王太子様、丁寧にお断りします!

abang

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甘やかしすぎ注意報

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「な、なんだコレは!?」

「いえ、それは……っ」

「……いい。自分で確認してくる」


ルディウスはフレイヤの使用人らしき男との密会の記事で埋め尽くされた新聞を握り締めて、執務室を出て行く。

「あ……殿下っ」

執事の言葉は届かず、彼は護衛を一人だけ連れてフレイヤの所に行ってしまった。


当のフレイヤは今日はティリアと二人でバルコニーで茶会をしており、和やかな雰囲気と久々の二人きりの時間を楽しんでいた。


そんな雰囲気をぶち壊す「お待ち下さい殿下!」というメイドの慌てる声が聞こえてきて「殿下」という言葉にフレイヤの片眉がピクリと動いた。


「どうやら、殿下がこられたようねフレイヤ」

「今日は絶対に来ないで下さいと伝えたはずなのに……」

「無駄だったようね」

「……」



「フレイヤ!これは一体誰なんだっ」


潤んだ瞳で押しかけたルディウスが問い詰めると「あぁそれですか」とため息をついてルディウスから新聞を奪い取った。


「なにそれは」

「ティリー、大した話じゃないのよ」

「これは大した話だ……まさか想い人が居るのか?」


「その写真は」


特に表情を変えないフレイヤの言葉の続きを促すような二人の視線も特に意に介した様子もない。


「その写真の人は、貴方ですルディ様」



「え?」

「あー…」


「この間、殿下が街を歩きたいとしつこかったので変装をして出かけた時でしょう。なぜ使用人だと思われたのかはわかりませんが」


(分かる気するわー…)


「なっ、じゃあこれは俺との初ロマンス記事ってこと?」

「殿下、喜んでいる場合ではありません。コレを見て下さい」



ティリアが記事の写真を次々と指差す。


「殿下が日傘をさしてあげる所、迷惑そうなフレイヤ」

「殿下が荷物を持ってあげる所、戸惑うフレイヤ」

「殿下が……」

「ティリー、もう良いわ。きっとルディ様は遠回しに私を殺すおつもりなのよ」

「不敬罪で?」

「そう、不敬罪で」

「え"?」

無自覚にフレイヤに尽くしすぎるルディウスは変装して付添人を装っていたのだろうか?甲斐甲斐しく世話を焼く様子はまるで使用人に見える。

けれどルディウスだと分かる者から見れば、王太子を顎で使うような不敬があってはならないと糾弾されるべき事態でもあるだろう。



ティリアとフレイヤに諌められ、ルディウスは反省した様子を見せる


「そうだな、俺は少し配慮が足りなかったようだ。あ、これ膝に乗せて冷えるから」



「フレイヤもこう見えて礼儀は弁えている子です」

(多分、というか願望、最低ラインはおっけーだしいいわよね)



「ああ……気をつけるよ。フレイヤ、付いてる」

「甘やかしすぎはいけませんよ……本当に聞こえていました?」

「ん?」


フレイヤの足が冷えると膝掛けをかけてやり、お菓子が付いていると口元を拭ってやり、お茶のお代わりを入れてやるルディウスは言葉こそ反省しているが行動は真逆。
 
もう殆ど表情の変化のないフレイヤは、どことなく不気味な笑顔だ。


「どうせ不敬で死ぬなら、怖がるだけ無駄よね……」


そう呟いたフレイヤは真面目な顔でルディに言葉を投げた。

「ルディ、ほんとに止めて。ウザイわ」

「……」

(フレイヤ……終わった、やらかしたわね)


ティリアはとうとうフレイヤはもう不敬を問われるのではないかと思って俯いたが、ルディウスは何かぼうっとして考えている様子だった。


(ルディ呼び……ため口……)

「はっ!まさか……結婚!?」

「いや違うわ帰れ」

「フレイヤ、アウト!」

「心を開かれている……」

(殿下馬鹿で良かったぁあ)



※ルディウスは、新聞記事を全て切り抜いて保管しました。

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