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第三章:ポッシェ村
48.対話③
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どうでもよさげな私の態度に壮年の男――バリーは納得できなかったのだろう。血も涙もない女だと罵って来た。
自分のせいで生まれ育った母国が滅茶苦茶になっているのに、手を貸そうともしない。災厄の原因なのに、責任もとろうとしない。そんな最低な、人間とは思えないやつだと主張していた。
自分の出身国の今の状況を知っても、自業自得だとしか思えないのだから、災厄の原因という部分を除いて、それら言葉は事実だ。だから抵抗することなく、その罵りを受けていた……のだが。
「一つ言っておくと、ブレメンスに起きている君達曰く『災厄』の原因はソフィアじゃないよ。君たちの自業自得だ」
「は?」
いつまで罵られていれば良いのだろうと遠い目をし始めた時に、今まで黙っていたサミュエルが立ち上がり、私の事を庇うような主張をした。
嘘を吐いた時に鳴る筈の警報音がならないからだろう、バリーもローラも辺りをキョロキョロと見回している。その姿は少し間抜けだ。
「フィオレントの人間でも調べがつく程に大したことのない情報だよ。君達ブレメンスの人間は目が曇りすぎている。それは国が考えさせないようにと低水準の教育を与えているせいでもあるけど、君達が現実を見ようとしなかったせいもある。何も知ろうとしないで全てをソフィアのせいにして、罵るのは違うんじゃないか?」
静寂。警報音も鳴らないし、バリーもローラも唇を噛んで黙っている。
それは即ち、サミュエルが嘘を吐いていないということを表している。そしてバリーもローラもどちらも反論できないようなのは、正直何故かは分からなかったが、彼らからの罵詈雑言は完全になくなった。
「ソフィアはずっと一人で戦っていたんだ。なのにそれを知ろうともせずに、感謝の言葉どころか罵詈雑言。恥ずかしくないのか?」
「っでも、国王は災害が起き続けているのは聖女が産まれたせいだって、殺せばこの状況は変わるって――」
「それ、根拠は?」
「…………」
「ないんだね。他者を信じるのは悪いことじゃない。けど、自分で何も考えずに信じるのは良くない。君達はブレメンスから離れて、もっと世界を見るべきだ」
そこまで言うと、サミュエルは用は済んだとばかりに私の手を引いて、部屋から出る。
彼の言動に驚き、私は部屋を出るまでは何も言えなかった。だって、あんな風に全面的に私のせいじゃないと、聖女は悪くないと庇ってくれる人がいるだなんて思っていなかったから。
「……ありがとう」
「君については散々調べてきたからね。それに、好きな人が罵られていて、なにもせずに見ているだなんてことは出来ない。当然の事だよ。」
頬がカッと熱くなるのが分かる。
最近はサミュエルに調子を狂わされてばかりだ。見透かされているようで少しの不快感を感じるが、それよりも大きな安心感に何故か包まれていて……なんだか複雑な気分だった。
自分のせいで生まれ育った母国が滅茶苦茶になっているのに、手を貸そうともしない。災厄の原因なのに、責任もとろうとしない。そんな最低な、人間とは思えないやつだと主張していた。
自分の出身国の今の状況を知っても、自業自得だとしか思えないのだから、災厄の原因という部分を除いて、それら言葉は事実だ。だから抵抗することなく、その罵りを受けていた……のだが。
「一つ言っておくと、ブレメンスに起きている君達曰く『災厄』の原因はソフィアじゃないよ。君たちの自業自得だ」
「は?」
いつまで罵られていれば良いのだろうと遠い目をし始めた時に、今まで黙っていたサミュエルが立ち上がり、私の事を庇うような主張をした。
嘘を吐いた時に鳴る筈の警報音がならないからだろう、バリーもローラも辺りをキョロキョロと見回している。その姿は少し間抜けだ。
「フィオレントの人間でも調べがつく程に大したことのない情報だよ。君達ブレメンスの人間は目が曇りすぎている。それは国が考えさせないようにと低水準の教育を与えているせいでもあるけど、君達が現実を見ようとしなかったせいもある。何も知ろうとしないで全てをソフィアのせいにして、罵るのは違うんじゃないか?」
静寂。警報音も鳴らないし、バリーもローラも唇を噛んで黙っている。
それは即ち、サミュエルが嘘を吐いていないということを表している。そしてバリーもローラもどちらも反論できないようなのは、正直何故かは分からなかったが、彼らからの罵詈雑言は完全になくなった。
「ソフィアはずっと一人で戦っていたんだ。なのにそれを知ろうともせずに、感謝の言葉どころか罵詈雑言。恥ずかしくないのか?」
「っでも、国王は災害が起き続けているのは聖女が産まれたせいだって、殺せばこの状況は変わるって――」
「それ、根拠は?」
「…………」
「ないんだね。他者を信じるのは悪いことじゃない。けど、自分で何も考えずに信じるのは良くない。君達はブレメンスから離れて、もっと世界を見るべきだ」
そこまで言うと、サミュエルは用は済んだとばかりに私の手を引いて、部屋から出る。
彼の言動に驚き、私は部屋を出るまでは何も言えなかった。だって、あんな風に全面的に私のせいじゃないと、聖女は悪くないと庇ってくれる人がいるだなんて思っていなかったから。
「……ありがとう」
「君については散々調べてきたからね。それに、好きな人が罵られていて、なにもせずに見ているだなんてことは出来ない。当然の事だよ。」
頬がカッと熱くなるのが分かる。
最近はサミュエルに調子を狂わされてばかりだ。見透かされているようで少しの不快感を感じるが、それよりも大きな安心感に何故か包まれていて……なんだか複雑な気分だった。
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