王太子様、丁寧にお断りします!

abang

文字の大きさ
20 / 42

本当に一途なの?

しおりを挟む



フレイヤは悩んでいた。

ルディウスの第一印象は軽薄そうなノリと雰囲気の人だった。

その印象に違わず彼は女性に優しいし、女性が好きだ。

ルディウスは男女問わず人気があるし謙遜しない。

所謂ナルシストである、


けれど、誠実で、良い人だ。


彼に会うたびに彼が等身大で、飾らない人だと言う事や底なしに優しい人だって事を知る。



「信じてもいいの?」


窓際に座って外を眺めて黄昏てい……るわけがないフレイヤの言葉と表情とは合わない不可解な行動に侍女は首を傾げた。


「ところでお嬢様は何をしていらっしゃるのですか?」

「模様替えよ」

「それでは扉が家具で塞がりますが……」

「流行っているのよ」



(家具を扉の前に積むのが?)



「では、私共が運ばせて頂きます」

「ありがとう」

「へぇ模様替えか、いいね」

フレイヤに声をかけるのは、バルコニーの柵に座っている誰かで聞き覚えのある声に侍女が急いでカーテンを開けると、

「やぁ、フレイヤ」

「いや、もう意味ないわ」

そう、なにを隠そう。悩みの種であるルディウスを締め出そうと彼が来る前に扉を塞いでいたのだがそのルディウスは何故かバルコニーに居る。


「扉が開かないから登ってきたよ、フレイヤ」

「ここセキュリティ大丈夫かしら?」

「未来の夫だと言えば皆快く通してくれるよ!」

「ちょっと、どうなってるの公爵家」


とは言え、それ程までにルディウスに信頼を置いているのが分かる。

父は物腰柔らかだが、鋭い人だし、厳しい人だ。

肩書きや、地位に靡く人ではない。

ルディウスを受け入れているという事は彼が父のお眼鏡に叶うほどの男性だと言う事だろう。


「けれどもこの人ストーカーなのよね」

「誰もが愛する人を目で追うさ」

「物理的に追って来てますが」

「まぁ、ご愛嬌で」

「え、わかんない」



(お嬢様も変人だけれど、殿下も変な方よね……)



「今日は、会いたくなかったんです……」

「え……俺、何かした?」



不安げなルディウスをチラリと見て、眉を顰めるフレイヤ。

そんなフレイヤの手を取って「お願い、話してくれる?」って切実に問うルディウスはフレイヤが目を伏せたのを見て、もう一言


「俺はフレイヤに嫌われたら駄目、フレイヤだけには嫌われたくないんだ」

って絞り出すような声で弱々しく言った。



「どこまでが、私だけに向ける言葉ですか?どこまで貴方を信じてもいいのですか?」


「……っ!」


「恋なんてした事ないし、よく分からないままで不安なんです」


「フレイヤ……」


「私がもしかしたら、こんな変人を好きになってたら……って」

「おい」

「お嬢様?」



ムッとした顔で、少し頬を膨らませたルディウスはそのままフレイヤを引き寄せてぎゅっと閉じ込める。


「……離してください」

「俺は、フレイヤが好きだよ。フレイヤだけが好き」

「ルディ様っ、離し……っ」



「初恋なんだ」



そう言ったルディウスの顔が真っ赤で、「格好悪っ」ってそっぽ向く癖に強く抱きしめて離してくれないものだから、フレイヤまで真っ赤になった。



「も、し……これが恋なら、私も初恋です」


「……もう、結婚って事でいいかな?」

「うん、絶対ムリ」

「えぇーー!?」



「殿下、結婚はまだ早いかと」

「そうですよ、これだから殿下は……」

「まずは恋人になりませんと……」



「いや、護衛の人達も全員で登ってくるのやめて下さる?」


(お嬢様の他に変人が沢山……)


ふらりと倒れた侍女に驚いたフレイヤが「刺客だわ」と短剣を抜くからギョッとした護衛達が「フレイヤ様!違います!」と騒ぎ出したその声で意識の戻った侍女が「お嬢様!」と叱るまであと数秒……




しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処理中です...