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第1章 始まり
第7話 頑張るしかない
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ジョー、オタクのグループに続いて転移門を潜った片桐達のグループもまた他のグループと同じ様に既にここが日本ではないということを思い知らされた。
「ねえ、洋平君……ここってやっぱり……」
「うん、そうだね。確かに日本じゃないよね。第一、日本というか地球では太陽は一つだけど、ここはほら」
片桐がそう言って森の隙間から見える空を指差せば、そこには日本でも見た感じの太陽らしき光る恒星と、その横に同じ様に光って見える惑星が見えたのだ。
「確かにね。じゃ、ここが異世界だとしてだよ。これからどうするべきだと思う?」
「そうだね。先ずは坂井誠に見つからない様にしないとね」
「坂井? 坂井ってあの平達にいつもイジメられていた、あの坂井?」
「うん、その人物で合ってるよ」
片桐に対し今後、どうすべきなのかと片桐の幼馴染みでもある小林春奈が聞いてくるので、片桐は生き残るために坂井誠には見つからないように、対敵しないようにしたいと話せば、それを聞いた小林が驚く。
「いや、ちょっと待って! 確かに坂井のことはよく知らないけどさ。いつも平達のグループにイジメられていた坂井が要注意人物だっていうの?」
「うん、そうだよ」
「え~でも、それなら福島君の方がよっぽど危険人物じゃないの? 現に私達だって彼のせいでこんな目に遭っているんだしさ」
片桐が坂井誠の行動に注意すべきだと話せば、小林は優太の方が最も注意が必要なんじゃないかと言うが、片桐は「うん、確かにね」と言ってから小林に何故そう思ったのかを話す。
「そうだね。確かにそれについてはそうなんだけど、それについては今さら言っても何も始まらないからね。まあ、福島君には言いたいことは一杯あるだろうけど、危険を回避したいなら気を付けるのは坂井誠だよ」
「……納得出来ないけど、洋平君がそう言うなら。でもさ、なんで坂井なの? 平も十分注意すべき人物じゃないの?」
「だって、平は裸の王様だからね」
「え?」
「だからさ、平は周りの連中が変に煽てて調子に乗っているだけの癇癪持ちの痛いヤツだってこと。そして、そんな平達にイジメられているのに坂井は笑っていたんだ」
「え? それが理由?」
「ああ、多分だけど坂井は虐められていることを証拠に残していたんだと思うよ。それに福島君がそれを止めてから、今度は自分も平達と一緒になって福島君をイジメ始めたのは知っているでしょ」
「あ~確かにそうだったような気が……」
「だからね、これは僕の予想なんだけど、坂井は自分で証拠を集めて、ここぞという時に平達にその証拠を叩き付けて復讐するつもりだったんじゃないかなって」
「ここぞ?」
「そう。例えば……受験の前にとかね」
「あぁ~」
それに片桐は転移門を潜る前に少しだけ会話した優太の様子と、自分達の前に会話を交わしたオタクグループとの会話から、優太は率先して自分からは動かないだろうと直感していた。
そして優太が何もしてこないのなら、こういう状況を楽しみ嬉々として同級生だろうがなんだろうが、自分の楽しみの為には躊躇うことなく他者の命を奪えるのは坂井誠だろうと信じて疑わない。逆に平が何か仕掛けてくるのであれば、勢いだけのヤツだけど自分が死なない為の準備をするのに時間を掛けるだろうからと余り心配はしていない。
だが、問題は今の自分達……と言うか、自分の状況が一番危ういと嘆息する。
「なあ、春奈はなんとく分かるけど、君達はなんで僕に着いて来たのかな?」
「えっと、なんとなく……」
「だって、平は生理的に無理だから」
「同じく。アイツら、私のことをいつもヤらしい目で見てたし」
「私は……オタク君達よりもマシかなって」
「あぁ! それ、分かる。だって、あの子達ってござるござるって何時の時代の人間よって感じだもんね」
