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王太子殿下は求愛している
しおりを挟む「フレイヤ様!王太子殿下とは良好ですか?」
「お二人がとてもお似合いで羨ましいですわ」
令嬢同士のお茶会で次々にかけられる言葉にフレイヤは首を傾げた。
(どうしてこうなっているの…?)
今日も今日とて、ルディウスから送られてきた花と贈り物はまるで彼女は自分のものだと言わんばかりに茶会の開催場所に贈られていた。
本来、婚約者や恋人が相手や周囲への愛情のアピールとして貴族がよく行う行為だが稀に好きな人への求愛行動として贈られる事もある。
フレイヤにとってそれは身に覚えのないものだった。
「王太子殿下とはもうご婚約なされたのですか?」
「殿下はどうやら本当にフレイヤ様がお好きなようですねっ!」
「皆様、私と殿下は……」
フレイヤの潤んだ薄紫の瞳が憂いを帯びて伏せられて、白い肌に映える赤く水々しい唇が言いにくそうに控えめに開く。
完璧な所作で置かれたティーカップまでもが令嬢達を魅了する中、フレイヤはとうとう言った。
「私と殿下は、ただの知り合いですわ」
(((なんか殿下すごい不憫!!!!)))
「あっでも贈り物は求愛の行動だと言いますわよ!」
「そうそう!きっと恋心を抱かれているのですよ!」
令嬢達はルディウスをフォローするように口々に彼の素晴らしい贈り物を褒め称えたが、当の本人は淑やかに微笑むだけだった。
「きゃあ!」
「えっ、まさかお迎えに……?」
突然現れたルディウスの姿に、令嬢達は驚きながらも頬を染める。
一斉にフレイヤの方を微笑ましい表情で「お迎えに来られたのでは?」や「愛されていますわ」と彼女に囁いた。
「美しいご令嬢方、邪魔をしてすまないね」
「いいえ!お越し頂き光栄でございます……っ」
「フレイヤ……贈り物は気に入って貰えたかな?」
「はい。新手の嫌がらせかと思いました」
(((フレイヤ様ーーー!?)))
「え?」
「え?」
「意味は知っている……よね?」
「先程知ったばかりですわ殿下」
「あーなるほど」
「これは俺の気持ち、君に対する」
フレイヤは、思い付いたように顔を輝かせると何処からか珍妙な形の植物を取り出した。
(えっどっから出てきた?)
「では、私からはこちらを差し上げますわ」
「俺に?」
「ええ、父以外の男性に贈り物をするのは初めてですわ……」
頬を染めてはにかんだフレイヤの表情にかぁっと顔を赤く染めて嬉しそうに受け取るルディウス。
そんな様子をドキドキしながら見守る令嬢達
「これは?」
「これは、他国の植物でヒョウタンといいますの」
掌に乗るサイズの丸くてくびれたフォルムのそれを笑顔で見つめるフレイヤを抱きしめようと手を伸ばすと、サッと避けられる。
「なぜ……これを俺に?」
「返事が必要かと……」
「誰か意味の分かる者はいるか?」
控えていた側近達にそう問いかけたルディウスに真っ青な顔色で前に出たローデンという侍従は震える声で呟いた。
「"手に負えない重さ"です陛下」
「え……」
(((殿下、やっぱり不憫!!!)))
「……ちなみに、父上には何を?」
「雑草」
(((えーっ……)))
「っし、勝った」
「……」
(あ、良いのね)
「何だ?フレイヤ?」
「いえ、今日は陛下の変人さが増しているなぁと思って……」
「……」
(お前がな)
「……何か?」
「いや……」
「でも」
「ん?」
「薔薇はとても好きです、ありがとうございますルディ様」
そう言って心底嬉しそうに微笑んだフレイヤは本当に可愛くて、令嬢たちも、ルディウスも一瞬時が止まったように感じた。
(あーやっぱり好きだ)
「フレイヤっ!」
「あ……えっとはじめまして?」
「だからリセットやめて」
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