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第68話 拘束できない拘束魔法
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「ソータ、いたぞ」
「うん、こっちにはまだ気づいてないみたいだね」
俺とケルは『魔力探知』に反応した魔物の元に向かっていた。
音を極力立てないようにしながら向かうと、そこには耳標を付けたケルビンが目的もなくウロウロとしていた。
どうやら、いきなり当たりみたいだ。
ケルビンの様子を少し観察していると、家畜として飼われたせいで警戒心が薄いのか、ケルビンは天敵のことなどまるで眼中にないかのように悠々としていた。
ウロウロとしているのも心配な感じではなく、まるで自分の庭が広がったと勘違いしているようにも見える。
……男たちが言っていたように、こんなケルビンを長期間放置していたら全員食べられてしまいそうだ。
俺はほどほどの距離までケルビンに近づくと、地面に手を付けて『黒影鞭』を使う準備をする。
魔法の発射位置をケルビンの足元に固定させると、俺は一気に仕掛ける。
「『黒影鞭』」
ケルビンは突然ゆらりと表れた『黒影鞭』を見た瞬間、ビクンッと体を跳ねさせた。
「ピィィーー!」
そして、『黒影鞭』がケルビンを拘束するために動くよりも早く、一目散に茂みの奥に逃げていった。
後に残ったのは、ただゆらゆらと揺れている『黒影鞭』があるだけ。
捕まえるとか以前に、ケルビンの動きに反応することもできなかった。
あれ? これって本当に拘束魔法だよね?
まさか、止まっている木とかにしか使えないなんてオチじゃないよね?
そんな思いもしなかった事態を前に、俺とケルは目をぱちくりとさせてしまっていた。
「そ、ソータよ」
「分かってる、うん。ケルの言いたいことは分かってるよ。今の感じだといつまで経っても捕まえられないよね」
まだ戦う意思を多少でも見せてくれれば隙ができるかもしれないけど、一目散に逃げてしまう敵を相手にするには今の魔法は悠長すぎる。
もっと魔法に速さを出さないと、逃げ足の速いケルビンを捕まえることはできない。
速さ? あれ?
そういえば、昨日魔法の勢いを調整する修行をしたばかりだ。
「……圧縮率」
「ソータ?」
「もしかしたら、今の状態の『黒影鞭』は霧みたい状態なのかもしれない。それをもっと圧縮させれば、本当の鞭みたいにしなやかに動かせるかも」
魔導書に『黒影鞭』が書かれていたのは、圧縮率のことが書かれていたページよりも後ろの方だった。
これって、『黒影鞭』を使うためには、魔法の圧縮率を変える技術が必要になるとも読み取れる。
魔導書の初めの方に書かれていたことが、魔導書に載っている魔法を扱うために必要なものだとしたら……。
うん、試してみる価値は十分にある。
「ケル、急いでさっきのケルビンを追いかけよう。次はいける気がする」
「ほう、早くも対策を考えるとは、さすがソータだ」
ケルはヘッヘッヘッと可愛らしい子犬のような息遣いして、俺を見上げる。
「『魔力探知』には、まだ反応あるね」
「ふむ、急いで追いかけよう」
俺たちは顔を合わせて頷いてから、先程逃がしてしまったケルビンの後を追うのだった。
「うん、こっちにはまだ気づいてないみたいだね」
俺とケルは『魔力探知』に反応した魔物の元に向かっていた。
音を極力立てないようにしながら向かうと、そこには耳標を付けたケルビンが目的もなくウロウロとしていた。
どうやら、いきなり当たりみたいだ。
ケルビンの様子を少し観察していると、家畜として飼われたせいで警戒心が薄いのか、ケルビンは天敵のことなどまるで眼中にないかのように悠々としていた。
ウロウロとしているのも心配な感じではなく、まるで自分の庭が広がったと勘違いしているようにも見える。
……男たちが言っていたように、こんなケルビンを長期間放置していたら全員食べられてしまいそうだ。
俺はほどほどの距離までケルビンに近づくと、地面に手を付けて『黒影鞭』を使う準備をする。
魔法の発射位置をケルビンの足元に固定させると、俺は一気に仕掛ける。
「『黒影鞭』」
ケルビンは突然ゆらりと表れた『黒影鞭』を見た瞬間、ビクンッと体を跳ねさせた。
「ピィィーー!」
そして、『黒影鞭』がケルビンを拘束するために動くよりも早く、一目散に茂みの奥に逃げていった。
後に残ったのは、ただゆらゆらと揺れている『黒影鞭』があるだけ。
捕まえるとか以前に、ケルビンの動きに反応することもできなかった。
あれ? これって本当に拘束魔法だよね?
まさか、止まっている木とかにしか使えないなんてオチじゃないよね?
そんな思いもしなかった事態を前に、俺とケルは目をぱちくりとさせてしまっていた。
「そ、ソータよ」
「分かってる、うん。ケルの言いたいことは分かってるよ。今の感じだといつまで経っても捕まえられないよね」
まだ戦う意思を多少でも見せてくれれば隙ができるかもしれないけど、一目散に逃げてしまう敵を相手にするには今の魔法は悠長すぎる。
もっと魔法に速さを出さないと、逃げ足の速いケルビンを捕まえることはできない。
速さ? あれ?
そういえば、昨日魔法の勢いを調整する修行をしたばかりだ。
「……圧縮率」
「ソータ?」
「もしかしたら、今の状態の『黒影鞭』は霧みたい状態なのかもしれない。それをもっと圧縮させれば、本当の鞭みたいにしなやかに動かせるかも」
魔導書に『黒影鞭』が書かれていたのは、圧縮率のことが書かれていたページよりも後ろの方だった。
これって、『黒影鞭』を使うためには、魔法の圧縮率を変える技術が必要になるとも読み取れる。
魔導書の初めの方に書かれていたことが、魔導書に載っている魔法を扱うために必要なものだとしたら……。
うん、試してみる価値は十分にある。
「ケル、急いでさっきのケルビンを追いかけよう。次はいける気がする」
「ほう、早くも対策を考えるとは、さすがソータだ」
ケルはヘッヘッヘッと可愛らしい子犬のような息遣いして、俺を見上げる。
「『魔力探知』には、まだ反応あるね」
「ふむ、急いで追いかけよう」
俺たちは顔を合わせて頷いてから、先程逃がしてしまったケルビンの後を追うのだった。
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