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25.思いがけない侵入者
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その後、婚姻の日取りは翌年の初夏に決まった。
遠距離にある2国間に於いて、異例のスピードで準備が整ったのは、レイモンドが開いた魔方陣のゲートのお陰だ。
加えて、レイモンドが用意してくれた魔道石盤があったので、アルフレッドとも毎日連絡を取り合う事が出来た。
うっかり“会いたい”と石盤に書いたら、石盤を辿ってアルフレッドが魔道移動して現れたこともあった。
不法侵入である上に、カリーナの自室に二人で居る所を見られるとかなり不味いので、何とか宥めて帰らせたが、懲りずにアルフレッドは、その後もこっそり何度か訪れた。
朝起きたら、騎士服のまま隣に寝ていた事もあった。
(あの時は焦ったなぁ…)
カリーナは思い出して苦笑いする。
そんなこんなで、離れている間もさほど寂しさを感じなくて済んだ。
気付けば、目前に教会の白い扉があった。
両側に立っていた白い制服を纏った騎士が扉を開けて頭を垂れる。
紫色の絨毯が真っ直ぐと、祭壇に伸びている。
祭壇の手前には、白い衣装を纏った長身の婚約者が立ってこちらを見ていた。
いつも下ろしている前髪をオールバックにして美しい美貌を余すこと無く晒している。
両脇から両国の王族と要人らが見守る中、ゆっくり歩を進める内に、緊張が増してきた。
アルフレッドの元にたどり着けば、婚姻の儀式が始まる。
カリーナはその手順を今一度頭の中でおさらいする。
やがて、白い手袋に包まれた大きな手がカリーナの手を取った。見上げると、見慣れたネイビーブルーの瞳があった。
2人の正面に立つのは、白地に金の刺繍が施されたローブを纏った神官長だ。
カリーナは、アルフレッドにもう片方の手を差し出し、2人は向かい合って両手を繋いだ。
既に2回唱えている誓いの言葉だが、人前では初めてだ。
2人の声が重なって教会の高い天井に反響する。
詠唱が終わっても暫し見つめ合う。
いよいよアルフレッドの伴侶となるのだという実感が沸き上がり、カリーナの胸を高鳴らせた。
その時、間近で、この場にまるでそぐわない言葉が聞こえた。
「こうなると思っていたよ」
繋いだ手から、アルフレッドの緊張が伝わる。
カリーナは、声の聞こえた方向に首を向けた。
そこには、白い髭を蓄えた神官長が経典を開いて立っていた。
「10年前の星の元での誓いは見事に果たされた訳だな。実に感動的だ」
アルフレッドが殺気を隠しもせず睨んで問いかけた。
「貴様は誰だ…!」
「シーッ静かに。式を台無しにしたくないだろう?」
神官長は、経典で口許を隠して、祝詞を読んでいるかのようにカモフラージュした。
「君たちの婚姻の知らせを聞いてね、いても立ってもいられなくなって飛んできたんだ」
私達2人のことを知っている人物など限られる。
アルフレッドは目を見開いて、呟いた。
「貴方はまさか…」
「ミルト君、良く流星群の観測日を予想できたな、見事だ。あれは、圧巻だったな!200年に一度の奇跡だ!」
カリーナはその正体を確信した。
「村長だ!」
遠距離にある2国間に於いて、異例のスピードで準備が整ったのは、レイモンドが開いた魔方陣のゲートのお陰だ。
加えて、レイモンドが用意してくれた魔道石盤があったので、アルフレッドとも毎日連絡を取り合う事が出来た。
うっかり“会いたい”と石盤に書いたら、石盤を辿ってアルフレッドが魔道移動して現れたこともあった。
不法侵入である上に、カリーナの自室に二人で居る所を見られるとかなり不味いので、何とか宥めて帰らせたが、懲りずにアルフレッドは、その後もこっそり何度か訪れた。
朝起きたら、騎士服のまま隣に寝ていた事もあった。
(あの時は焦ったなぁ…)
カリーナは思い出して苦笑いする。
そんなこんなで、離れている間もさほど寂しさを感じなくて済んだ。
気付けば、目前に教会の白い扉があった。
両側に立っていた白い制服を纏った騎士が扉を開けて頭を垂れる。
紫色の絨毯が真っ直ぐと、祭壇に伸びている。
祭壇の手前には、白い衣装を纏った長身の婚約者が立ってこちらを見ていた。
いつも下ろしている前髪をオールバックにして美しい美貌を余すこと無く晒している。
両脇から両国の王族と要人らが見守る中、ゆっくり歩を進める内に、緊張が増してきた。
アルフレッドの元にたどり着けば、婚姻の儀式が始まる。
カリーナはその手順を今一度頭の中でおさらいする。
やがて、白い手袋に包まれた大きな手がカリーナの手を取った。見上げると、見慣れたネイビーブルーの瞳があった。
2人の正面に立つのは、白地に金の刺繍が施されたローブを纏った神官長だ。
カリーナは、アルフレッドにもう片方の手を差し出し、2人は向かい合って両手を繋いだ。
既に2回唱えている誓いの言葉だが、人前では初めてだ。
2人の声が重なって教会の高い天井に反響する。
詠唱が終わっても暫し見つめ合う。
いよいよアルフレッドの伴侶となるのだという実感が沸き上がり、カリーナの胸を高鳴らせた。
その時、間近で、この場にまるでそぐわない言葉が聞こえた。
「こうなると思っていたよ」
繋いだ手から、アルフレッドの緊張が伝わる。
カリーナは、声の聞こえた方向に首を向けた。
そこには、白い髭を蓄えた神官長が経典を開いて立っていた。
「10年前の星の元での誓いは見事に果たされた訳だな。実に感動的だ」
アルフレッドが殺気を隠しもせず睨んで問いかけた。
「貴様は誰だ…!」
「シーッ静かに。式を台無しにしたくないだろう?」
神官長は、経典で口許を隠して、祝詞を読んでいるかのようにカモフラージュした。
「君たちの婚姻の知らせを聞いてね、いても立ってもいられなくなって飛んできたんだ」
私達2人のことを知っている人物など限られる。
アルフレッドは目を見開いて、呟いた。
「貴方はまさか…」
「ミルト君、良く流星群の観測日を予想できたな、見事だ。あれは、圧巻だったな!200年に一度の奇跡だ!」
カリーナはその正体を確信した。
「村長だ!」
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