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アラクネと出会う縁
しおりを挟む目を開けると俺は暗い場所にいた。
「……ここは……どこだ?」
湿っていて生臭い匂いがする。洞窟の中だろうか?
ぼんやりとする意識で必死に記憶を掘り起こそうと試みる。
俺はベン。クレメンス嶺に住んでいる農民。……そうだ。今年は税の取り立てが厳しくて食い物がなくて。食べ物を探しに森に入っていったんだ。それで―――。
「……!」
俺は押し黙る。足音がしたからだ。
「フフフ……」
薄暗い空間の先に動く者がいてソイツは笑っているようだ。
艶やかな声だ。若い女の声。
「あ、あんたは一体……」
何者か聞こうと試みたが異常に気づき心が凍る。
「あら? どうかしたの?」
艶やかな白銀の髪。滑らかな白い肌、服を着ておらず乳房があらわになっている。目の前に現れたのはニヤニヤと笑う素晴らしく整った美しい女。
だが、その女の下半身は巨大な蜘蛛のものだ。
「アラクネ……!!!」
「そうよ。私はアラクネ。残念ねぇ、アンタはもう助からないわ」
アラクネ。それは半人半魔。上半身は人間で下半身は巨大な蜘蛛の魔物。繰り出す糸は強靭で熊や鹿などを捕って食べるのだとか。危険な魔物であると人間社会では知れ渡っている。
「くっ!……体がっ!」
逃げ出そうとしたがここでようやく己の状態を認識できた。
「い、糸が絡まって……!?」
俺の体は蜘蛛の糸で絡めとられている。
「フフフっ! 今さら気づいたのっ? だからぁ! アンタは逃げられないのっ! 私の美味しいご飯なのよっ」
アラクネはそういうと俺の頬を舐めた。熱く赤い舌だった。牙が見えた。人間のモノではない。肉食獣のそれだ。
「ああ、美味しいわねっ。もう食べちゃおうかしらっ?」
「や、やめてくれっ! 食べるのはやめてくれっ!」
恐怖に呑まれながら懇願する。するとアラクネは笑いながら俺の喉に牙を立ててきた。プツリと肉に歯が刺さった。
「あ、……あああぁぁ……はぁああぁ……!」
死の恐怖が迫る。
"ジョロロロロロォ…………"
「あらヤダ。 そんなに恐いのぉ? フフフ♪」
俺が失禁した様子を見るとアラクネは悦に入っているようだった。結局この時は食べられずに済んだ。
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俺はアラクネの住む洞窟の中で捕らえられている。体は奴の出した強靭な糸で絡めとられ絶対絶命。すぐに食べられないのは奴が俺の様子を楽しんでいるからなのだろう。
死に恐れ怯える様が楽しくてしょうがないのだろう。
しかしそれも終わりが来るはずだ。俺はこの洞窟からは出られない。ここで死ぬ運命なのだ。
アラクネは動物の毛皮の上に体をおろして楽にしている。自らの糸を使ってあや取りをしている。実に愉しそうだ。
アラクネに放置されている俺は一生を振り返る。親は疫病で死んだ。あの時は相当苦労した。隣のロキシー姉さんには世話になった。
「ロキシー姉さん……」
早くロキシー姉さんに告白してればよかった。告白してOKを貰って付き合っていい仲になってセックスして子供が出来て夫婦になって……。ロキシー姉さんとパンパンしたかった。
「お、俺の人生がぁ……!」
俺は泣いた。馬鹿だった。人生なんていつ終わりが来るかわからない。告白すべきときは直ぐにするべきだった……!
死んだら何もできないのだからっ!