片桐の質問に小林以外の女子、杉本実久、永野美春、近藤樹里亜、下川信子、上山郁美が順に答える。
「だからって……」
「まあまあ、ここは異世界特有のハーレムだと思えばいいじゃん。ね?」
「ってことは、僕の好きにしても構わないってことだな?」
「……ちょ、ちょっと待とうか。私にもその……心の準備ってものが……」
「わ、私は構いませんよ! こんな貧素な身体でよければですが……」
「うん、片桐君なら大丈夫! バッチ来いだよ」
「ふふふ、聞くまでもないでしょ。なんなら触ってみる?」
「わ、私は保留でお願いします」
「ん~私もそれで」
「ハァ~……」
「よ、よかったじゃん洋平。でも、最初は私を選んで欲しいかな……」
片桐は最初は一人で転移門を潜ろうと思っていたが、横から小林春奈に右手を握られ「助けてよ」と言われては無視することも出来ず、小さく頷けば今度は左袖をキュッと掴まれた感触があり、そっちの方を見れば余り話した覚えもない大人しい性格としか覚えていない杉本実久が小声で「私もお願いします」と言えば、今度はズボンの左裾を握られて永野美春が「私もいいよね」と言えば、背中にドンと衝撃が走り「どうよ?」と近藤樹里亜がその自慢の豊かな胸を押し付けながら言ってくる。すると、このままじゃ危ないと悟ったのか残りの二人になった下川信子と上山郁美も「お願いします!」と上着を摘まんで来たのだった。
「って、女子六人か……ねえ、多くない? このままだとヘンな連中にも絡まれそうなんだけど」
「だから、守ってくれるんでしょ。頑張れ!」
「……ご迷惑は掛けませんから」
「もう、男でしょ」
「揉んどくか?」
「……頑張って下さい」
「頑張んな!」
片桐が女子を引き摺るような形になり転移門を潜ろうとしていたところで、後ろから優太の笑う声が耳に入ったので足を止め、後ろを振り返り優太に一言だけ文句を言う。
「ハァ~福島君。笑ってるけど、君のせいでもあるんだからね。忘れないでよ」
「うん、頑張れ委員長!」
「……もういいよ。じゃあね」
「うん、また……」
片桐は生き残るより前に色々なことが心配になり胃に軽い腹痛を覚えるのだった。
「ねえ、洋平君……ここってやっぱり……」
「うん、そうだね。確かに日本じゃないよね。第一、日本というか地球では太陽は一つだけど、ここはほら」
片桐がそう言って森の隙間から見える空を指差せば、そこには日本でも見た感じの太陽らしき光る恒星と、その横に同じ様に光って見える惑星が見えたのだ。
「確かにね。じゃ、ここが異世界だとしてだよ。これからどうするべきだと思う?」
「そうだね。先ずは坂井誠に見つからない様にしないとね」
「坂井? 坂井ってあの平達にいつもイジメられていた、あの坂井?」
「うん、その人物で合ってるよ」
片桐に対し今後、どうすべきなのかと片桐の幼馴染みでもある小林春奈が聞いてくるので、片桐は生き残るために坂井誠には見つからないように、対敵しないようにしたいと話せば、それを聞いた小林が驚く。
「いや、ちょっと待って! 確かに坂井のことはよく知らないけどさ。いつも平達のグループにイジメられていた坂井が要注意人物だっていうの?」
「うん、そうだよ」
「え~でも、それなら福島君の方がよっぽど危険人物じゃないの? 現に私達だって彼のせいでこんな目に遭っているんだしさ」
片桐が坂井誠の行動に注意すべきだと話せば、小林は優太の方が最も注意が必要なんじゃないかと言うが、片桐は「うん、確かにね」と言ってから小林に何故そう思ったのかを話す。
「そうだね。確かにそれについてはそうなんだけど、それについては今さら言っても何も始まらないからね。まあ、福島君には言いたいことは一杯あるだろうけど、危険を回避したいなら気を付けるのは坂井誠だよ」
「……納得出来ないけど、洋平君がそう言うなら。でもさ、なんで坂井なの? 平も十分注意すべき人物じゃないの?」
「だって、平は裸の王様だからね」
「え?」
「だからさ、平は周りの連中が変に煽てて調子に乗っているだけの癇癪持ちの痛いヤツだってこと。そして、そんな平達にイジメられているのに坂井は笑っていたんだ」
「え? それが理由?」
「ああ、多分だけど坂井は虐められていることを証拠に残していたんだと思うよ。それに福島君がそれを止めてから、今度は自分も平達と一緒になって福島君をイジメ始めたのは知っているでしょ」
「あ~確かにそうだったような気が……」
「だからね、これは僕の予想なんだけど、坂井は自分で証拠を集めて、ここぞという時に平達にその証拠を叩き付けて復讐するつもりだったんじゃないかなって」
「ここぞ?」
「そう。例えば……受験の前にとかね」
「あぁ~」
それに片桐は転移門を潜る前に少しだけ会話した優太の様子と、自分達の前に会話を交わしたオタクグループとの会話から、優太は率先して自分からは動かないだろうと直感していた。
そして優太が何もしてこないのなら、こういう状況を楽しみ嬉々として同級生だろうがなんだろうが、自分の楽しみの為には躊躇うことなく他者の命を奪えるのは坂井誠だろうと信じて疑わない。逆に平が何か仕掛けてくるのであれば、勢いだけのヤツだけど自分が死なない為の準備をするのに時間を掛けるだろうからと余り心配はしていない。
だが、問題は今の自分達……と言うか、自分の状況が一番危ういと嘆息する。
「なあ、春奈はなんとく分かるけど、君達はなんで僕に着いて来たのかな?」
「えっと、なんとなく……」
「だって、平は生理的に無理だから」
「同じく。アイツら、私のことをいつもヤらしい目で見てたし」
「私は……オタク君達よりもマシかなって」
「あぁ! それ、分かる。だって、あの子達ってござるござるって何時の時代の人間よって感じだもんね」
片桐の質問に小林以外の女子、杉本実久、永野美春、近藤樹里亜、下川信子、上山郁美が順に答える。
「だからって……」
「まあまあ、ここは異世界特有のハーレムだと思えばいいじゃん。ね?」
「ってことは、僕の好きにしても構わないってことだな?」
「……ちょ、ちょっと待とうか。私にもその……心の準備ってものが……」
「わ、私は構いませんよ! こんな貧素な身体でよければですが……」
「うん、片桐君なら大丈夫! バッチ来いだよ」
「ふふふ、聞くまでもないでしょ。なんなら触ってみる?」
「わ、私は保留でお願いします」
「ん~私もそれで」
「ハァ~……」
「よ、よかったじゃん洋平。でも、最初は私を選んで欲しいかな……」
片桐は最初は一人で転移門を潜ろうと思っていたが、横から小林春奈に右手を握られ「助けてよ」と言われては無視することも出来ず、小さく頷けば今度は左袖をキュッと掴まれた感触があり、そっちの方を見れば余り話した覚えもない大人しい性格としか覚えていない杉本実久が小声で「私もお願いします」と言えば、今度はズボンの左裾を握られて永野美春が「私もいいよね」と言えば、背中にドンと衝撃が走り「どうよ?」と近藤樹里亜がその自慢の豊かな胸を押し付けながら言ってくる。すると、このままじゃ危ないと悟ったのか残りの二人になった下川信子と上山郁美も「お願いします!」と上着を摘まんで来たのだった。
「って、女子六人か……ねえ、多くない? このままだとヘンな連中にも絡まれそうなんだけど」
「だから、守ってくれるんでしょ。頑張れ!」
「……ご迷惑は掛けませんから」
「もう、男でしょ」
「揉んどくか?」
「……頑張って下さい」
「頑張んな!」
片桐が女子を引き摺るような形になり転移門を潜ろうとしていたところで、後ろから優太の笑う声が耳に入ったので足を止め、後ろを振り返り優太に一言だけ文句を言う。
「ハァ~福島君。笑ってるけど、君のせいでもあるんだからね。忘れないでよ」
「うん、頑張れ委員長!」
「……もういいよ。じゃあね」
「うん、また……」
片桐は生き残るより前に色々なことが心配になり胃に軽い腹痛を覚えるのだった。
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