何がなんだか分からないので、とりあえず頷いておく。
ーー僕に触れたかった? なんで? どうして?
アランが発情した時の記憶も一緒に蘇り、あの行為が発情でもなんでもなくて、シラフの状態だったと思うと驚きと疑問と恥ずかしさが入り混じり、僕の頭はさらに混乱する。
そして、混乱した頭で、僕はアランに問いかける。
「な、なんで……僕とあんなことしたの?」
「なんでって……オレはケイのことが大好きだから」
「す……き……?」
今日一番に大きく首を傾げてアランの言葉を繰り返すと、アランはその問いに目を細め答える。
「うん、大好き」
彼の答えに放心していると、灰色の瞳が弧を描きいつもの優しい微笑みをくれる。
そして、頬を撫でられ、額から順にアランの唇が降りてくる。
額、鼻先、頬……そして、最後に唇。
柔らかな唇が離れ、その唇がまた僕に愛の言葉をくれる。
「ケイ、大好きだよ」
そう言って、アランはまた僕に軽くキスをした。
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