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第1章
29 ぎゅ。
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「…リュカ、戻ってきて!」
邪心竜の名前をずっと考えてた。
本当はいいこなのに邪心、とついた呼び方をするのは可笑しいと思っていた。
今、するりと名前が口から出た。その名前がしっくりとくる。
リュカは羽根を広げると翠の胸へと飛び降りた。
「させない!」
瞳はリュカが翠の元へと戻るのを阻止しようとするが青い影、マドカが先に動いて二つの剣によりそれが失敗する。悔しそうに瞳は唇を噛み締めた。
「…次は必ず邪心竜を奪ってやるから」
捨て台詞を残して瞳は姿を消した。
「……リュカ」
翠はリュカを抱き止めた。ぎゅう、と抱き締める。キュイイと鳴くその声に怯えた色は宿っていない事に安堵する。頭を撫でると心地良さそうに赤い瞳を
細めて魂が融合した。
初めて邪心竜、リュカを認めることができた。
向こうの世界では翠は殻にこもり嫌なことを言われてもなんの反応も示さなかった。
耳を塞ぎ、心のなかで諦めの言葉ばかり言っていた。それはなんの解決にはならないが、邪心竜は目覚めることはない。
時を止まらせていただけ。
「……あのう、ごめんなさい。わたくし、酷い言葉を言ってしまったわ。なんであんな言葉を言ってしまったのでしょう」
メリンダはゴブタンの元へと歩み寄るとおずおずとした様子で謝った。
「おいらも、かっとしちまった。短気はよくねぇよな。すまねえ」
ゴブタンは頭を掻くと謝る。
翠は二人がお互いに謝るのを見てほっと胸を撫で下ろした。
「…スライムが発生する時に出る匂いは精神を一時的に混乱させる作用がある。穴を埋めようとしていたんだろうが、他の方法を考えよう」
翠から事情を聞いたライゼは、なるほどと頷くと言った。過剰に不満を爆発させてメリンダとゴブタンが言い争いになってしまったのは、精神混乱作用が原因だったらしい。
ふと、翠の体から力が抜けた。倒れそうになるとマドカが抱き止める。
「…ん、ありがとう、マドカ」
礼を言う翠を見つめるマドカの瞳が濡れていた。眉が下り元気がない。何も言わずぎゅう、とマドカは翠を抱き締めた。
「ミドリ、ごめん。君を危険な目にあわせた。僕は馬鹿で……あの時から随分ときがたつのに、…」
今にも泣きそうだ。翠よりマドカの方が年上に見えるのに今は、幼く見える。
翠はよしよし、と慰めるようにマドカの頭を撫でた。余計にマドカの顔が泣きそうにくしゃりと歪む。
「大丈夫だよ。泣かないで、マドカ」
「……泣いてない」
「そうだね。マドカは強いものね」
「僕がミドリを守る。もう2度と危険な目にあわせない……ミドリは僕の大切な愛しい人だから」
ふい、とマドカは翠から視線を外すが抱き締めるのを止めずにお姫様抱っこして頬を擦り寄せた。
「もう、あついですわ!さてさて、日が暮れそうですわね。わたくしの屋敷に泊まって下さいな」
メリンダは二人を見て態とらしい声を出した。
辺りは薄暗くなっている。城へ戻る途中で真っ暗闇になる。ここはメリンダの言葉に甘える方が安全だ。
翠達はメリンダの屋敷へと向かった。
邪心竜の名前をずっと考えてた。
本当はいいこなのに邪心、とついた呼び方をするのは可笑しいと思っていた。
今、するりと名前が口から出た。その名前がしっくりとくる。
リュカは羽根を広げると翠の胸へと飛び降りた。
「させない!」
瞳はリュカが翠の元へと戻るのを阻止しようとするが青い影、マドカが先に動いて二つの剣によりそれが失敗する。悔しそうに瞳は唇を噛み締めた。
「…次は必ず邪心竜を奪ってやるから」
捨て台詞を残して瞳は姿を消した。
「……リュカ」
翠はリュカを抱き止めた。ぎゅう、と抱き締める。キュイイと鳴くその声に怯えた色は宿っていない事に安堵する。頭を撫でると心地良さそうに赤い瞳を
細めて魂が融合した。
初めて邪心竜、リュカを認めることができた。
向こうの世界では翠は殻にこもり嫌なことを言われてもなんの反応も示さなかった。
耳を塞ぎ、心のなかで諦めの言葉ばかり言っていた。それはなんの解決にはならないが、邪心竜は目覚めることはない。
時を止まらせていただけ。
「……あのう、ごめんなさい。わたくし、酷い言葉を言ってしまったわ。なんであんな言葉を言ってしまったのでしょう」
メリンダはゴブタンの元へと歩み寄るとおずおずとした様子で謝った。
「おいらも、かっとしちまった。短気はよくねぇよな。すまねえ」
ゴブタンは頭を掻くと謝る。
翠は二人がお互いに謝るのを見てほっと胸を撫で下ろした。
「…スライムが発生する時に出る匂いは精神を一時的に混乱させる作用がある。穴を埋めようとしていたんだろうが、他の方法を考えよう」
翠から事情を聞いたライゼは、なるほどと頷くと言った。過剰に不満を爆発させてメリンダとゴブタンが言い争いになってしまったのは、精神混乱作用が原因だったらしい。
ふと、翠の体から力が抜けた。倒れそうになるとマドカが抱き止める。
「…ん、ありがとう、マドカ」
礼を言う翠を見つめるマドカの瞳が濡れていた。眉が下り元気がない。何も言わずぎゅう、とマドカは翠を抱き締めた。
「ミドリ、ごめん。君を危険な目にあわせた。僕は馬鹿で……あの時から随分ときがたつのに、…」
今にも泣きそうだ。翠よりマドカの方が年上に見えるのに今は、幼く見える。
翠はよしよし、と慰めるようにマドカの頭を撫でた。余計にマドカの顔が泣きそうにくしゃりと歪む。
「大丈夫だよ。泣かないで、マドカ」
「……泣いてない」
「そうだね。マドカは強いものね」
「僕がミドリを守る。もう2度と危険な目にあわせない……ミドリは僕の大切な愛しい人だから」
ふい、とマドカは翠から視線を外すが抱き締めるのを止めずにお姫様抱っこして頬を擦り寄せた。
「もう、あついですわ!さてさて、日が暮れそうですわね。わたくしの屋敷に泊まって下さいな」
メリンダは二人を見て態とらしい声を出した。
辺りは薄暗くなっている。城へ戻る途中で真っ暗闇になる。ここはメリンダの言葉に甘える方が安全だ。
翠達はメリンダの屋敷へと向かった。
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