俺は童貞のまま死ぬのかっ……! それは余りにも無念だ。
「さてと、もうアンタの反応は味わい尽くしたわねっ。それじゃあ、食べちゃおうかしら」
大人しくなった俺を見てアラクネは蜘蛛の足を動かし立ち上がる。余興は終わりと言うことだろう。
アラクネが近付いてくる。殺気が伝わってきた。今度は本当に食うつもりなのだろう。
俺はおかしくなってしまったかもしれない。余りにも無念だったから。
「ア、アラクネ……! 最後に一つだけお願いがあるんだっ!」
「……命乞いなら聞かないわよっ?」
何事かと眉根をあげるアラクネ。
「ああ、俺はお前に食われて死ぬんだろうっ!だからっ!」
「……」
「最後にヤラせてくれないかっ!?」
「………………はぁ?」
$$$
「やるって……子作りのこと?」
「そうだ!」
「アンタと私が?」
「そうだ!!」
「……アラクネと人間ってできるの?」
「わからないっ!」
戸惑うアラクネ。だがこちらも必死だ。どうせ死ぬならセックスしてから死にたい。
「でもしょうがないんだよっ! お前は俺を逃がすつもりはないだろうっ!?」
「うん。食べようと思うけど」
「俺は女とやったことがないっ! お前はここから俺を出さないっ! 俺がセックスする相手はお前しかいないんだっ! どうせ死ぬんだっ! 最後にそれだけでいいからお願いしますっ!!!」
「え、えぇ~……。そ、それは……」
「お願いしますっ!!!」
「……えっと。う、うん……。まぁ、最後だしね」
「あ、ありがとうございますっ! ありがとうございますっ!」
「ちょっと、声が大きいんだけど……」
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俺はアラクネの糸でぐるぐる巻き。仰向けに倒れている。
「逃げられても何だから糸は外さないわっ。どうしたいのか言ってごらんなさいっ」
「……それでは、胸を舐めさせてもらえないでしょうかっ?」
「胸ね。いいわよっ」
アラクネは俺におおい被さるようにしてきた。乳房が目の前に来る。白い肌だ。アラクネは魔物だ。しかしながら上半身は美しい人間の女。
白く魅惑的な乳房が目の前に来てそれをペロペロと舐める。
アラクネの体臭は獣のようだった。しかし気にならない。死が迫りそんな事は頭から消える。一生懸命にアラクネの乳房を舐める。
「……んっ」
アラクネが反応を見せる。思わず興奮した。みると桜色の乳首が立っている。少し感動した。
「ちゅぱ、ちゅぱっ」
俺はアラクネの立った乳首をしゃぶる。乳飲み子のように。
「……っ♡」
アラクネは体を反応させている。気持ちがいいのだろう。せつな気な表情がそそる。
「アラクネ、綺麗だ」
自然と言葉が出た。
「……。つ、次はどうすればいいのっ?」
アラクネは俺の表情を伺いながら聞いてきた。
「俺の下半身を出してくれっ」
「……わかったわ」
アラクネは蜘蛛の足と上半身の手を使って俺の下半身に巻き付いた糸を外していく。
「……!」
アラクネは少し驚いたようだ。
俺の股間は勃起してズボンの前がテントのように張っていた。
「アンタ、変な人間ね。魔物の胸を舐めてほんとに硬くなってる」
「次はズボンからナニを出してしゃぶってくれないか?」
「え? アンタさっき漏らしてたわよねっ? 汚ないじゃない」
「人生の最後なんだっ! 頼むっ!!!」
躊躇するアラクネに必死に頼む。
「わ、わかったわよっ」
俺の頼みを聞いてアラクネは下半身に顔を埋めていく。……意外と押しに弱いのかもしれない。
"ペロペロっ、レロレロっ。 ちゅぷちゅぷぷっ"
「あ。き、気持ちいいっ……!」
アラクネが俺のちんぽと玉を舐めている。熱くてざらざらして最高に気持ちがいい。
「すごい気持ちがいいっ! アラクネっ! すごく気持ちがいいよっ!」
「ほ、ほんとっ?」
「と、取り敢えず出すぞっ!」
「えっ?」
俺は溜まらず発射した。
"どぴゅうううっ!!! どぴゅぴゅぅ! びゅくん、びゅくんっ!"
