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本編

確かにあれは、初恋だった※(マクシミリアン視点)

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それは12になる頃だっただろうか……お嬢様と初めて出会った時。
……彼女の事を天から下りてきた月の妖精のように美しいと感じたのを確かに覚えている
月の光を編み込んだかのようにしっとりと輝く銀糸の髪、青い湖面の色の瞳、薄紅色の美しい唇……そこから覗く歯は真珠のように白い。
白い頬は薄く朱に染まり、顔の造作はまるで芸術品のように狂いがない配置をしている。
その人間のものとは思えない造形に幼い私は見惚れ……一瞬で恋をした。
――――しかし。

『嫌だわ父様、こんなみすぼらしい従者なんて』

鈴が鳴るような美しい声で、お嬢様は毒を吐き……美しい初恋の思い出は壊された。
奇跡のように美しい初恋の少女は、苛烈で醜い、ただの女だった。
彼女は息をするように毒を吐き、私を詰る。
それに暴力が加わったのはいつの頃からだっただろうか。
頬を打たれ、腹を蹴られ、その度に犯してやろうかと目の前が真っ赤になった。
お嬢様に対し……心の中に憎しみが堆積していくのを日々感じていた。
しかしその憎しみを肥料にするかのように……彼女への執着が増していくのも知っていた。

ああ。美しくて醜い私のお嬢様。
いつか貴女を攫い……細い体を組み敷いてその美しい湖面の色の瞳を絶望の色に染めて差し上げたい。
私に快楽を覚えさせられ、泣きながら私に縋り懇願するしかない貴女が見たい。
犬だと蔑み嗤う私の子を孕み、絶望する貴女が見たい。
向けられるのは、憎しみでいい。
愛が欲しいなんて絵空事は空想するだけ無駄なのだ。
今は『物』を見る目で私を見る貴女が、私に対して感情を宿してくれるのならば向けられる感情なんてどんなものでもいい……私は、貴女の感情を乞うただの奴隷だ。

……とある日。

『ねぇマクシミリアン。わたくしの目の前で自慰をしてみせて?お願いよ』

そんなとんでもない事をお嬢様が言い出した。
恐らく茶会仲間の性質が悪い『お友達』に要らぬ知識を吹き込まれたのだろう。
彼女の『お願い』は『命令』と同義だ。
逆らうとどんな目に遭わされるか分からない。
私は椅子に座るお嬢様の前に傅いて……自らの物を取り出し、ゆっくりと扱いた。
目の前に視線を向けると足を組んだお嬢様のドレスの裾から……白く美しい脛が見える。
彼女は自分の美貌に無頓着なところがある……その艶めかしさに全く気付いていないのだろう。
私の物はそれを目にし、明らかに質量を増した。

『それが男の物なの?随分と醜いものなのね。それとも犬のものだから醜いのかしら?』

お嬢様は馬鹿にし嫌悪する表情と……少しの性的な興奮を秘めた顔で私を詰る。
そして靴の先で……私の物を軽く突いた。
先走りがお嬢様の靴を汚すのを……ゾクゾクとした気持ちで眺めてしまう。
お嬢様の美しい瞳に私の醜い物が映り、彼女がそれを一心不乱に見つめているのだと興奮する。
――――ああ、お馬鹿なお嬢様。
今貴女を組み敷く力がある男が……貴女の処女を奪えるそれを曝け出しているのですよ?
このまま押し倒して、奪って差し上げましょうか?
泣きながら助けを求める貴女の処女を乱暴に奪い、貴女を愛する父兄にそのお姿を見て頂くのも素敵ですね。
お嬢様はどんな……絶望にまみれた素敵なお顔をするんでしょう。
そんな妄想をしながら扱くとあっという間に高みに達してしまい、飛び散った白い飛沫は彼女の足をしたたかに汚し、彼女は引き攣った顔で小さな悲鳴を上げた。

『なにをするのっ……!馬鹿な犬ね、ちゃんと舐めて綺麗にしなさい!!』

激高して彼女は言うけれど……それは、おみ足を舐めろという事ですか?なんて無防備な提案をするのか。
白い彼女の足を、そっと手で取る。
そして殊更に丁寧に舌を這わせゆっくりと舐めると……彼女の頬が羞恥ではなく官能で赤く染まるのを見た。
……ああ、お嬢様。そんなに簡単に男に隙を見せてはいけませんよ。
他の誰かに簡単に純潔を奪われてしまいそうで、私は心配になってしまいます。
……私がきちんとお守りしないと。
この苛烈で愚かで性格が捻じ曲がり……だけど美しく隙だらけで愛らしい、私のお嬢様を。
お嬢様を手折るのは、私でなければならない。
私の初恋を、こんなにまで醜く捻じ曲げてしまったのは貴女だ……責任を取って頂きませんとね?


この侍従に自慰を強いるという奇妙な遊びは、お嬢様が飽きるまで続いた。
……お嬢様は隙だらけの貴女を見て欲望の色を目に宿す私に気付かない……お嬢様、貴女は本当に愚かですね?
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