8 / 8
完結
しおりを挟む僕が悪いことなんて分かってるよ。
でも、男もなら分かってくれるはず…
僕は、僕は、童貞なんだぁー!!!
女の子とイタしたいんだよ!!
一生に一度くらいは!!
あの柔らかいおっぱいに顔を埋めたい!
アンアン言わせたい!!
それの、何がいけないんだよぉーーー!!!
僕はミチさんに電話をした。
「もしもし?ミチちゃん?遅くにごめんね?」
『あ、どうしたんですかぁ?ヒロキさぁん♡』
あー、癒やされる~♡
「あのね、僕、ほら前に言ってた家庭の事情で、急に今月中に仕事を辞めないといけなくなっちゃって」
僕は、以前のタケル襲撃事件のことを家庭の事情で誤魔化している。
タケルは兄弟と説明してる。
それで納得してくれるミチちゃんは、本当に可愛い。
『え~っ?!困るぅ~、ミチ、ヒロキさんいないと、もうお仕事行けない~っ』
あ~っ、かわいい!
甘ったるくて最高。
ニヤニヤするのを止められない。
「僕もだよ、ミチちゃん♡でも、仕事は辞めても、また会えるから」
『えー?本当にぃ?じゃーあ、お泊りも出来るのぉ?』
ゴクン、と唾を飲む。
頭の中はパラダイスだ。
「もっ、もちろんだよ!ミチちゃんとお泊りなんて最高だなぁー!早く行きたい」
「どこに行きたいって?」
ガッシリと僕のスマホは別の手に握られていた。
『どーしたんですかぁ?ねぇ、ヒロキさぁ~んっ、お泊り、いつにしますぅ?初めてのお泊り、楽しみぃ~っ♡ミチ、エッチなパンツ買っちゃう♡』
ぐいぐい上げられたスマホの音量で、静かな部屋にミチちゃんの声が響く。
「あ、あの、ちが、これは」
僕の手から、いや、頭から、全身から汗が大量に流れ出す。
これ、脱水症状になるんじゃないだろうか。
「へえ、エッチなパンツね」
地獄の門が開いた音がした。
「ほら、あの女にちゃんと説明してやれよ」
僕は涙目だ。
分かってる。
さっき、プロポーズを受けたばっかりなのに、女の子に電話してお泊りの約束するなんて、僕はクズだ。
「ま、待って、タケル、説明は、会社で」
スマホをぐいぐいと顔に押し付ける鬼の目が底光りしてる。
「今だ。俺の見てる前で、全部話せ」
『ヒロキさぁん?なぁにぃ?聞こえなーい。ミチ、お風呂入っちゃうぞぉ♡ミチの裸、想像しちゃダメなんだからねっ♡』
あ、僕のスマホにヒビ入った。
「みっ、ミチちゃん!あのね」
更にヒビが入る。
「ごめっ、山田さん!僕には恋人がいて」
更にメキメキとスマホが悲鳴を上げる。
「ちがっ、結婚するんだ!愛するパートナーと!だから、お泊りには行けないんだ!ごめん!!」
『はぁ?!なにそれ!二股ってこと?ふざけてんのか、このカス!クズ!死ね!』
ブツッと切れた画面と、にんまり笑う悪鬼。
僕は涙目で肩で息をしてる。
「まあ、ギリ合格点だな」
「ひどいよ、タケル…こんな無理矢理」
僕は気が動転していたんだ。
だから、失言にも気付かなかった。
「彼女と、本当に泊まりになんて行くわけないだろ?ただの冗談だよ。どうせ仕事も辞めるんだから、そのくらい許してくれたって」
「二股って言ってたが?」
一段と声が低くなって、僕は初めて自分の失言に気付いた。
「お前、俺とあのクソ女を二股かけてたってことだよなぁ?このまま謝るなら聞き流してやろうかと思ったが、気が変わった」
僕は最低な男です。
パートナーの気持ちを考えられない最低男です。
二度と浮気なんてしません。
タケルだけを生涯愛し続けます。
だから、だから
「ぐすっ、ひっく、ひいっく、も、許してぇっ」
僕は近くの公園に連れて来られていた。
深夜とはいえ人も通らないとは言えない公園のベンチ。
そこで、僕はタケルの膝にうつ伏せに乗せられ丸出しにされて尻を叩かれていた。
「あ?何をだ?俺は、一体、どれから許せばいいんだ?」
「ごべんだざいぃ~っ!!いだっ!やべでっ」
ベチン、ベチン、と叩かれる間、僕のチンコはタケルの太腿の間にがっちり挟まれている。
抜くことは出来ないし、叩かれて衝撃は来るわで、よく分からない液体でぐちゃぐちゃだ。
「俺になんの不満があるんだ?言ってみろ」
絶対言えない。
この状況で不満なんて言ったら、次に何されるかなんて分からない。
「ない、ないよぉ、ぞんなのっ、ごめんよぉ、いだっ!」
もう真っ赤に腫れてるだろう尻が悲鳴を上げてる。
絶対、会社で椅子に座れない。
「じゃあ、なんでこんなに浮気ばっかりする」
ぐうの音も出ない。
タケルは、こんなにイケメンなのに、付き合ってから一度も浮気したことはない。
「ふぐっ、それはっ、あがっ!いだいっ、も、ゆるして」
「答えろ」
