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第一章 さようなら日本、こんにちは異世界

第17話 悪いのは誰なのか

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「どうして! どうして、そんなこと言うの! 酷いよ……雅史まさし
『俺が悪いのか? 違うだろ』
「でも、恋人の私が困っているのに見捨てるの? もうすぐ結婚もするのに!」
『ああ、ソレも当然ナシな』
「なんでよ!」

 池内直樹の担任の『川村かわむら 晴菜はるな』は電話の向こうから婚約破棄を言い渡され憤慨しているが、もうどうにもならないのは相手の雰囲気からも分かる。相手が言うには池内直樹の自殺に関与している人間として、担任の自分の名前がネット上に晒されていたのだ。もちろん、恋人である相手の名前も一緒に掲載されていた。

 そして、そこに書かれていたのは名前や関連する人物だけでなく池内直樹にしていた内容が事細かに書かれていたのだ。

 そして担任でもあった彼女のしてきたこととして、書かれていたのは『イジメの黙認』だった。そう彼女が最初に気付いたのは一年の夏休みに入る少し前だった。もし、この時にイジメを止めておけばここまでの事態にはならなかっただろう。

『なあ、分かるだろ。お前もいい歳なんだしさ』
「何よ! そんな彼女を慰めることもしないで電話で済ませるなんて、卑怯よ! ズルいわよ!」
『あ~それは済まない。だけどさ、先輩にさ「別れ話は車でするものじゃない」って言われてたのを思い出してさ。電車で出掛けるのも面倒だしさ』
「だったら、部屋に直接来ればいいじゃないの!」
『ん~もう一つ、言われてな。刃物が置いてある場所の近くで別れ話をするなともね』
「……分かったわよ」
『あとな』
「何よ! まだ、何かあるの!」
『式場のキャンセル料とか諸々のキャンセル料の支払い、よろしくな』
「ちょ、ちょっと待ってよ! なんでそうなるのよ! 婚約破棄を言い出したのはそっちなんだから、あなたが払いなさいよ!」
『はぁ? お前のしてきたことが原因で別れるんだから、お前が払うのが筋だろうが! いいな、俺は絶対に払わないからな!』
「な、ちょっと待ちなさいよ!」
『話はそれだけだ。じゃあな』
「ちょっと……もう、ムカつく! なんでこうなるのよ。これもあの子が勝手に死ぬからよ! なんで私が式を挙げる前に死ぬのよ。もうすぐ卒業なんだから、あと少しだけ我慢してればいいじゃないの!」

 彼女はそう言って持っていたスマホを投げようとして、ふと思い付く。

「そうだよね~アイツはもう死んだから責任は取れないよね。じゃ、しょうがないか。子の責任は親がとるものだよね。ふふふ、そうよね。親にとってもらわないとね」

 彼女はそう言うと、バッグを手に取り出掛ける用意をする。

『あらあら、ちょっと展開が早いわね。でも、まぁいっか。遅いか早いかなら、早くてもいいかもね』

 この担任と同じ様に「アイツが悪い!」という答えに行き着いた者達が、池内家の近くに集まっていた。その集団に気付いた担任は近付き声を掛ける。

「皆どうしたの? こんなに集まって」
「先生こそ」
「私、私はちょっと池内君のご両親にお話があってね。あなた達はどうしたの?」
「私達は……その……」
「ん~見るからにお話に来たようには見えないけど?」

 担任が言うように池内家の周りに集まった者達は色々な道具を手にしていた。例え子供であろうと、そんな物を持ってお悔やみを言いに同級生の家を訪ねてきたとは思えない。

「ほら、池内君のご両親には私からちゃんとお話しておくから、今日は帰りなさい」
「……」
「ほら、池内君の家の回りにはマスコミの人がたくさんいるのよ。そんな人達にそんな物を持っていることが分かればどうなるかは分かるでしょ。ほら、今日は帰りなさい」
「でも……」
「いいから、ね?」
「分かりました……」

 担任は生徒達を見送ると、池内家に向かう。「こんなことなら、もう少しキレイにしてくればよかった」などと考えながら歩いていると担任に気付いたマスコミの一人が担任に対しカメラを向け、「自殺した池内君の担任の先生ですよね」と聞いてくる。

 担任はカメラを意識しながらもどう答えればカメラ写りがいいだろうかと考えていると「池内君のイジメを黙殺してきた川村先生ですよね」と言ってきた。

「え? 何を言っているんですか? 私が何をしたと言うんですか」
「いえ、あなたは何もしなかったんですよね。そのことをどう思われてますか? 今は後悔しているんでしょうか? どうなんですか?」
「ちょ、ちょっと待ってください。一体、あなたは何を言っているんですか? 大体、どこのテレビ局なんですか? 失礼ですよ」

 そんな風に担任をカメラに捉え質問を続けていると、そんな様子に気付いた他の記者達も話を聞こうと担任である女性を取り囲む。

「ちょっと、通してください。私はご両親にお話があって来たんです。だから、通してください」
「あ、ご両親は不在ですよ。今、あの家には誰もいません」
「え? じゃあ、どこに行けば会えるの?」
「さあ、それは我々には分かりません。それでご両親にお話をと言うことですが、それは謝罪に来たと言うことでしょうか?」
「え、謝罪? どうして、そういう話になるのでしょうか?」
「「「え?」」」

 担任を囲んでいた記者達は担任の発言に一瞬戸惑う。「本気で言っているのか」と。

「え~と、担任の教師として一人の生徒が自殺をしたのですよね。ならば、担任としての管理責任を問われてもおかしくないと思いますが、その辺りはどうお考えですか?」
「ですから、私に責任を問われても分かりません。大体、私だってそりゃ最初は注意しましたよ。でもね、あの子達は誰も私の言うことなんて聞かないんです。だから、私も学年主任や教頭に校長先生、教育委員会にも話をしましたが、皆が言うんです」
「それはなんと?」
「無視しなさい……と」
「「「え?」」」
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