婚約者曰く、私は『誰にも必要とされない人間』らしいので、公爵令嬢をやめて好きに生きさせてもらいます

皇 翼

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22.救われた命②

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ルークハルトは語る。
曰く、自分達のギルドはジブリール=ラーガレットから直々に、アリアネット=カルカーン……即ち、私の救出依頼を受けた。しかし、実はその裏ではとある別の人物からの別の依頼を受けていたのだという。そのジブリールからの依頼である私の救出……即ち連れ戻しを阻止してほしいという依頼だった。
けれど途中でジブリールからの命令が変更となったため、あのような強行突破に出たのだという。ちなみに私の身体に傷一つ付いていなかったのは、ルークハルトの魔法による能力らしい。

そこで気になるのが、私の連れ戻しを阻止しようとした人間だ。これは誰なのか。
私には頼れる知り合いや心配してくれる人など、ギルドの周辺以外にはいない。他の知り合いはと言えば、あの忌々しい国の人間。しかし私には親しい貴族の友人などいない。
唯一接点があるといえるのは両親。だが、あの両親がそんなことをしたとは考えられないのだ。そう考えると心当たりは全くなかった。

「最初に。助けて頂いたようで、有難うございます。でも一つだけ分からないことがあるんです。質問させて頂いてもよろしいですか?」
「その謙虚な態度は悪くない。いいだろう。質問に答えよう」
「ジブリール=ラーガレットの依頼を阻止して欲しいと依頼したのは誰ですか?」
「お前は誰だと思う?」
「分かりません」
「当てずっぽうでも良いから言ってみろ」
「……このギルドの関係者、それも立場のある人間だろうなってことは何となく予想が付いています。だからこそ誰なのかが分からない」

そう。基本的に、依頼者からのギルドに対する直接の依頼というのは外部に漏れる事などあり得ない。この男ほどの実力者が所属するギルドであれば、尚更だろう。
だからこそ私は、その依頼を出した人間が彼のギルド内にいると睨んだ。
それもそれなりに上層にいる立場の人間。そして重要な依頼を閲覧することが出来るかつ王族の依頼というものを覆せるほどの立場をギルド内で築いている人間。私は一瞬でその答えまでたどり着いていた。

「阿呆そうな面をしてるから、立ち位置すら分からないかと想定していたが……流石は兄妹だな。頭は悪くない」
「きょう、だい?」

そういえば先程、傷を確かめている時に自慰行為だのなんだのと失礼なことを言われた時も、兄が悲しむ~などと言っていた事まで思い至り、嫌な予感に身体をピシリと固まらせてしまった。

「まあ、態度としても及第点だし、なによりあんなものと血が繋がっているだなんて可哀想だからな。教えてやる。アリア、お前が知りたがっていた依頼者はお前の兄二人だ」
「はあ!?」

意味が分からないと悲鳴にも近い疑問符を叫ぶと同時に、再び部屋の扉が開く音が聞こえた。
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