王太子様、丁寧にお断りします!

abang

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誤解だ、頼むから無視しないで

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「ルディウス殿下ぁ~、今日も素敵ですぅ」

「あぁ、ありがとう」


偶々だった、いつも通りレディ達と軽く挨拶を交わしているとえらく距離感の無い令嬢に捕まってしまった。

いつもならば上手くすり抜けるのだが、なんせ話しが通じないし遠慮がない。周りの令嬢達をも威嚇するような勢いに引いているのか一歩離れた所で引き攣った笑みを浮かべているばかり。


(誰か、来てくれれば……)


友人や側近達が来るまでの辛抱かと観念した時、突然令嬢のマシンガントークがピタリと止まる。


「あ……」

「あら、ご機嫌ようルディ様」

「あ、フレイヤ!!」


「……ご機嫌よう、フレイヤ様」


何を思ったのかぎゅっとルディウスの腕にしがみつく令嬢は、あからさまに不機嫌そうにフレイヤに挨拶をする。

助けて、と思いを込めてフレイヤに視線を送ると何故かハッとしたような表情をした後怖いほど美しく微笑んだフレイヤ。


「ああ!なるほど!」

「えっ?」

(一応、伝わったのか?)

「お邪魔だったようですね、それでは失礼致しますわ」



「そんな、フレイヤ様に気を遣わせてしまうなんて」

「いいのよ、気になさらないで!」

「ふ、フレイヤ!!」



「ルディ様っ、ちょっと待って……!」

「君にルディと呼ばれる事を許可した記憶はないが?」

「……っそれは!申し訳ありませんっ」

「大体、君は誰なんだ!」

(((あっ……知らんかったんかい)))


フレイヤを追おうとしたルディウスを呼び止める令嬢に冷ややかに言ったルディウスの初めて見る怒ったような表情に皆が驚く。

と、同時に令嬢がルディウスに認知されて居ないことにも驚いた。




フレイヤの手首を捕まえて、「フレイヤ」と切羽詰まったように呼ぶルディウスの切実な表情にもまた女性達はきゅんと胸を軋ませたが、

当の本人には効果が無かったようで、全く何事も起きていないかのように親友のティリアを見つけたようで和かに挨拶をしている。



(((無視!?)))



「フ、フレイヤ……その、片方の手を掴んでいる殿下と先ずちゃんと話してはどうかしら……あ、殿下ご機嫌よう」


「いや、君も失礼だな」

「どう見ても巻き添えですもの」

「悪い」


「やだわ、ティリー。左手はさっき捨ててきたのよある筈ないわ」

「は?いや……っ左手殿下が……」

「えっ?左手?探そうか?」

「「……」」

「フレイヤ、俺が悪かった。誤解だから無視しないで」



「はっ!左手が話し始めたみたい……不気味だわ」

「いやそれ殿下だわ」

「うん。知ってる」


(((あっ良かった!!!)))


「いや、そらそーだろ」

「ティリー、コレを切り離す方法って無い?」

「フレイヤ、ごめんなさい。ルディと呼んで」

「……」


見兼ねたティリアが「フレイヤ、やめてあげなさい」と本気の声色で諌めるまで無視され続けたルディウスは数分の間で少しやつれたようにも見えた。



「ルディ様……」

「誤解だ、彼女の事は名も知らない」

「何も言っていませんが」

「嫉妬してくれているんだろう」

「まず……大体、君は誰なんだ!」

「……」

「……」

まるで先程のルディウスのように言ったフレイヤがあまりにもルディウスの真似が上手くてティリアは笑いを堪えている。


「フレイヤ」

「……」

(いや、何で澄ました顔してるんだ)


「フレイヤ、食べるのをやめろ」

「……何ですか」

「誤解だから、それと無視しないで」

「何がですか?私には関係ありませんが」

「それでも、君には誤解されたくないんだ」


「……そうですか」


「何度も言うけど、俺は君が好きだフレイヤ」

「ーっ」

皆はもう隠す事なく二人に注目している。

どことなく照れているようにも見えるフレイヤと、切なる瞳でフレイヤの両肩を痛くないよう気遣うように掴んで正面で向き合うと皆のもう一押しだ!という気持ちが伝わったのか「フレイヤ」と誰もがどきりとするような切なくも愛おしさの籠った声で読んだ。


「はい」

「これは、初めてちゃんと伝えるけど俺は、」



(((殿下、頑張って!!!!)))



「俺は、フレイヤを愛している」



(((言ったーーー!!よっしゃーーー!!!)))



「いや、まず名乗れ」


「フレイヤ?」


すん、と真顔に戻ったルディウスと


ティリアの怒りを含んだ彼女を呼ぶ声だけがやけに響いた。


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