「んっ!」
白濁の液がアラクネの顔にかかったようだ。すごい匂いがする。栗の花の匂いだ。洞窟の中に栗の花の匂いが充満していく。
「す、すまんっ! 悪気はないんだっ!」
「……んっ。わかってるわっ」
アラクネは顔にかかった精液を長い舌で舐めている。
「それじゃあ、最後は穴に入れるのよね?」
「あ、ああ……」
アラクネは仰向けの俺の顔に向き直り確認してきた。俺のちんぽは勃起したままだ。不思議とアラクネの目に光が入ったように見える。
アラクネが俺にまたがってくる。アラクネの下半身の蜘蛛の部分に茂みがある。そこが薄暗いながらもヌメっているように見えた。あそこがアラクネのまんこなのだろう。
生存本能が刺激されたのか、アラクネの上半身が美しかったのか。陰部の刺激が心地良かったのか。あるいはそれら全てか。
俺は射精したにも関わらず最高に勃起してギンギンだった。
"ずぶっ"
「……んんっ」
騎乗位の体位でアラクネは俺のちんぽをまんこに受け入れていく。
"ずりゅずりゅりゅ……っ"
「くっ!」
俺とアラクネは繋がった。俺のちんぽはアラクネのまんこの中に入った。
「これ、すげえっ……」
童貞の卒業。これがセックスか。
凄まじい気持ちよさだ。オナニーの何倍も気持ちいい。擦って気持ちいいとかではない。セックスをすると生物の機能というか、ご褒美のようなもので脳にヤバイ物質が出ているのではないだろうか?
心が蕩けるような気持ちよさだ。
「……あっ♡」
「……!」
甘い声に俺は驚く。アラクネもか……!? 俺が気持ちいいようにアラクネも同じように気持ちいいのだろうか?
まあ、いい。これが俺の最初で最後のセックスだ。擦りきれるまでちんぽを使ってやる。
俺は糸に縛られたままだが体を全体を使いちんぽを下からアラクネのマンコに押し入れていく。
「んっ……♡……は、はげしっ……♡♡♡」
激しいのは当然だ。俺の全身全霊のストロークだからなっ!
"パンパンパァン! パンパンパァン!!!"
「……だ、だめっ! なんかおかしくなっちゃうっ!」
俺もおかしくなりそうだ。なんなの? アラクネのまんこものすごい気持ちがいいっ! メチャクチャ熱くてザラザラしてて気持ちいいっ!!!
ひょっとして人間の女より気持ちいいのっ!?
「アラクネっ! お前は最高の女だっ!!! 俺にとっての女神だよっ!!!」
精神状態もおかしくなってたんだろうね。死と生の狭間で、余りにも美しい上半身を持つ魔物が女神に見えたんだから。
「……っっっ♡♡」
「出すぞっ!!! 俺の全てをお前の膣に出すぞっ!!!」
「う、うんっ……!」
精液がせりあがって来る。射精の瞬間だ。アラクネの顔を見る。なんて美しいんだろう。どぴゅどぴゅとアラクネの膣に注いでいる感覚がわかる。
「………ふぅ~~~っ」
とんでもなく気持ちがいい。天にも昇るとはこの事か。……いい……一生だった。
俺の意識が遠退いていく。
$$$
「あれ?」
気がつくと洞窟の中だった。少し明るいような気がする。朝になったのか。
「俺は食われなかったのか……?」
セックスして力尽きて、食われなかったらしい。
「あ、起きた?」
声が聞こえて見るとアラクネがいた。手にはウサギを持っている。
「これご飯っ」
アラクネはウサギの耳を持って俺の前に出してくる。食えというのだろうか?
「え?……あれ? お前、俺を食うんじゃなかったっけ?」
「そ、それはっ」
俺の問いにアラクネは何と答えるか考えているようだった。
「そ、そうよっ。非常食ねっ」
「非常食?」
「冬が来たら食料に困るでしょ? アンタを飼っておけばいざというときに食べれるわけっ!」
「マ、マジかよ……」
なんと恐ろしい事を考えるんだこのアラクネは。死の恐怖に毎日耐えろというのか。そりゃすぐに死にたくはないけどさ。
「というわけで、このウサギを食べて力をつけなさい。あ、あとさ。アンタがどうしてもっていうなら、また子作りしてあげてもいいけどっ?」
俺の人生は何処へ行くんだろう。目の前にはアラクネと狩られたウサギ。悲しいかな俺は子作りの夜を思い出して勃起していた。
俺は普通の人生をもう歩めないのだろうか。
――――ぐるぐる巻かれたアラクネの糸、これが運命の赤い糸だったのかと今になって思う。
応援ありがとうございます!
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