守るべきモノ

神崎

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一室

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 シャワーから上がると、真矢は眼鏡をかけて漫画雑誌を読んでいるようだった。それは倫子が原作で政近が絵を描いたもので、評価はとても良いようだ。インターネットでネタバレをした割には部数が相当上がったらしい。
「それ、どう思った?」
 ソファーに腰掛けていた真矢は、雑誌を置いてため息をつく。
「中学の同級生や職員が集まって同窓会をするところから話が始まってるわね。中学の時にこんなごたごたがあれば、のんきに集まって過去の話なんかするかしら。特に犯人の男は殺す気で参加していたと思えるけれど、そんな恨みを持っていると知っているならこの男には同窓会があることなんか伝えないわね。」
「それは物語だから。」
「そうね。ミステリーはそんなところを突っ込んだら、話が始まらないわ。」
 本をテーブルに置いた真矢の隣に伊織が座る。畳が好きだという伊織がこのソファーに座るのは初めてかもしれない。何人も男がここに座った。そしていずれも真矢の胸しか見ていなかった。男にないものだから見たいだけだ。しかもそれが大きいのだから尚更見たいし触れたいと思うのだろう。
 伊織もそうなのだろう。ちらっと伊織を見上げた。すると伊織は緊張しているように、そのテーブルに置かれた雑誌をじっと見ている。
「富岡さん?」
「俺……馬鹿にされるかもしれないけど、あまり経験はないんだ。初めてしたのもレイプみたいなモノだったし、つきあった女もそんなに多くなくて。しかも手を出したのも相当経ってからだったから、ヘタレってずっと言われてて。」
「フラッシュバックする?」
「そうかも。こう……この容姿だから、遊んでそうとか軽そうって言われるけど……。」
「……だったら無理にしなくても良いわ。帰る?」
 すると伊織は床に置いているバッグから、ポーチを取り出した。そしてその中から袋を取り出す。それに真矢は少し顔を赤く染めた。
 うつむいている真矢の頬に手を置くと、そのままかがみ込むように伊織は唇を重ねた。柔らかい唇が唇を何度も塞いで、真矢もまた伊織の頬に手を伸ばした。少しザラッとした髭の感触がする。唇を割ると、舌を絡ませてお互いの感触を確かめ合うように何度も繰り返した。
「……。」
 真矢を引き寄せて、抱きしめる。そしてそのまま抱き上げると、ベッドに寝かせた。
「眼鏡……。」
 慌てたように真矢が言うと、伊織は首を横に振る。
「かけたままが良い。」
「何で?」
「俺が抱いてるんだ。それをわかって欲しいから。」
 春樹を重ねないで欲しい。そう思って伊織はあえて眼鏡をそのままにした。だが真矢は眼鏡を取って、ベッドサイドに置く。
「何で?」
「危ないから。これ代わりがないの。それに……心配しなくてもあなただってわかるわ。誰も重ねたりしない。あなたも重ねないで。」
「うん……。」
 服を脱がせて下着をとると、今まで見てきた誰よりも胸が大きいと思った。なのにその先は綺麗なピンク色で、張りがまだある。そっとそこに触れると、真矢は少し頬を染めた。
「んっ……。」
「感じる?感じるところ全部教えて欲しい。触るから、我慢しないで。」
 まだ少し体が固い。緊張しているのだろうか。思わずその乳首に舌を這わせた。
「あっ……。」
 もてあそぶようにしたで舐め回すと、その先がピンと立ってきた。指でつまみ上げて少し引っ張る。
「あっ!ああああ!引っ張らないで。ん……。そんなにゴリゴリしたら……。」
「この先?先がいいの?」
 つまみ上げながら舌で刺激すると思わず真矢は顔を手で覆った。
「駄目。顔を見せて。」
 手を避けると、もう真っ赤になっている顔をした真矢が恨めしそうに伊織を見ていた。
