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オリヴィエは男の内の一人を縛り上げ、もう一人にナイフを向けながらじっくりと話を聞く。マスクの様なものを着用しているので、顔は分からないが、ナイフでの脅しはそれなりに効いたようだった。
これは誰が依頼したことなのか、どのような依頼なのか……全てを聞いた。男は依頼者に関することは守秘義務があるなどと言って濁そうとしたが、先程聞いたこととナイフをちらつかせれば、素直に吐き出した。
男の話からすると、オリヴィエはキアナに裏切られたという解釈で間違いないようだ。
それに加えて、国では既にオリヴィエは偽物の姫巫女として王族ひいては国民達を騙したということで、指名手配もされているらしい。

信じられないが……信じたくないが今のこの状況と彼らの発言を見聞きしてしまうと、信じないわけにはいかない。
更なる絶望に打ちひしがれていると、男の一人が聞いてきた。

「そういえば、アンタは結局本当の姫巫女だったのかい?……俺はアンタに負けて、殺されるんだろう?命を狙ったんだから当然だ。だからせめて餞にそれくらいは聞かせてくれないか」

彼はオリヴィエに殺されると思っているようで、酷く後ろ向きな考えだ。しかし否定するのも面倒だと思ったオリヴィエは殺す殺さないに関しては何も答えることなく、質問にだけ答えた。

「ええ。一週間程前に急に未来が視えなくなったけど、その時まで確かに私はそう呼ばれる存在だったわ」

もうオリヴィエにとって、何もかもがどうでもよかった。だからこの先程まで自分を殺そうとしていた男に何もかもを洗いざらい吐いてしまう。

「もう、全てがどうでもいい……そんなに聞きたいのなら教えてあげるわ」

姫巫女としての力を失い、好きだった人の隣に立つ希望を失い、信頼していた姉のような存在に裏切られ――。オリヴィエの心はボロボロだった。
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