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有能な筈なのに何故か……
しおりを挟む「ルディウス、どうやらフレイヤ嬢はとても有能なようだな」
「父上……はい。王太子妃教育の過程も普通では考えられないスピードで次々と修了しているそうです」
「ほう……公爵家の令嬢だと言う事を差し引いても驚くべきことだな」
国王は嬉しそうに目を細めて「あの小さかったフレイヤが」と顔を緩めている。
「こっそり見に行ってみようか?」
「国王がそんなにお茶目で大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫」
ニヤニヤと悪戯っ子のような表情で「変装して二十分後に此処で」と言い残して出て行った父親を見送って仕方ないかと自分も準備に取り掛かった。
次に会った父親はなんとも国王の影を隠したものの軟派なおじさんと言う感じだった。
(格好いいのが悔しいな)
「父上、かえって目立ちます」
「そうかな?さぁ行こうか」
優しく微笑んだ父は本当にただの格好いいおじさんだ。
おじさんと言うにもとても年齢より若く見えるし、幼い頃のフレイヤが自らの父より見目がよくお金がありそうだから「お父様」と呼んだ気持ちが分かるほどだ。
我が父ながらイケメンだなぁと横顔を見つめていると、「何だ?」と素気なく聞くその姿すら良く見えて何となく嫉妬心が湧く。
(俺だってフレイヤに好かれてるもん)
「お、居た」
「今日も綺麗だ」
「ルディウスそれは心の声か?」
「あっ」
ダンスの授業を受けるフレイヤはとても優雅で、いつものあのとぼけた様子も無い。
と、思ったのも束の間飛んできた一輪の花
「花ってこんなに鋭利に飛んでくるんだなフレイヤは凄いなぁ」
「父上、辛うじて受けた俺を褒めて下さい」
「ストーカーです先生」
「ふ、フレイヤ様!いけませんその方々はどう見ても……」
「え、イケメンなおじ様と怪しい詩人でしょう?」
「おい」
悪びれもなくそう言うフレイヤはもう二人の正体に気付いている。
と、いうより元より全く隠れていない。
「何をしているのですかお二人とも」
「えーっと、偶々……ね、父上?」
「変装して?」
「あはは!そうだよフレイヤを見にきたんだ」
「父上!」
「皆が気を使う上に授業が止まるので終わってから会おうと約束したでしょうルディ様?」
そう言ったフレイヤはまた一輪の花を持っている。
「いやそれどうやって鋭利にしてるの?」
「父上、それは俺も思った」
「気合いです、お父様」
「気合いだってルディウス」
「ちょろいな」
(何だろうこの人達、すごく有能な方達なのに……)
目の前の高貴な三人を見て黙り込む先生。
「今日は夕食を食べて行くといいフレイヤ」
「いいのですか?そんなに突然……」
「ああ、ルディウスも王妃も喜ぶ」
「楽しみです」
「フレイヤ、じゃあ終わった頃に迎えにくるよ」
「はい」
フレイヤは何故ドレスでその動きが可能なのかというほどアクロバティックにダンスをし始めて、先生もルディウスも国王も目を見開く。
「あ……ごめんなさいはしたないですね」
「いや、いい。だがそれはどうやってるんだ不思議だな」
「フレイヤは凄く運動神経がいいんです父上」
ダンスというよりは舞武のような動きに先生は思わず、先生は思わず尋ねる。
「あの、それはどういうダンスですか?とても素敵で……」
「すみません、これは適当なんです」
「「え」」
「へ……?」
「王宮の料理って凄く美味しいからお腹を空かせようと思って……」
「活発だな」
「父上はフレイヤに甘いな」
「お前もな」
「だって可愛い」
「……そうでしたか」
(何だろう!?何か本当に残念なんだけど!!)
「「何か失礼な事思われた気がする」」
「ひっ」
「あ、それ私かもしれません」
「え?」
「二人とも早く仕事すればいいのにって考えていました」
「急に正論」
笑い出した国王にホッとする先生と、「頑張って下さい」と微笑まれ仕事をやる気百パーセントになるルディウスという奇妙な光景にお忍びだと言われて隠れていた護衛達は悩んでいた。
「これ……隠れてる意味あるか?」
「俺、あの花を鋭利にする方法知りたい」
「「「同感」」」
「刺客!?」
「グハァ」
「フレイヤーーーそれ俺の護衛ーー!!」
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