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第一章
相も変わらず
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気を取り直したディックは、作業に戻り、ワゴンへ手を伸ばす。
そうして、手にした皿の上には、小さなシュークリームが幾つも積み上げられていた。
しかし、シュークリームというには明るい焼き色だ。
白いに近い生地でクリームが包まれているような見た目をしており、その横には、ミントがそえられている。
ディックはその皿を、エレナへと差し出すと、
「ほい。落とさないようにな」
「わぁ、おいしそうだね。ありがとう、ディッ――あっ!」
唐突に声を上げるエレナ。
なんの前触れもなく、横からにゅっ、と滑らかな肌をした腕が伸びてきたのである。
驚きの表情でエレナが硬直していると、その手はシュークリームをひとつ掴み、そのまま引っ込んでいってしまう。
エレナはその手を追いかけるようにして視線を滑らせると、むっとした表情をメリッサに向けた。
「ちょっとぉ……」
「いいじゃない、まだいっぱいあるんだから」
メリッサは手に持ったシュークリームを口の中へ放り込むと、エレナへいたずらっほく笑みを向ける。
「そういう問題じゃなくて。欲しかったんなら、一個ちょうだい、ってひとこと言ってよ。それに、いくらでも作ってもらえるんだから、メリッサもディックに頼んだらいいじゃん」
「確かに、エレナの言うとおりだわ。ごめんなさい、次からはそうするわね」
言葉ではそういいつつも、メリッサの口調には誠意はいっさい感じられない。
結局は、エレナを困らせたかっただけなのだろう。彼女は確信犯といわんばかりに、くすくすと笑い声をもらした。
「あんたさぁ、本当にエレナちゃんからかうの、好きだよなぁ」
苦笑いを浮べるディック。
彼はまた別の皿をワゴンから手に取り、それをメリッサへ渡す。
それを受けて、メリッサは楽しげに声を返した。
「そうね、否定はしないわ」
彼女はそう言いながら、受け取った皿へと視線を落とす。
そこには、ブルーベリーのソースが控えめにかけられたチーズケーキがのっており、その上に、それと同じ果実がちょこんと乗っている。
そのフォルム美しさに、メリッサは満足そうに目を細めた。
「あらあら、素敵。ありがとう、ディック」
その言葉に、「うぃ」とディックは曖昧に声を返すと、「さて――」とこの場に座っている全員の椅子――その肘かけの辺りへと視線を滑らせていく。
テーブルを囲んでいる椅子の肘掛けには、その全てに物を置くスペースが取り付けられている。
ティーカップのソーサー一枚と小皿一枚くらいなら、一緒に乗せてもぎりぎり収まるようなサイズだ。
今はそれぞれ、ティーカップを乗せたソーサーをそこに置き、そのスペースを使っている。
その様子をぐるりと見回すと、ディックはワゴンに乗せてあったポットを手に取り、紅茶の香りを漂わせながら、各椅子へと向かっていった。
そうして、手にした皿の上には、小さなシュークリームが幾つも積み上げられていた。
しかし、シュークリームというには明るい焼き色だ。
白いに近い生地でクリームが包まれているような見た目をしており、その横には、ミントがそえられている。
ディックはその皿を、エレナへと差し出すと、
「ほい。落とさないようにな」
「わぁ、おいしそうだね。ありがとう、ディッ――あっ!」
唐突に声を上げるエレナ。
なんの前触れもなく、横からにゅっ、と滑らかな肌をした腕が伸びてきたのである。
驚きの表情でエレナが硬直していると、その手はシュークリームをひとつ掴み、そのまま引っ込んでいってしまう。
エレナはその手を追いかけるようにして視線を滑らせると、むっとした表情をメリッサに向けた。
「ちょっとぉ……」
「いいじゃない、まだいっぱいあるんだから」
メリッサは手に持ったシュークリームを口の中へ放り込むと、エレナへいたずらっほく笑みを向ける。
「そういう問題じゃなくて。欲しかったんなら、一個ちょうだい、ってひとこと言ってよ。それに、いくらでも作ってもらえるんだから、メリッサもディックに頼んだらいいじゃん」
「確かに、エレナの言うとおりだわ。ごめんなさい、次からはそうするわね」
言葉ではそういいつつも、メリッサの口調には誠意はいっさい感じられない。
結局は、エレナを困らせたかっただけなのだろう。彼女は確信犯といわんばかりに、くすくすと笑い声をもらした。
「あんたさぁ、本当にエレナちゃんからかうの、好きだよなぁ」
苦笑いを浮べるディック。
彼はまた別の皿をワゴンから手に取り、それをメリッサへ渡す。
それを受けて、メリッサは楽しげに声を返した。
「そうね、否定はしないわ」
彼女はそう言いながら、受け取った皿へと視線を落とす。
そこには、ブルーベリーのソースが控えめにかけられたチーズケーキがのっており、その上に、それと同じ果実がちょこんと乗っている。
そのフォルム美しさに、メリッサは満足そうに目を細めた。
「あらあら、素敵。ありがとう、ディック」
その言葉に、「うぃ」とディックは曖昧に声を返すと、「さて――」とこの場に座っている全員の椅子――その肘かけの辺りへと視線を滑らせていく。
テーブルを囲んでいる椅子の肘掛けには、その全てに物を置くスペースが取り付けられている。
ティーカップのソーサー一枚と小皿一枚くらいなら、一緒に乗せてもぎりぎり収まるようなサイズだ。
今はそれぞれ、ティーカップを乗せたソーサーをそこに置き、そのスペースを使っている。
その様子をぐるりと見回すと、ディックはワゴンに乗せてあったポットを手に取り、紅茶の香りを漂わせながら、各椅子へと向かっていった。
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