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ポッコチーヌ様のお世話係

白騎士団長マクシミリアン・ガルシア②

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「どうだ!貴様!感想を述べよ!」
「あ、はあ、真にご立派であります」
「何処がだ、具体的に述べよ!」

 ゲルダは言い淀む。何と言うのが正解なのか皆目わからない。

「えっと、あの、全体的に?」
「何だと?」
「す、全てにおいてでございます」

 マクシミリアンは不満そうに鼻を鳴らす。

「俺が美の権化であることはわかっている。しかし、その中でも最も美しい場所があるだろう」

 はて?どこだろう。あそこかな?あそこだろうな。明らかに見せつけてるもんな。いや、でもな、さすがにそこは美しいとは言えなくないか?つか、いくら騎士だとて一応未婚の女子だぞ。何を言わせようとしてんだコイツ。

 胸の内でゲルダはキレる。もはや敬語も消し飛んだ。しかし、声にする勇気は無い。

「早く言え!褒め讃えよ!」

 白騎士団団長マクシミリアン・ガルシアは、感極まったように己を抱きしめながら、剥き出しの股間を突き出した。
 その到底脳内で処理できぬ不可解な光景を見せつけられ、ゲルダの中から恥じらいは即座に抜け落ちた。残ったのは、そう、疲労感のみ。
 
 全裸で仁王立ちする上司を前に、ゲルダは諦めの境地の中にいた。
 しかし、団長の逸物を褒めねばこの場が収まらぬことを理解し、重い口を開く。

「素晴らしい逸物でございます。団長のソレは正に美の結晶、燦然と聳え立つ様は凛として清廉、雄々しいながらも神々しく、拝見出来て感動の極みでございます」

 何を言ってるのか自分でもよくわからないが、とりあえず思いつく限りの賛辞の言葉を並べておく。
 しかし、全裸の破廉恥騎士団長は鼻で笑って一蹴した。
 
「ふん、月並みだな」

 くそが!うら若き乙女の前に不埒なものを晒し、称賛を強要する罪人のくせに!
 ゲルダは顔を背け小さく舌打ちをした。

「まあ、仕方がない。凡人には到底理解できぬだろうからな。俺のポッコチーヌの美しさは」
「は?なんとおっしゃいました?」
「ポッコチーヌだ」
「ポ、ポッコチーヌとは即ち、団長の股間にあるそれのことですか」
「そうである」

 そうであるって、あんた……。

 ゲルダは憐みの目をマクシミリアンに向けた。
 確かに常人ならざる美貌と完璧な肉体美の持ち主である。しかし、その中身は常軌を逸した変わり者。いや、自らの美しさに頭を狂わされた可哀想な生き物であった。

 かくして、ゲルダ・シュモルケは初日にして白騎士団長マクシミリアン・ガルシアの弱み(?)を握ることに成功した。
 世の羨望を一身に受ける男の正体は、露出狂の超ナルシスト。その上、自分の逸物に名前をつけて愛でる変態であった。
 それは、国家を揺るがす大スクープであり、万が一公になる事があれば、王妃を含めガルシア一族のイメージダウンは必至。それどころか、筆頭貴族からの除名、地方へ左遷も有り得る……

 ゲルダはその重大な事実に震え上がり、結果、隠蔽することを決意した。
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