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第四章 見えない敵意
第12話 ソルトのクセにナマイキだ!
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「あ、ソルト。向こうはどうだった? 大人しくしてたの?」
「大人しくはしていたけどさ、家の玄関を開けた瞬間に男性ホルモンの凝縮した臭いが凄かったよ。今もショコラ達に頼んで換気しているけど、しばらくは臭いが取れないかもね」
「え~そんなになの? それはちょっとイヤだな~」
「スマンが、その男性ホルモンと言うのは、私を長い間苦しめていた原因のことだよな?」
「あ、ガネーシャ」
ソルトがレイ達の元に戻ってきたのに気付いたレイがソルトに声を掛け、男達の様子を確認すると、ソルトが男臭さにイヤになったと話をしていたところにガネーシャが興味を持ち、話しかけてきた。
「そうだよ。まあ、あの人達なら男性ホルモンが過剰に分泌されてても不思議じゃないよね。ソルトももう少し出してもいいんじゃない?」
「悪かったね。大体、そんなもん自由に出し入れ出来ないだろうが」
「なら、俺も臭うのか……なあ、頼む! 確かめてくれないか?」
男性ホルモンの話にガネーシャが食いつき、自分の体からも異臭がしないか確かめて欲しいと懇願してきたのでソルトはすっと身を交わしレイに「出番だ」と告げる。
「え! 私?」
「そうだ。お前なら匂いフェチだから適役だろ?」
「な、なんの証拠があってそんなこと言うのよ!」
「なんのって、前に俺の頭を抱えて「ワーワーワー!」……覚えてないのか?」
「な、何を言ってるのかな~ソルト君は?」
「なんだ、本当に忘れたのか? 女将さんの宿で一緒に寝泊まりしている時の話だよ」
「……覚えていたの?」
「ん? そんなに不思議か? 俺にはお前の行動の方が不思議だったけどな。毎朝、目が覚めたらお前が俺の頭を抱えているから、起きるのに一苦労だったぞ」
「……」
ソルトの口からレイの痴態が披露されたことで、レイの顔がみるみる内に赤くなる。
「なら、レイ。頼む。匂いのプロとして頼む!」
「な、何よ! ガネーシャまで。それにプロって言わないでよ!」
「でも、ソルトが言うから……」
そう言って、ガネーシャがソルトを一瞥してからレイに頼み込む。
「ハァ~もう分かったわよ。ほら、嗅がせなさい!」
レイが堪忍したように了承し、ガネーシャの頭を引き寄せ、その頭に鼻を着けると思いっ切り吸い込む。
「すぅ~ぷはぁ~」
「レイ! どう? 臭くない?」
「うん、大丈夫よ。ガネーシャからは男臭い匂いは全くしないわ」
「よかった~」
ガネーシャが安心して、力が抜けたようにその場に座り込む。
「もうガネーシャはどこから見ても女の子なんだから、もっと自身を持てばいいのよ。それとあとは、男言葉を直せば完璧ね」
「でも、俺は「それ!」……どうしろってんだ」
「だから、『俺』じゃなくて『私』よ。まずはそこから始めましょう」
「いや、急に言われても俺は……」
「ふふふ。そうよね、急に言われても出来ないわよね。でも、それを治さないと先には行けないわよ。考えてみなさい。あなたがその内、誰か懇意の男性とそういう仲になった時にどちらも『俺』って言ったら、どう?」
「……」
レイから、男言葉を直すように指摘され、これは自分の主義だからと譲るつもりはない様子だったが、レイから恋愛に進んだ場合のことを聞かれてガネーシャが俯く。
「すぐには答えられないようね。ソルトはどう思う?」
「俺はイヤだな。もしチャンスと思った時にどっちとも『俺』じゃ『ウホッ』的な展開を想像してしまいそうだ」
「だって、俺は女だぞ。なら、そんな展開にはならないだろ」
ガネーシャも過去の苦い体験を思い出すが、今の体ならそんなことにはならないと反論する。しかし、次にソルトが話す内容に愕然とする。そして、それにレイが食いつく。