タケルの手が大きく振りかぶるのが見えた。
僕は痛いのが嫌で必死だった。
逃れたかっただけなんだ。
「おっ、女の子とエッチしたいだけだよ!」
言ってしまった。
タケルが止まった。
「ご、ごめ、ちが、これは、その」
言い訳が思い付かない。
そろりとタケルを見上げると、タケルは完全に止まっていた。
ゆっくり膝から降りて、タケルを見上げても、タケルは止まったままだ。
ズボンを急いで上げて、タケルに呼びかける。
「た、タケル?えと、ごめんね?今のは、ほんの冗談」
「…行くぞ」
僕の手首をがっしり掴まれてタケルに連れ去られた。
恐くて振りほどくなんて出来なかった。
「ここで済ませろ」
着いたのは、風俗店。
「え?え?」
僕はタケルとお店を交互に見て、頭がハテナばっかりだ。
「女とヤるのは、プロなら許す」
そういうことらしい。
僕はタケルからお金を押し付けられて、店に押し込まれた。
なんだか不思議な気分だけど、お店の説明なんかを聞いてるうちに、そんなことは忘れてた。
「お兄さん、こういうとこ初めて?かわいい顔してるわね~っ、モテるでしょ」
ついてくれた女の子は、女の子というよりも、僕のお母さんみたいな歳だった。
「は、はい。初めて、です」
でも緊張してる僕を優しく優しく解してくれて、僕は安心していられた。
ああ、これで僕もようやく童貞卒業。
「…出来なかった」
あんなに良くしてくれたのに。
僕は勃たなかったんだ。
なんでか、一度も反応すらせず、もちろん射精もしなかった。
お母さんのような嬢は困った顔をして、僕を慰めてくれた。
「こんなおばちゃんじゃあ、仕方ないわよね。ごめんなさいね?気にしちゃだめよ」
僕は、優しいおばちゃんに身体を綺麗にしてもらって、店の外へ出た。
そこには、ガードレールに寄りかかって僕を待つ、めちゃくちゃ格好いい男がいた。
そりゃ、そうだ…
「ごめん…無理だったわ」
アハハ、と乾いた笑いの僕に、タケルは何も言わなかった。
プロポーズした日に他の女と泊まりの約束されて、挙げ句に女を抱かせる為に風俗店まで連れて来て、頑張って稼いだ金も渡して…
タケルの後ろをついて歩きながら、僕は泣いていた。
「た、たけ、る…ぼく、ごめっ、も、ごめんっ」
遂には歩けなくなって道端にへたりこんだ。
あんまりにも僕が最低過ぎて、指に光る指輪が眩しくて、耐えられなかった。
タケルは黙って僕を抱き上げて連れ帰ってくれた。
力強い腕に抱かれながら、何も言わない寂しげなタケルの顔を見詰めて…
僕は、タケルの為だけに生きることを心に決めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やっとヒロキが完全に俺のものになった。
全く、あいつはすぐにフラフラするから困ったもんだが、そこもかわいいから仕方ない。
今では、仕事も辞めたヒロキは新居の高層マンションで手料理を作って毎日、俺を出迎えてくれる。
やらしい尻を振りながら。
風俗店でヒロキが勃たないことくらい分かってた。
なにせ、もう何年もケツやら乳首やらでイクことばっかり教え込んで来たんだ。
今更、チンコ弄られたって反応するわけない。
しかも、あの店は地元じゃ評判の下手くそババアがいる店だ。
誰でも無理だとネットで調べた。
まあ、初体験のヒロキに分かるわけもない。
あのくそ女も、まあ結果的には良い働きをしてくれた。
これで二度とヒロキは俺から離れないし、女にも行かない。
「えっ、こんなの挿れるの?どうしよ…」
ヒロキが、腰をくねくね揺らしながら目の前のオモチャを見てる。
今は、俺が仕事で出張中、ヒロキが寂しくないように挿れるオモチャを選定してる。
絶対に浮気させないための対策だ。
「どれでもいいし、全部でもいい」
腰をするっとなで上げると、ひゃん、と悦ぶ。
「やだ、想像したら…」
モジモジと前を抑えるヒロキは、あれから、すっかり俺に対して素直になった。
「全部買って、毎日違うモノを咥え込めばいい」
穴の周りを、ふにふにと弄ってやれば、はぁ、と息が上がって目がトロンとしてくる。
「うん♡そうする♡じゃあ、届くまでは、タケルので栓して?」
する、と服を脱いで誘ってくる美しいヒロキ。
「奥まで、な?」
「うれしっ♡」
早く会いたい一心で、寝る間も惜しんで出張を繰り上げて山のような土産をぶら下げて帰って来たら、配達員の男を玄関で咥え込んで喘いでいる場面に出食わすまで、あと2週間。
「…殺す」
「ちがうのっ、これはっ」
完
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる