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その令嬢、注意!

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「フレイヤ、本当に大丈夫なのか?」

「ええ、三日で帰って来られると思います」

「俺も私兵での出征の準備を整えておくよ」



(お嬢様は大丈夫だと思うけど……)


あの自称戦略という地図はあのままで、寧ろもう単純過ぎて誰もその紙を必要としていないし、もし相手方の手に渡っても然程困らないだろう。


フレイヤには秘密で「勉強」という建前で私兵を連れて、両軍が見渡せる高台で見守ることにした。


いざとなったら直ぐに加勢できるように少数だが精鋭を連れて来た。

その中にはいつもの護衛騎士達も居て、先程別れたフレイヤ達はもう配置に着いたのか、両軍とも姿こそまだ見えないが静けさの中に確実に感じる殺伐とした空気……のはずが、


新国の兵が現れた瞬間、いつも通りのゆるやかな様子でけれど大きな声ではっきりと聞こえる愛しい人の声。



「アメノーズ領へようこそ、けれど招いていないの」




「ハッ、公爵の娘か?舐められたモンだ。アメノーズを落とせばあとは王家のみ!!サァ行くぞお前達!!!」



男達の雄叫びが轟き、あまりの迫力にフレイヤが怯えているのでは無いだろうかと不安になって彼女を注視する。

 

「あら、長剣を忘れたわ」


(え!?)


「馬鹿な娘だ……!?」


「なので、貸して下さる??」



((((素手で一撃~~!?)))



「お前ッ!許さんぞ!!!」

「うん、まだマシな剣ね」



改めて距離を取ったフレイヤを警戒して相手の将軍を守るように囲む敵兵、



「目的は国ですか?」


「そんな事関係ないだろう!」


「良かった、殺すのは嫌で……尋問なら生捕りね」



そう言って上品に微笑んだフレイヤが剣をひと振りすると、




「あれ……思ったよりも普通だな」

「殿下、あの戦い方はきっと……」

「いや、投げるんかい」




フレイヤが奪った剣を槍のように投げたのをキッカケに、ベイリーが大きく声を上げる。




「ベイリー、作戦開始」


「フレイヤお嬢様に続けお前ら!!!!」





うぉおおおと勢い付く味方に反して、あまりにも予想外の展開にまず驚愕する敵兵と俺たち。



「「「ちょっともう規格外すぎて無理」」」


フレイヤは馬から華麗に飛んだのだ。


敵兵や、馬の背を足場に身軽に飛び回っては先陣切って敵兵をいつもの短剣で薙ぎ倒していく。


敵兵はもう完璧に引いているし、


味方は勢いづいてもう生捕りを忘れていそうな勢いだ。


果たして将軍の顔をちゃんとフレイヤが覚えているのかも怪しい。




「お嬢様!!その人じゃありません!!!」

「えっ!?どんな顔だったかしら!?」

「えーっと……」

「馬に乗って居ない人よね!」

「お嬢様が殆ど落としてしまいましたし、もう敵は僅かです」

「じゃあどの人がそうなの?」

「すみません私にもさっぱり……」



(うん、やっぱり分かってなかったわ、ってゆうかベイリー君もか)



「殿下、紛れて確保して来ましょうか?」

「そうだな頼む、それとなく誘導してやってくれ」


てゆうか、綺麗なんだけど何だろう……

俺の恋人は規格外すぎて化け物じみているなと思った。


けれど、あまりにリスキーな戦い方に不安になってアメノーズ領の宮へと追って向かうと「やっぱり居たのね」と嫌な顔をされた。


「心配なんだ」

「恋人に戦地を駆け回る姿を見せたい令嬢が居ますか?」

「すまない」

「普段からあんなに行儀が悪い訳じゃありませんから」

「んん?知ってるけどソコじゃないな」

「じゃあ何が問題ですか」

「君が本当の意味で戦地を駆け回っているとこかな!?」




「……長剣は苦手なんです」

「絶妙にズレた返事するね!」



「素手は忘れものの所為で不本意ですが」

「それも違う」



「あ、ルディ様に気付かなかった事ですか?」



(あれ……これ言葉通じてないかな?)



「うん、ごめん。もういいや」


首を傾げて「お騒がせですね」って眉を顰めるフレイヤに「どっちが」って返事をして少し拗ねる俺の頬に真っ赤な顔でキスをして、




「でも、心配で来てくれたのは嬉しい……です」


って言うからもう小言なんて忘れてしまいそうだった。


「なら、危険なことしないでくれ」


「危険なことが起きたらそうします!」


「君にとっての危険って寧ろなに?」


「お母様に見合いをさせられること」


「それは俺にとっても危険だったわ」



「なので、今は危険がありません」

「安心したよ」


「あ、あとは不法侵入者がよく出ることかしら」

「いやそれ俺な?」





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