王太子様、丁寧にお断りします!

abang

文字の大きさ
23 / 42

恋人は世界一可愛い人

しおりを挟む


「ふふん、俺の恋人……で良いんだよな?」

「多分、そうでしょうね」


隣でクスリと笑うティリア嬢は、凄く優しい目で相変わらず囲まれているフレイヤを見つめている。


今日もフレイヤの美貌は子息達の頬を赤く染め上げているが、俺には恋人としての余裕がある。


「ごきげんよう、殿下」

「あぁ大臣」

「にしても、お噂のご令嬢はとても人気があるようですね」

フレイヤは今日も美しくて聡明だからな」

「お!もうその様な御関係だったとは……!」



「流石、殿下ですな」と感心する大臣とのこのやり取りはもう今日数えきれないほどの人達とした。


冷めた目で俺を見るティリア嬢は、失礼な事に人避けとして俺を使いながらフレイヤを待っているのだ。


彼女もまた子息達の関心の矛先であるからだが、俺としてもフレイヤを待つ上で都合がいいので良くこうして壁際に並んで待っている。



「フレイヤ嬢、今日もお美しいですね!」

「あぁ自慢の恋人なんだ、俺に勿体ない人だよ」


口々におめでとうと皆が言うので気分が良い。


やっと叶った初めての片想い、もとい初恋はこんなにも幸せなのか!


「どうしよう、幸せすぎる」

「殿下が緩みすぎてて不安」

ティリア嬢の辛辣な言葉は全て受け流すことにしている。


流石、フレイヤの親友とあって王太子と言えど遠慮が無いのだ。

それでいて無礼ではない作法は完璧なのだから返って怖い。


何故ならばフレイヤに関しては、

堂々となのだから

非の打ち所がないティリア嬢は恐ろしいと思うと呟けば、




「いや、完璧にとても無礼な人の方が怖いわ」



って真顔で呟き返されたので、聞こえないことにした。


「また聞こえないフリ……殿下はフレイヤに甘すぎます」

「君に言われたくは無いが」

「「……」」



そうは言っても、公爵令嬢として御公務モードのフレイヤはどこからどう見ても完璧な淑女だ。



「フレイヤを傷つけないで下さいね」


突然、そう言ったティリア嬢の目は真剣だった。


「約束する。幸せにすると」


そう言うと安心したように表情を和らげて、


「フレイヤは不器用で変人だけれど何度も救われてるんです」


「うん」


「分かりにくいけどいつも守られてばかりで、私がフレイヤの世話をして居ると皆思っているけれど。本当は私は守られているんですよ」


確かに、意外だった。

けれどティリア嬢の目はやっぱり真剣で、少し離れた所にいるフレイヤを優しく見つめたままだ。

「暇つぶしに」としてくれたフレイヤの話は驚く事ばかりで、彼女は本当にただの令嬢なのか?と疑う事もあるが、笑ってしまうほど現実離れしたものばかりでパーティーだと言う事も忘れて夢中になった。


付き添いの護衛騎士も俺にバレてないつもりだが肩をずっと震わせているし、一方離れて付き添っているティリア嬢の侍女は寧ろ彼女に気を使う事なくクスクスと笑っている。



「ーそれで、私が攫われた場所をお父様より早く見つけたフレイヤは一人で乗り込んできて三十はいる暴漢を一人で倒したんです。その姿はもう人などとうに超えてゴリラのようでしたわ」


「ぶっ!」


「でもね、追ってきた彼女の護衛騎士に叱られてもケロッとしていた癖に私の手首の縄のアザを見て泣きじゃくってくれたフレイヤが優しすぎて心配になりました。自分をもっとかえりみて欲しいと」



「私も、フレイヤが大切で心配なんです」

そう言ったティリア嬢の言葉は切実に聞こえた。


「フレイヤに、怪我は無かったのか?」

「無傷だったわ」

「相手は三十人の男だったんだろう!?」

「寧ろ男達は、ボコボコでした」

「……」



それでも、やっぱりフレイヤは凄くて、素敵な、世界で可愛い恋人だと誇らしく思った。





「あ、御公務モード終わったようですわ」

「フレイヤやっと来るな」



そう、俺の大切な美しくて何でも出来る友達想いで自慢の……


素敵な……


「……」

「あれ?」


彼女はパーティーに似つかわしくない何かを引き摺っている。



「ティリア嬢あれは……」

「見知らぬ男ですわね」


「お二人とも、ごきげんよう」



「フレイヤ、ソレは何?」

「あっ……これは刺客です」


「「は?」」


「さっき殿下の元に、毒入りの飲み物を運ぼうとしていたので」


素敵な……俺の……ゴリ……恋人。


「うん、気のせいだ。愛おしい君がゴリラに見えた事なんてない」

「殿下もうそれ口に出てるので、アウトです」


「二人とも、私への感想よりも刺客に反応してくれない?」



「「あ、ごめん」」


「私の恋人……らしき人に危害を加えようとする者は許さないわ」

「うん、照れ隠しが安定に下手くそだわ」

「可愛い」



しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

憧れの騎士さまと、お見合いなんです

絹乃
恋愛
年の差で体格差の溺愛話。大好きな騎士、ヴィレムさまとお見合いが決まった令嬢フランカ。その前後の甘い日々のお話です。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

妾に恋をした

はなまる
恋愛
 ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。  そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。  早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。  実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。  だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。  ミーシャは無事ミッションを成せるのか?  それとも玉砕されて追い出されるのか?  ネイトの恋心はどうなってしまうのか?  カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?  

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...