王太子様、丁寧にお断りします!

abang

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えっ?ケットウ?

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「フレイヤ、その……そろそろ」

((きたー!プロポーズするのか殿下!?))


少し離れて控えながらいつものように聞き耳を立てる護衛騎士と侍女。


「あ、ごめんなさい。紅茶が良い頃合いね」


((フレイヤ様違うわー……))


「……そうだね、ここのマカロンも美味いんだよ」

「ほんとですね!とても美味しい!」

「フレイヤ、いつ全部食べた?」

「ルディ様が百面相してる間に?」

「早いな」

「そんなに褒めないで下さい」

「褒めては無いがな」



あからさまに落ち着きのないルディウスと、至って通常運転のフレイヤに心の中で突っ込みを入れる使用人一同は今日も今日とてルディウスがフレイヤに「結婚しよう」と言えないだろうと踏んでいた。


何故ならばここ三日間この攻防は繰り広げられている。


悪意のないフレイヤの反応に怒りこそしないものの、彼女の鈍感さと斜め上をいく発想に彼はずっと振り回され放しなのだ。



「じゃ、無くて!フレイヤ……っ!」

「あ、ルディ様の分もありますよ」

「へっ」

「マカロンですよ」

「あ、あぁ」

「はいどーぞ、ピリ辛テイストですよ」

「そんなん無かったよね?」

「……」

「え、何これ」

「市井でドッキリというのが流行っているらしいですよ」

「ピリ辛言ってしまってたら意味ないからね?」

「じゃあ嫌がらせでいいです」

「うん、今日も笑顔が可愛い」


「「殿下……」」



はっとしたルディウスは今度こそとフレイヤの手を握る。


「気でも触れましたか?」

「婚約者じゃ無かったっけ俺?」

「そうでした、で?どうしたの?」

首を傾げて悪びれる様子もなく少し笑ったフレイヤに、些細なことなどどうでも良くなるのはいつもの事で、辛辣な言葉とは裏腹に柔らかく微笑まれた表情と、軽く握り返された手の温かさに心臓の音が煩い。


「俺と、結婚して欲しい」

「……!」

「本気だよ、そろそろちゃんと決めたい」


心なしか瞳を潤ませたフレイヤの表情に、使用人達は皆驚く。


(フレイヤ様でもプロポーズには嬉し泣きをするのか……!)


ルディウスも意外な反応に心なしか驚いているようにも見える。


言葉を返さないフレイヤにルディウスが「ダメだろうか?」と小首をかしげるとそのあざと可愛さに女性の使用人は卒倒した。


が、フレイヤはそう簡単ではなかった。



「ケットウ……?何故、婚約者と決闘をするの?」

「え"」

((うそーー!!どんな聞き間違いしてんのこの人ーー!?))



「私何かしたかしら……」

「あ、いや……フレイヤ、違う……っ」

「ルディ様が、そのつもりなら分かりました……」

「フレイヤ?あの、誤解を」

(まず決闘なんかしたら殺されない?俺)

フレイヤの節々に見える強さを思い出してヒヤリとする。

まず決闘など誰が好きな女性に申し込むのか、

目の前でしゅんと目線を下げるフレイヤの珍しい姿に可愛くて悶える……


(いや違った、誤解をとかないと)



「いいでしょう……しましょう」

「フレイヤ、違うんだ決闘はしない」

「喜んでお受けいたします、結婚」

「えっ!?」

「結婚、します」

「決闘って言って……はっ!」


フレイヤの表情は満足そうで、きっとこれこそが巷で噂のドッキリと言うやつなのだろう。



「ちゃんと聞こえていましたよ」

「じゃあ……」

「選んでくれてありがとう、ルディ様」



((えっ!!めっちゃ良い感じ~!仕えてて良かったぁ!))



「フレイヤ!!ありがとう!幸せにする!!」

「これだけしつこいと受けざるを得ませんので」

「しつこい……?」

「気付いたのはさっきですが……ここ最近様子がおかしかったのはこの所為かなと」



((そうです!!!!))


「ご名答」

「やだ、ルディ様だらしない……顔が」

「君はずっとブレないな」

「なに」

「いや?愛してるよ」

「!」


すぐに顔を背けたフレイヤだったが、耳が赤い所為でルディウスには照れている事がバレバレな上に控えている使用人達からはその赤くなった顔と眉尻を下げて唇をきゅっと結ぶ照れた顔は丸見えだった。


ルディウスの幸せそうに緩む表情も相まって、邸は幸せな雰囲気に包まれ使用人達の仕えてて良かった瞬間ベストスリーに入ったらしい……














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