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リックス様のことが心配

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招待状が届いた次の日からリックス様は突然屋敷の周りを走り、お食事の量も減らし、領民の方からの頂き物を全て断られる様になりました。


一体、どういう心境の変化なのでしょうか?
走ったせいで筋肉痛になられた様ですが、本当に大丈夫なのでしょうか?
お仕事の合間にされている読書も止めて運動されるなんて、何か相当な理由があったのでしょうか。


「どうぞ、お水です」
「ハァ、ハァ、ハァ、ああ、ハァ、ハァ、あ、ハァ、ありがとう…」
「あの、無理をされていませんか?とてもお辛そうですが?」
「い、いや…ハァ、これくらい、だいじょ、ぶ、だ」


とてもその様には見えませんが…。
今も息が整わず、お話されるのもやっとのご様子。


身体のために少しお痩せになった方が良いとは思いましたが、どうして突然運動を始められたのでしょうか。
それも、かなり身体を酷使する方法で。


「あまり無理されても身体を壊してしまいますよ。もう3日も続けられていますし、本日はお休みをされてはどうでしょう?」
「時間がっ、ない、から…。大丈夫、休んだから、いってくる」
「あ…」


飲んでいた水を私に渡して行ってしまいました。


お義父様とお義母様にリックス様の事が心配だと相談しても、リックス様の為に見守ってほしいと言われてしまいますし、どうすればいいのでしょうか。


リックス様本人が始められた事なので、私からおやめ下さいとは言えませんし、このまま見守るしかないのでしょうか。
ですが、とてもお辛そうな姿を見ているのは胸が痛みます。
なにか私に出来ることがあればいいのですが…。


そう悩んでいた日の夕食後、珍しくリックス様から声をかけられる。


「マルクス嬢、その…少し良いか?」
「はい、なんでしょうか?」
「少し聞きたいことがあるんだ。良かったら、庭で話を聞いてほしい」
「わかりましたわ」


リックス様に連れられて庭へと出れば、少し肌寒い空気が頬を撫でていく。


「少し冷えてきたな。良かったらこれを」


そう言って、いつかの日のように上着を貸してくださろうとする。
あの時よりは頻繁に話すようになり、私がリックス様を嫌っていないと理解していただけましたが、また上着を断って落ち込まれたらどうしましょう。


「いえ、それではリックス様が寒くなります」
「だが…」


私がそういえば、断ると思ったのかリックス様が少し悲しそうな顔をされる。


「ですので、こうすれば2人とも温くなりますよね」
「なっ!」


落ち込まれる前に、リックス様の上着端を掴んで私の肩にかける。
リックス様の上着の中へ入ったことによって、肩と肩がくっつく程近くなる。


とても暖かいですが…思ったよりも恥ずかしいですわ!
ですがしてしまった以上、今更離れればリックス様にまた嫌っていると誤解されるかもしれませんし、簡単には止めれませんわ…。どうしましょう…。


「これは…温かいのか?」
「はい…。お嫌、ですか…?」
「……………………いや」


長い間の後に否定されましたが、本当に嫌では無いですよね?大丈夫ですよね?


「……貴女がこれで暖かくなるなら、これでいい」


本当に大丈夫なのでしょうか?
顔を背けられてしまって顔色が伺えないので不安です。


「おほん、それより、貴女に聞きたいことだがーー」


気まずそうに咳払いを1つしてから、リックス様は私に相談される。
内容は、肌荒れを治すにはどうすれば良いかと言うことでした。


リックス様は沢山の本を読まれるので、薬学にも精通しているそうなのですが、どうしても肌荒れが抑えられずに困っているとのこと。
今まではパーティーなどに参加せずにいたので気にしてはいなかったそうなのですが、ルーファス様のパーティーに出るために肌荒れを治したのだとか。


私はお医者様や薬屋ではありませんので正確なことは言えませんが、私がしている肌のケアを出来るだけお伝えし、メイドに教えてもらったマッサージ方法もお伝えしました。


「こうか?」
「そうではなく、もう少し指をめり込ませる様に…こうです」
「痛い!」


間違いを口では伝えられなくて、失礼とは思いつつもぷにぷにで分かりづらい頬骨の下あたりに指を入れてマッサージをすれば、リックス様が痛みで飛びあがってしまいました。


「申し訳ありません。ですが、痛いのは老廃物が溜まっている証拠ですので、痛みに耐えつつ毎日マッサージを行えば肌の調子も良くなるはずです」
「そう、なのか…」
「一通り私がマッサージをしてみましょうか?」
「…………………………よろしく頼む」


さっきのが相当痛かったのですね。
葛藤しながらも最後はマッサージを受け入れるリックス様の姿にクスッと笑ってしまう。
いつもは冷静な方なのに、こういう時は少し幼く見えるので、なんだかお可愛らしいです。



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