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第二章 大家族になりました

第四話 飽きたのよ

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「さあ、皆! 外に出て遊ぶわよ!」
「「「は~い!」」」
教師の女性が教室にいるアビー達に外に出て遊ぶように言う。

「アビー、行こうよ!」
「「行こう!」」
「うん!」

メアリー達に誘われ、外に出たのはいいが、待っているのは縄跳びだ。
「え~また……」
「またって、アビーが考えた遊びでしょ? 何、どうしたの?」
確かにアビーが考えたとも言えるが、歩だった頃にテレビで見た遊びで決してアビーが考えた訳ではないのだ。
テレビの中で楽しそうにしている子供達を見て、いつかは自分もあんな風に遊びたいと思っていたが、さすがに外に出る度に縄跳びだと飽きてしまうのもしょうがないというものだ。
でも、どうせならメアリー達だけじゃなくて、ここにいる皆と遊ぶ為にはどうしたらいいかと考えてみると、縄跳びをつまらなさそうに見ている女の子の集団に気付き、その集団に走り寄る。
「ねえ、一緒に遊ぼ!」
「「「え?」」」
いきなりアビーに声を掛けられた女の子達は驚くが、アビーのことをジッと見る。
「ねえ、あなた……アビーよね」
「うん。僕はアビー。あなたは?」
「私は……」
アビーに話しかけられた女の子達はアビーに対し、それぞれ自己紹介していく。
「ユーリよ、よろしく! こっちは……」
「ネリ」
「リロ」
「スイ」

挨拶が済むとユーリはアビーに言う。
「ねえ、なんでアビーは私達に声を掛けたの?」
「飽きたんでしょ?」
「え? 何?」
「もう、縄跳びに飽きたんでしょ。違う?」
「……分かる?」
「うん! 僕もそうだから」
「「「アビー!」」」
「ごめんね、メアリー」
「それはいいんだけど、アビーが教えてくれた遊びだよ」
「そうよ。なんで?」
「他の遊びもないのに?」
メアリー、サンディ、ニーナがアビーに問い掛けるが、アビーはそれに笑って答える。
「だから、一緒に遊ぼ!」
「「「え?」」」

アビーとメアリー達で四人、ユーリ達も四人で計八人もいれば、アレが出来ると思い付いたアビーは自分が着ていた上着を脱ぐと丸めて直径二十センチメートル位のボールを作ると、地面に足でメアリー達を囲む様に長方形の枠を書く。
「これでよし! メアリーは僕と外。サンディとニーナは中ね。ユーリ、そっちも中と外に分かれて!」
「え? わ、分かったわ。じゃあ、私とネリで外。リロとスイは中ね。で、どうすんの?」
「こうするの。えい!」
アビーは持っていたボール擬きをリロ目掛けて投げる。
「え?」
アビーにいきなりボール擬きを投げつけられたリロは棒立ちのまま、そのボール擬きを当てられ、驚く。

「ボールを落としたから、リロはアウト! 枠の外に出るの」
「え? もう出るの?」
「うん。ごめんね、最初は説明しながらやるから」
アビーにそう言われ、不承不承という感じでリロは外に出る。そして、残されたスイはどうしていいか分からず、オロオロしているとアビーにボールを拾って、サンディに当てるように言われるが、まず投げ方が分からない。
「えい!」
分からないながらもスイは両手で持ったボール擬きをサンディ目掛けて投げるが、それはへろへろと飛び、サンディの手前で落ちる。
「あ~無理だったかぁ。じゃあ、サンディはそれを拾って、スイに当てて」
「当てるって、さっきアビーがしたようにすればいいの?」
「うん。そう! やってみて」
「分かった」
サンディはアビーがしたように振りかぶるとスイを目掛けて投げる。
自分が的になったことを理解したスイは、ボール擬きが飛んでくる瞬間になんとか躱すことが出来たが、躱したボールはアビーの足下へと転がる。
そして、それを拾ったアビーがユーリ達に言う。
「こんな風に枠の中と外でボールを投げ合って、ボールを受け取ることが出来たら、そのまま相手に投げてもいいし、枠の外にいる仲間に渡してもいいの。でも、受け取れなかったり躱せずに、ボールが当たったら枠の外に出て、枠の外から投げて当たったら、中に戻るの。最後に枠の中に人がいなくなったら終わり。どうかな?」
「「「面白そう! やる!」」」

アビーが提案したドッジボールにメアリー達も遊び方を理解したようで、早く早くとアビーを急かす。
「ちょっと、待ってよ!」

そんな風にドッジボールで遊んでいると遠巻きに見ていた他の子供達も興味を持ち、段々と近付いてくる。

そして、アビーがボール擬きを掴み損ねて後ろにそらしてしまうと、一人の男の子がソレを拾ってアビーに渡す。
「ありがとう」
「なあ、俺達もそれで遊んでいいかな?」
「ソレって……これのこと?」
「そう、ソレ!」
アビーは自分の持つボール擬きのことかと確認すれば、男の子はそうだと答える。
「これは僕の服だから渡せないよ。自分達で用意すればいいじゃない」
「あ、それもそうか!」
男の子はそれもそうだと自分の服を脱ぐとアビーと同じ様に丸めると、後ろで待っていた集団に声を掛ける。
「よし! 二つに分かれるぞ!」
「「「おう!」」」
「待って、ケビン!」
「なんだよ、テディ」
「ほら! 僕たちも線を引かないと!」
「あ、そうだな。アビー、ありがとうな!」
「うん。またね」
アビーがケビンと呼ばれた男の子と別れ、メアリー達の所に戻ると、なぜかメアリー達がによによとアビーを見ているのに気付く。
「何? どうしたの? 皆、変だよ?」
「アビー、ケビンと何を話したのよ?」
「何って、自分達もドッジボールをしたいっていうから……」
「もう! なんでそこで一緒に遊ぼうって誘わないの!」
「え?」
「メアリー、アビーは学校に来たばかりだから分からないよ」
「そうかもしれないけど……あ~もう」
アビーにはメアリーが残念がっている理由が分からず、モヤッとした気持ちのままで家に帰ることになる。
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