王太子様、丁寧にお断りします!

abang

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王太子殿下はキラキラ

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「近頃よく参加しているわね、フレイヤ」

「結婚結婚とお母様がうるさいから、探しているフリをしているのよティリー」

「王太子殿下はどうなの?」

「アレを見てどうなのと問う事ができるかしら?」



令嬢達に囲まれてキラキラとした笑顔を振りまくルディウスをチラリと見てから視線をティリアに戻すフレイヤ。



「確かに、貴女の好きなタイプではないわね……」

「ええ、軽薄そうな人は苦手なの」


「へぇ……じゃあどんな男がタイプなの?」


「「!?」」


先程まで少し離れた所で令嬢達に囲まれていた筈のルディウスが二人の背後からひょこっと顔を覗かせたのに肩をびくつかせた。


ティリアとフレイヤが形式的な挨拶をすると、爽やかな笑みで頷いたルディウスの質問に答えろという無言の圧力に言葉を探しているティリアはチラリとフレイヤを見た。



(えー、無視しようとしてるー……)


「フレイヤ?」

「あら、王太子殿下。私の好きなタイプは人ですわ」

「フレイヤ?」

「出来れば息のある人がいいです」

「フレイヤ?」



「どこから湧いて出たんですの?ルディ様」



とうとう訝しそうにそう言ったフレイヤの態度など気にもしないルディウスの様子にホッとしたティリア。



寧ろ、名を呼ばれた事に悶絶している様子で愛称で呼び合うようになっている二人はなんだかんだ似合っているのではないと考えて、やめた。


何故ならば、嬉しそうに微笑むルディウスを完璧に適当にいなしているフレイヤが目に入ったからであった。



「グレイモン令嬢も、久々だな。相変わらず綺麗だよ」


「ありがとうございます、殿下」

(わ~社交辞令でも悪い気しないわこんな美青年!)


それでもふと、フレイヤが悪い気をしていないか気になりチラリと彼女の方を確認したティリアの視線を追うようにルディウスもフレイヤを見た。



(めっちゃ嬉しそう!?)

「ルディ様、見る目がありますわ。ティリーはとても綺麗なんです」


ふわりとも、ふにゃりとも言える力の抜けた心底嬉しそうな笑顔で言うフレイヤの見たことのない表情にきゅんと胸を押さえた。


「フレイヤ……身に余るわ。貴女こそ絶世の美女じゃない」

「もう、ティリーったらほんと優しいのね。大好き」



(あー俺も言われたい)


「フレイヤは、グレイモン令嬢が本当に好きなんだな」

「勿論ですわ、大切な人なんです」



そんなフレイヤの表情にバタリバタリと倒れて行く令息達を横目で見て思わずその表情を隠すようにフレイヤを抱きしめてしまったルディウスは想像していなかった鳩尾の衝撃に驚いて、無実を証明するように両手を挙げた。



「ルディ様?」

「ごめんなさい」




「えっ……フレイヤ!?」

(殴った!?)


「えっなに?ティリー?」

「……何も」




「フレイヤ、誤解だ。すまない君の表情が余りにも可愛くて……下心は無い」


「どちら様ですか?」


「お願いだからリセットしないで、フレイヤ」


「二度としないで下さい」



(((王太子殿下に抱き締められるなんて羨ましい、ご褒美!)))



令嬢達の黄色い声と心の声など知らないフレイヤの黒々しい笑顔に「はい、もうしません」と反省する王太子の様子がおかしくてティリアはまた扇子を開いた。


(これでいいのかしら?にしても笑えるわね)


「お似合いだと思うけど……」


小さく呟いたティリアの声を拾ったルディウスとフレイヤの対照的な表情に苦笑いして「飲み物を取ってくるわ」と席を外した。



「嬉しいな」

「あ、ティリー……」

「君はほんとに俺に興味が無いな」

「何か言いました?」


首を傾げるフレイヤにふと、気になる事を思い出したルディウスは少しの期待を込めて彼女に質問する。



「近頃、社交会によく顔を出すが……目当ての人でもいるのか?」


(ルディ様です……と言われたい。言わせたい!)



「お母様の為に結婚相手を探しているフリをしているだけですわ」


「フリだと母君の為になっていないような気が……」


「気のせいじゃありません?」


「うん。いつか俺だと言わせて見せる」


「叶うといいですね」


「ああ、頑張るよ。覚悟しててフレイヤ」


そう言ってフレイヤの手の甲に口付けたルディウスに頬を染めてキャーと騒ぐ周囲に(これなら流石にフレイヤも……)と彼女の様子を窺ってから、落ち込んだ。



(((ハンカチで拭いてますけどーー!!!)))







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