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第36話 ダンジョンボスのお宝
しおりを挟む「さて、お待ちかねのお宝タイムだね」
サラさんはそう言うと、俺を見てフフッと笑う。
ダンジョンのボスであるワイバーンを倒して、俺たちは最下層にある部屋の奥にある部屋の前にいた。
主に、ダンジョンの最下層にはボスがいる部屋とそのボスが守っている部屋がある。
そして、そのボスが守っている部屋の中にお宝が隠されていることが多いのだ。
「はい! どんなお宝があるか楽しみです」
俺はサラさんに笑みを返してから、その扉を押し開けた。
すると、そこには大きな石柱が中央にあった。
そして、その中央には宝箱が置かれていた。
「どうやら、お宝は宝箱の中にある物だけみたいだね」
サラさんは部屋の中に入って、辺りをキョロキョロと見渡しながらそう言った。
ダンジョンの宝箱が隠されている最下層の部屋には、部屋の中に雑に金品財宝がばら撒かれているというケースもある。
ただ今回はそんなことはなく、あるのは目の前に置かれている宝箱だけ。
「……この宝物だけ守れれば、他はいらない。そんな考えだと嬉しいんですけどね」
「C級ダンジョンだからね。その可能性も高いと思うよ」
単純に守る宝がなくて一個だけ守っていた。
そんな最悪なケースもなくはないけど、それはあくまで下級ダンジョンの場合だ。
C級のような中級ダンジョンで今の状況なら、レアな物が宝箱の中にあるのではと期待をしてしまう。
「ソータよ、早く開けて確かめよう」
ケルは宝箱がある石柱に前足を掛けながら、俺を見上げている。
サラさんを見ると、サラさんもこくんと頷いていた。
「じゃあ、開けますよ」
俺は宝箱に手をかけて、一呼吸おいてから一気に宝箱を開いてみた。
そこにあったのは――
「本?」
宝箱に隠されていたのは、ただ一冊の本だった。
それを取り出してよく見ると、少し年季の入っているような状態であることが分かった。
本の状態としては、表表紙以外は普通の本として読むことができるような状態だ。
ただ肝心の表表紙が読めないので、どんな本なのかが分からない。
「宝箱に隠すほどの本。定番だと魔導書とかかな?」
「かもしれませんね。どうしよう、現代魔法の魔導書とかだと俺読んでも分からないんですよね」
サラさんは俺が本をパラパラとめくると、少しだけ覗き込んできた。
サラさんの言う通り、ダンジョンの宝として魔導書が見つかることは珍しくない。
魔法を使うものにとっては嬉しいお宝かもしれないけど、現代魔法がまともに使えない俺にとってはほぼ無価値に等しいのだ。
……売れば結構なお金になったりするかもしれないけど、売り物にするには状態が良くないよね。
「あれ?」
そんなことを考えながら本をめくっていると、俺は一つの違和感を抱いた。
「魔導書に書かれている魔法の原理が理解できますね。ん? 前にリリスが自慢げに見せてきた現代魔法の魔導書はよく分からなかったのに、なんで分かるんだろ?」
目の前の魔導書は軽く目を通しているだけなのに、なんとなく意味が分かる。
なんでこんなにさらさらっと頭に入ってくるんだろう?
俺が顎に手を当てて考えていると、ケルが俺の脚に前足をかけてきた。
ヘッヘッヘッと子犬のような息遣いをしてから、ケルは俺を見上げる。
「そんなの一つしかあるまい。古代魔法の魔導書なのだろう!」
ケルに言われてハッとして、俺は本に視線を落とす。
現代魔法を理解できない俺が理解できる魔導書。確かに、それは古代魔法が書かれている魔導書以外ありえないかもしれない。
……これは、ひょっとして、とんでもない物を拾ってしまったのでは?
想像以上の収穫を前に、俺は驚きを隠せなくなっていた。
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