「うん、今はね。でも、そういう雰囲気はちょっとしたことで壊されるからね。そういうムードブレーカーはいっぱい見てきたし、経験もあるからさ」
「え、うそ! ソルトってばいつの間に!」
「あのな、俺だってこっちに来る前はそれなりの年齢だったんだから、そういう経験くらいあってもおかしくはないだろう」
「そうだけど、だってソルトじゃん!」
「お前な~俺だって卒業したばかりの頃はそれなりだったんだからな。まあ、今の方がマシだがな」
「うわぁ急にオヤジ臭くなったよ。やめてよ、説教なんて」
「するか! 俺だって、説教する相手は選ぶわ!」
「それって、どう言う意味よ!」
「どうって、そのままの意味だよ。説教する相手は見込みがある奴だけだ。この意味が分かるか?」
「ウキーッ! ムカツク! ソルトのくせに!」
そんな不毛な言い争いをしているところにエリスがやってくる。
「どうしたの? レイは何を大声出しているのよ」
「エリス、聞いてよ! ソルトってばソルトの癖にヒドいのよ!」
「ごめん、意味が分からないわ」
「もう、エリスまで……」
「いいから、落ち着いて話してみなさい」
「分かった。じゃあ、私が話すから聞いてね。あのね……」
レイがエリスに向かって、ソルトがこっちに来る前に恋愛を経験していたことを話す。
「なんだそういうこと」
「エリス、裏切るの!」
「ちょっと、落ち着いて。そもそも向こうでの話をされてもどうしようもないでしょ。それに『裏切る』ってどういうことよ」
「だって、ソルトの癖にだよ。許せないじゃない!」
「だから、向こうの世界の話は関係ないって言ってるの。あ、そうか。だからレイが怒っているのね。でも、それもおかしい話よね」
エリスはレイが怒っているのがおかしいと気付き、それが日本でのことに原因があると考える。
「日本でのことなんか関係ないし……」
「ふ~ん、そうムキになるのも怪しいわね……」
「な、なんでもないし……見ないでよ!」
レイの顔がどんどん紅潮するのを面白そうにエリスは見ている。
「どういうこと?」
そして、ソルトとガネーシャは訳が分からず二人のやり取りを眺めるしかなかった。
「大人しくはしていたけどさ、家の玄関を開けた瞬間に男性ホルモンの凝縮した臭いが凄かったよ。今もショコラ達に頼んで換気しているけど、しばらくは臭いが取れないかもね」
「え~そんなになの? それはちょっとイヤだな~」
「スマンが、その男性ホルモンと言うのは、私を長い間苦しめていた原因のことだよな?」
「あ、ガネーシャ」
ソルトがレイ達の元に戻ってきたのに気付いたレイがソルトに声を掛け、男達の様子を確認すると、ソルトが男臭さにイヤになったと話をしていたところにガネーシャが興味を持ち、話しかけてきた。
「そうだよ。まあ、あの人達なら男性ホルモンが過剰に分泌されてても不思議じゃないよね。ソルトももう少し出してもいいんじゃない?」
「悪かったね。大体、そんなもん自由に出し入れ出来ないだろうが」
「なら、俺も臭うのか……なあ、頼む! 確かめてくれないか?」
男性ホルモンの話にガネーシャが食いつき、自分の体からも異臭がしないか確かめて欲しいと懇願してきたのでソルトはすっと身を交わしレイに「出番だ」と告げる。
「え! 私?」
「そうだ。お前なら匂いフェチだから適役だろ?」
「な、なんの証拠があってそんなこと言うのよ!」
「なんのって、前に俺の頭を抱えて「ワーワーワー!」……覚えてないのか?」
「な、何を言ってるのかな~ソルト君は?」
「なんだ、本当に忘れたのか? 女将さんの宿で一緒に寝泊まりしている時の話だよ」
「……覚えていたの?」
「ん? そんなに不思議か? 俺にはお前の行動の方が不思議だったけどな。毎朝、目が覚めたらお前が俺の頭を抱えているから、起きるのに一苦労だったぞ」
「……」
ソルトの口からレイの痴態が披露されたことで、レイの顔がみるみる内に赤くなる。
「なら、レイ。頼む。匂いのプロとして頼む!」
「な、何よ! ガネーシャまで。それにプロって言わないでよ!」
