巻き込まれたんだけど、お呼びでない?

ももがぶ

文字の大きさ
65 / 132
第四章 見えない敵意

第9話 しょうもなっ!

しおりを挟む
『う~私が言ってもいいんでしょうか?』
『誰も聞いてないし、いいんじゃない?』
『あ! それもそうですね。じゃ、話しますね』
『うん、お願い』
ルーが話してくれたのはこうだった。

魔族の名は「ガネーシャ」。以前はここまでヒトを恨むことはなかった。しかし、ある一件の出来事がガネーシャを変えさせたと言う。
その出来事と言うのが、ガネーシャが振られたことが原因らしいと。

『え~振られた腹いせでヒト全体が恨まれるの? なんだか割に合わないんだけど』
『ですが、その原因を知れば、それもしょうがないかと……』
『ルーはその詳細を知っているの?』
『……すみません。それは私の口からはちょっと』
そこからはソルトがルーに何度問い掛けても話してはくれなかった。

しょうがないかと嘆息しソルトがこっちをずっと睨んでいる魔族『ガネーシャ』に話しかける。
「ねえ、振られた腹いせにヒト全体を恨むのはどうかと思うんだけどさ」
「お前には関係ないだろ!」
「でも、俺もヒトだし、関係ないとは言えないだろ。そもそもに振られて恨むなんてとしてどうなの?」
ソルトが言ったことにガネーシャがピクリと反応しソルトを睨みながら一段と低い声で唸るように言う。
「お前、今なんて言った?」
「だから、男が女に振られた位でヒトを恨むのはどうかしていると……」
「違う! 俺は女だ!」
「「「え?」」」
ガネーシャの告白にソルトだけでなく、エリスや皆も一様に驚く。
「なんだよ、俺が女で悪いか!」
ガネーシャがそう言うので、ソルトがガネーシャを鑑定する。
~~~~~
名前:ガネーシャ 六一八歳
性別:女(処女)
種族:魔族
状態:ホルモン異常
~~~~~

鑑定した結果をソルトが皆に伝える。
「確かに女だね」
「ほら、見ろ!」
「「「え~」」」
だが、皆はまだ納得出来ないのか驚きの声を出すから、ソルトも「失礼だよ」と皆を諭す。
「でも、彼女……でいいんだよね。その彼女の体付きはどう見ても……」
エリスがそう言うと、ガネーシャがダンと足を踏み鳴らす。
「あ、ゴメンね。でも、そのどう見ても……ねえ」
「くっ……お前もそう言うのか! 私だって、せめてお前くらいの胸があれば、こんなことにはならなかったのに……」
「せめてって、あなたねぇ」
「くくく、確かに今の彼女に手が届きそうなのはエリスのサイズだもんね」
「レイ!」
エリスを揶揄うレイにエリスが怒り追い回す。

「もしかして、その状態にヒトを恨む原因があるのか?」
ソルトがガネーシャに話しかけるとガネーシャはソルトの方を向き「ああ、そうだ」と短く答える。
「よかったら、その話をしてくれないか。もしかしたらなんとか出来るかもしれないし」
「それは本当か!」
ガネーシャは思わずソルトの両肩を握るが、少しだけ手が届かずソルトにぶら下がる形になりながら、ソルトに確認する。
「まあ、落ち着いて。さっき鑑定した時にガネーシャの状態に『ホルモン異常』と出ていたのを確認したんだ」
「ホルモン異常? なんだそれは?」
「あ! そういうこと! なら、納得ね」
「レイは分かるの?」
一人納得していたレイにエリスが確認する。
「あのね、『ホルモン異常』ってのはね……が……こうなって……ってなるの」
レイの説明を聞いていたリリス、シーナ、ノア、カスミ、サクラが赤くなるのを見てソルトがレイに確認する。
「レイ、お前何を話した?」
「何って、『ホルモン異常』の話よ」
「それだけで、こうなるのか?」
ソルトがレイの話を聞いてもじもじしている女性陣を指差して言う。
「あ~それはしょうがないんじゃないの。少しだけ刺激が強かったとは思うけどさ」
「そんなことより、本当に治るのか? もう、この体のことで悩まなくてもいいのか?」
ソルトを揺さぶろうとガネーシャが力を込めるが、どう見ても揺さぶられているのはガネーシャの方だった。

「そこはなんとかするから、まずは話を聞かせて欲しい。いいかな?」
ソルトがその場で跪きガネーシャと目線を合わせるとヒトを恨む原因となった話を聞かせて欲しいと頼む。

ガネーシャはしばらく考えると「分かった」と言って、話し始める。

「あれは私がまだヒトを恨むことなく、ただこの体だけを疎ましく思っていた頃……」

ガネーシャがどう見ても男っぽい自分の体を疎ましく思っていた頃は自分と同じ種族にも「女のくせに」「本当は男なんだろ?」と言われ続けていた。
好きになった男にやっとの思いで告白しても「ごめんなさい」と言われ振られ続けてやけになって酒場で浴びるように飲んでいた時に隣に座った男に声を掛けられて、いい雰囲気になる。
そして「いいよね」と男に言われ、肩を抱かれたまま男の部屋に連れて行かれ「私もやっと人並みに」と期待していた。でも、服を脱いだら、この男も離れていくんだろうかと思い、脱ぎかけた服を途中で止め、服をギュッと掴んでいると男が背中から覆い被さり「大丈夫だから」と言われて、思い切って服を脱ぎ男の方を振り向き裸体を晒す。
男は逃げたり幻滅することもなく「キレイだ」と言ってガネーシャを抱き寄せた。
そして何度も口づけを交わし共にベッドに倒れ込み期待に薄い胸を膨らませる。
「「さあ……え?」」
二人はベッドに倒れ込むと二人とも仰向けになり、相手が覆い被さってくれるものと期待していたのに何もことが始まらないことに互いに疑問が頭に浮かぶ。
「え? どういうこと?」
先に正気に戻ったガネーシャが相手の男に尋ねる。
「え? どういうことって、俺がネコで君がタチでしょ? 違うの?」
「違うわ! 私は女よ!」
「え~じゃいらない。帰ってもらえるかな?」
「え? なに? 私をキレイって言ったじゃない!」
「それは男にしてはってことだよ。なあ、いいから早く出て行ってくれ」
男が苛立つようにガネーシャに言うとガネーシャが脱いだ服を投げ付ける。
「そんな、非道い! そもそも『タチ』ってなによ!」
「あれ? 知らない? 最近、この街に来た勇者が言ってたんだ。それから勇者に色んな話を聞いて、もう日陰で生きなくてもいいんだって」
男は満足そうに語り終えると、まだ禄に服も着ていないガネーシャをさっさと部屋から追い出す。
そしてガネーシャは泣きながら服を着て正すと零す。
「勇者憎い! ヒトが憎い! この体が憎い!」

そんなガネーシャの話を黙って聞いていたソルト達はと言えば様々で。
「そんなことで」
「分かる~」
「どうでもいい」
と三つに分かれた。

「私は全部話したぞ。今度はそっちが約束を守る番だ」
鼻息も荒くソルトに向かってビシッと指を差す。
「あ~もう、なんか面倒になっちゃったな~」
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...