「そんなにしないで。富岡さん……あっ……。」
「名前呼んでよ。真矢。」
「伊織……。い……。駄目、まだそこ……。」
 ズボンの中に手を入れる。すると下着の下に手を入れると、もうぬるっとした感触がした。
「聞こえる?この音。」
 脱がせていないズボンや下着の下から、水の音がした。
「駄目って言ってもこんなに濡れて……。すごい感じやすいんだ。」
 すんなり指が入る。すると真矢は首を横に振った。見えるわけではなく、感じているだけだ。実際に伊織が何をしているのかわからない。ただ自分の性器に指らしきモノが入っているのはわかる。
「んっ!」
「ここ?」
 指が当たった。こんなに丁寧にする人が居るのだろうか。感じるところを探って、真矢を気持ちよくさせようとしている。そこに触れる度に、真矢の声が甘くなっていく。
「あっん!い……。ん……。」
 もうパンツもぐじょぐじょでそこもどろどろだ。いつ入れ込んでも良いくらい濡れている。口が半開きで、目がうつろになってきた。そして太股ががくがくしてシーツを手で掴んでいる。もう寸前なのだ。
「ああっ!伊織!あっ!いっ!ああああ!」
 体をびくびくさせて声を上げた。もう絶頂に達してしまったのだ。それを見て指を抜くと、改めてズボンや下着を脱がせる。顔を赤くしている真矢の唇にキスをすると、伊織もまた服を脱ぎ始める。そして下着も取ると、息を切らせている真矢の体に乗りかかりまた唇を重ねる。
「まだこれからだから。」
「え?」
 真矢の膝を立てて、そこに顔を近づける。舌を這わせるとまだ甘い声と水の音が部屋に響いた。
「この上も好き?堅いところ。立ってる。ほら。」
 指で刺激をすると真矢はまた絶頂に達した。まだ挿入もしていないのに、何度も何度も絶頂に導いてくれる。もうどうにかなりそうだ。
 舌を離すと、真矢は少し泣いていたのかもしれない。体が熱くてたまらない。
「伊織……もう駄目……。」
「ん?」
「一つになりたいの。お願い。」
 自分から望んだことはない。恥ずかしくて顔を手で覆った。すると伊織はその手を避ける。
「俺を見て言って。」
「……入れて。」
「俺もそろそろ入れたいと思った。」
 ゾクゾクする。倫子の時もそんな気持ちだった。だが段違いに違うことがある。求められている。そう思えた。
 コンドームをつけると、真矢の腰を持ち上げる。そしてその中に埋めていった。
「入って……。」
 背中が、体が、すべてがゾクゾクする。狭い壁を押しのけて、伊織が入っていくのがわかる。硬くて大きいものだ。そして熱い。入り込んでいくたびに水の音がする。
「そんなに締めないで。すぐ出ちゃうから。」
「あ……。」
 無理か。そう思いながら奥を目指していく。そして根本まで入り込んで、伊織は少し息を吐いた。
「すごい。これだけでイキそう。」
 薄いゴム越しなのに、ぎゅっとそこを締めてくる。そのまま真矢の体に寄りかかると、真矢の唇にキスをした。舌を絡めてくるその行為に、ますますそこが濡れてきた。すでにシーツが濡れているのがわかる。
「動いて良いよ。落ち着いてきたから……。」
「また落ち着かなくなるよ。ほら……ここが好き?」
 腰を打ち付けると胸が揺れた。そしてそのたびに声を上げる。
「あっ!あっ!伊織!」
「真矢……。真矢……。」
 互いの名前を呼んで、何度もキスをした。真矢も伊織の体に手を伸ばす。この温もりを忘れないように。この衝撃を忘れないように。
 伊織が果てたとき、真矢は少し意識がもうろうとしていたのかもしれない。声を上げた後、息を切らせて枕に顔を埋めていた。
「真矢?」
「ごめん……どっかいっちゃいそうだった。」
「可愛い。」
 そう言って髪を避けると、またキスをする。そして真矢の中から出て行った。
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