「でも、ソルトが言うから……」
そう言って、ガネーシャがソルトを一瞥してからレイに頼み込む。
「ハァ~もう分かったわよ。ほら、嗅がせなさい!」
レイが堪忍したように了承し、ガネーシャの頭を引き寄せ、その頭に鼻を着けると思いっ切り吸い込む。
「すぅ~ぷはぁ~」
「レイ! どう? 臭くない?」
「うん、大丈夫よ。ガネーシャからは男臭い匂いは全くしないわ」
「よかった~」
ガネーシャが安心して、力が抜けたようにその場に座り込む。
「もうガネーシャはどこから見ても女の子なんだから、もっと自身を持てばいいのよ。それとあとは、男言葉を直せば完璧ね」
「でも、俺は「それ!」……どうしろってんだ」
「だから、『俺』じゃなくて『私』よ。まずはそこから始めましょう」
「いや、急に言われても俺は……」
「ふふふ。そうよね、急に言われても出来ないわよね。でも、それを治さないと先には行けないわよ。考えてみなさい。あなたがその内、誰か懇意の男性とそういう仲になった時にどちらも『俺』って言ったら、どう?」
「……」
レイから、男言葉を直すように指摘され、これは自分の主義だからと譲るつもりはない様子だったが、レイから恋愛に進んだ場合のことを聞かれてガネーシャが俯く。
「すぐには答えられないようね。ソルトはどう思う?」
「俺はイヤだな。もしチャンスと思った時にどっちとも『俺』じゃ『ウホッ』的な展開を想像してしまいそうだ」
「だって、俺は女だぞ。なら、そんな展開にはならないだろ」
ガネーシャも過去の苦い体験を思い出すが、今の体ならそんなことにはならないと反論する。しかし、次にソルトが話す内容に愕然とする。そして、それにレイが食いつく。
「うん、今はね。でも、そういう雰囲気はちょっとしたことで壊されるからね。そういうムードブレーカーはいっぱい見てきたし、経験もあるからさ」
「え、うそ! ソルトってばいつの間に!」
「あのな、俺だってこっちに来る前はそれなりの年齢だったんだから、そういう経験くらいあってもおかしくはないだろう」
「そうだけど、だってソルトじゃん!」
「お前な~俺だって卒業したばかりの頃はそれなりだったんだからな。まあ、今の方がマシだがな」
「うわぁ急にオヤジ臭くなったよ。やめてよ、説教なんて」
「するか! 俺だって、説教する相手は選ぶわ!」
「それって、どう言う意味よ!」
「どうって、そのままの意味だよ。説教する相手は見込みがある奴だけだ。この意味が分かるか?」
「ウキーッ! ムカツク! ソルトのくせに!」
そんな不毛な言い争いをしているところにエリスがやってくる。
「どうしたの? レイは何を大声出しているのよ」
「エリス、聞いてよ! ソルトってばソルトの癖にヒドいのよ!」
「ごめん、意味が分からないわ」
「もう、エリスまで……」
「いいから、落ち着いて話してみなさい」
「分かった。じゃあ、私が話すから聞いてね。あのね……」
レイがエリスに向かって、ソルトがこっちに来る前に恋愛を経験していたことを話す。
「なんだそういうこと」
「エリス、裏切るの!」
「ちょっと、落ち着いて。そもそも向こうでの話をされてもどうしようもないでしょ。それに『裏切る』ってどういうことよ」
「だって、ソルトの癖にだよ。許せないじゃない!」
「だから、向こうの世界の話は関係ないって言ってるの。あ、そうか。だからレイが怒っているのね。でも、それもおかしい話よね」
エリスはレイが怒っているのがおかしいと気付き、それが日本でのことに原因があると考える。
「日本でのことなんか関係ないし……」
「ふ~ん、そうムキになるのも怪しいわね……」
「な、なんでもないし……見ないでよ!」
レイの顔がどんどん紅潮するのを面白そうにエリスは見ている。
「どういうこと?」
そして、ソルトとガネーシャは訳が分からず二人のやり取りを眺めるしかなかった。
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