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1章-1

第7話

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 ほしにくの実に囲まれたまま俺は一心不乱に食欲を満たした。

「ふぅぃ~。食った食ったぁー」

 おかげでよくやく冷静さが戻ってくる。

 魔法袋も閉じたことだしこれ以上ほしにくの実の山を築かなくて済む。
 もし仮にここに誰か来たらこの光景を見てきっとぶったまげるだろうけど。

「さてと。そろそろ行きますかね」

 ちなみにすばやさが∞になったからといって瞬間移動できるわけじゃない。
 ステータスはあくまで戦闘面に関しての数値だ。

 だからふだんの生活ではほとんど意味のないものなんだけど戦いとなれば話はべつなわけで。
 早い話、これでモンスターに怯える必要が一切なくなったわけだ。

(なんてったってHPは∞なんだし。ふっふっふ)

 結界の外を自由に歩き回れるってことは村へ戻れるってわけで。

「そうだよ。今の俺は∞のルビーを所持してるんだ。こいつを手土産にすればみんな喜んで俺を迎え入れてくれるに違いない!」

 そもそもなんで追放されたのか未だよく分かってないし。
 きちんとそのへんの理由も確認しておきたい。

(そりゃ魔王討伐のために過酷な旅を続けてる勇者さまたちに対して失礼な発言だったのかもしれないけど)

 それでもあんな発言ひとつで村から追い出されるのは納得いかなかった。

「きっとみんななにか誤解してるんだ。きちんと話せば分かってもらえるはず」

 うん、やっぱり行ってみよう。


 腰を上げて立ち上がると俺は隠しダンジョンに向けて声をかける。

「実際に1回も入ったことなかったけど、なんていうかめちゃくちゃ世話になった。ありがとな。修練場の名は伊達じゃなかったぜ」

 手を振りながら俺はその場をあとにした。



 ◇◇◇



 結界の外に出た瞬間。


 ぴょん! ぴょん!


 待ち構えていたようにスライムの集団がにじり寄ってくる。

「まさかお前らここでずっと待ってたのかよ?」

 スライムたちはどこか勝ち誇ったように「スラ! スラ!」と跳ね続けた。

 見上げた執念だぜ。

 だが残念だったな。
 一週間前の俺とはもうなにもかも違う。


(悪いが簡単に蹴散らせてもらうぞ)

 全パラメーターが∞となった以上、戦闘面においては怖いものはなにもない。
 こいつらなんて素手で十分だ。

 俺はスライム集団の前で仁王立ちすると、飛びかかってきたスライムに目にも留まらぬ速さで拳を振り抜いた。

 が。

 スカッ!

 俺の拳は空を斬る。

「あれ?」

 もう一度同じように拳を振り抜くも見事に攻撃は当たらない。
 そこでようやくデメリットスキル【命中率0%】の存在を思い出した。

(うわぁ……恥ずかしい。浮かれて完全にこいつの存在忘れてたわ……)

 てことはアレだよね?
 モンスターが倒せないのは変わらないってことじゃね?

「レベル∞になった意味ないじゃん」

 スライムの集団にぺちぺちとタコ殴りにされながら俺は大きく頭を抱えた。

 前言撤回。
 こんなのは最強とはいえない。

 最弱に毛が生えたようなもんじゃないか……ハァ。

「スラ! スラ!」

「あぁ~! うっとうしい!」

 俺はスライム集団にたかられながらすぐに光のウィンドウを起動させる。

 たしか自分よりも弱いモンスターを寄せつけなくする〈補助魔法〉があったはず。
 ぶっちゃけ秒でこの場から逃げることもできるんだけど、今後のためにも習得しておいて損はないだろう。

 〈補助魔法〉の一覧を表示してそのままスクロールを続けると目的の魔法を発見した。

===========================

鉄獣戦線トライブリゲード
消費MP 20 
必要SP 300
[効果]
自分よりも弱いモンスターを一時的に寄せつけない。

===========================

(これだ)

 《鉄獣戦線トライブリゲード》の項目をタップすると習得の実行画面が表示された。

===========================

現在、あなたが所有しているスキルポイントは【 ∞ 】です。
【 300 】を消費して《鉄獣戦線トライブリゲード》を習得しますか?(Y/N)

===========================

 〝YES〟を選ぶと「魔法を習得しました」というアナウンスが。
 
 魔法なんて一生縁のないものだって思ってた。
 なんていうか感慨深いぜ。

 さっそく使ってみよう。


「狭間の淵を支えし偉大なる檻よ、我を守護する楔を打ち込め――《鉄獣戦線トライブリゲード》」


 ドゥゴゴゴゴゴゴーーッ!


 その刹那。
 鋼鉄の檻が俺の体を取り囲むようにして出現する。
 
 スライムたちが懸命に体当たりを仕掛けるが檻はびくともしない。

 こいつ便利そうだ。

(このままモンスターは無視して進もう)

 そんな風にして俺は森の中を歩きはじめた。
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