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この親にこの子あり
しおりを挟む私は今日も親友の邸に招待されて、昼食を一緒にとっている。
ここはもう、第二の家族のような感覚で彼女達もまた私をそう思ってくれているのが言動でもよく伝わるので有難い上にとても嬉しい。
前にそう伝えた時は、どこぞの誰かに市井で教わったのだと言う言葉でニヤニヤと返された。そう「ティリーはツンデレね!」だっけ。
意味を聞いたら「あんまりよく分からないの」らしく兎に角使う場面は何となくここかな?って感覚だったらしい。
「ティリア、いつもすまないね」
「いえ、おじさま。こちらこそありがとう御座います」
「まぁ!固くならないで昔の通りで話して頂戴ねぇ」
「そうだよティリア」
「では、お言葉に甘えて」
「ねぇ皆、この魚の皮は食べられるのかしら?」
「「「……」」」
話の流れを完璧に無視する平常運転のフレイヤを少し見つめたあとに溜息をついたおばさまを横目にフレイヤに返事をする。
「それは食べなくてもいいのよ、フレイヤ」
「ありがとう!ティリー!」
(ティリアったら、フレイヤにすっかり慣れてるわね)
「うちの娘たちは今日も可愛いなぁ」
「あら、あなたそんな可愛い娘を戦地に送り出した事私は怒っていますのよ?」
おばさまが笑顔で怒っているのを、全く悪びれる様子なく「今日も綺麗だな」って眺めているおじさまははっきり言って、一見常識人であるがフレイヤによく似ている。(中身が)
見た目は見目麗しい二人の更にいい所だけをかいつまんで作ったような容姿だと言うのに中身は全く変人なフレイヤが好きだ。
「戦地?あれはただの小さな揉め事だよ」
「ええ、けれど生捕りは少し難しいですお父様」
「んーじゃあ首だけで……」
「おじさま、絶対にダメですよ?」
フレイヤにそんな冗談をいうと本当にやりかねないのだ。
そもそもおじさまが本当に冗談で言っているのかどうかも分からないのが余計に怖い。
「もうっティリアが居てくれて助かるわ、うちの人達ってほら……」
「少し変わってるでしょ?」って苦笑いしたおばさまは可愛いけれど思わず口からでてしまう本音。
「少しじゃなくてだいぶだわ」
「「……」」
「もうっティリーったらお父様とお母様はこれが普通なのよ」
「いちばんの変人がフォローすんな」
「やだ、ティリー褒めすぎよ」
「いつも通りのフレイヤですわおばさま」
「ごめんなさいね、ティリア……」
「ははは!もうっの言い方が妻そっくりだなぁ」
「おじさまごめんなさい、それどころじゃない」
相変わらず賑やかな昼食、けれど実は散々ツッコんでいるものの決して嫌じゃない。
むしろこの時間は和やかで好きなのだ。
昼食を食べ終えるとそわそわと辺りを警戒するような仕草をするフレイヤ。
理由は簡単で、午前中の決まった時間に現れなければ昼食を終えて少ししたくらいに現れる。
それも無理ならば夕食の少し前にかならず毎日現れるのだ。
近頃はもうこのルーティンが決まっていて、私自身もこの後決まったように突然現れるルディウス殿下と、「ティリーとの時間を邪魔した」とルディウスに怒るフレイヤが想像できるし慣れてしまっている。
(むしろそんな時間も好きなのよね)
私は用事がない限りは殆ど通っているし、割と頻繁にフレイヤも家に顔を出してくれるので一日の少しの時間を恋人に使ってあげても良いのではないかといつも身を引くが、
ルディウス殿下はよく出来た恋人というやつで、
「フレイヤが悲しむから、ゆっくりしてってくれ」とおじさまとおばさまがフレイヤの隣の部屋に用意したシンプルな書斎で簡単な執務や、勉強の為の道具を持ちこんで度々時間を潰している。
そんなルディウス殿下に「自分の邸のような言い方やめて下さい」って辛辣な言葉を吐きながらも、
ルディウス殿下の胸にグリグリと額を押しつけて、しっかりと腰に腕を回して、
「ありがとうございます」と小さな声で言う可愛いフレイヤを見るのが最近の楽しみになりつつある。
(家族と私以外に甘えるのは初めて見るのよね)
「やぁフレイヤ、ティリア嬢」
「なんで今日はクローゼットにいるの?」
「サプライズ?」
可愛く首を傾げて、クローゼットの中に膝を抱えるルディウス殿下。
ドレスルームとはちがってただ部屋着の羽織りや膝掛けや細々としたものが入っているだけではあるが、いくらフレイヤとて恋人を此処に入れはしないだろう。
「殿下……」
「ストーカーに変態が加わればもう敵なしね」
「逆に?」
「逆に」
「なんの逆?」
「「殿下、ちょっと近寄らないで下さい」」
「二人共、急に余所余所しいな」
「「……」」
「ごめんなさい、言い訳をするなら……」
「君の母上の提案でした」
「おばさまも変人だったの忘れてたわ」
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