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第二章

準備は整った

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 ワゴンのデザートがベラルカ以外の全員に渡されるころには、ベラルカの皿は空になっていた。ディックは、それぞれのテーブルに置かれていたカップに紅茶を注ぎなおすと、最後にベラルカにデザートを渡した。
 そんな彼に、シルクハット穏やかな笑みを向けると、

「ディック、今日もありがとう。とりあえず、あとは好きにしていいから。厨房のほう、よろしく」

「了解。そんじゃ。おつかれさんな」

 ディックはそう言って部屋の出入り口までワゴンを引く。
 すると扉に何らかの力が働き、勝手に開いた。

「おお、どうも」

 ディックは扉を“開けてもらった”ことにたいして、シルクハットの少年に言うと、そのままワゴンを引いて部屋を出ていった。すると今度は、扉は勝手にしまっていき、閉じきったあと、シルクハットの少年は、扉へ向けていた手を、すっと、下ろしたのだった。

 + + + + + +

 *『カチッ カチッ カチッ』

「うわ、三回もなった……」

 エレナはそう呟くと、ここにいない誰かに向けるように、気の毒そうな視線を椅子のしたあたりへと向けた。別に、そこに対象の相手がいると思ってのことではない。六人の少女たちが座る椅子の座る部分には穴があいており、その尻の下――椅子の下には、どこかへ繋がる管が伸びており、どこに繋がっているのかもしらず、彼女はなんとなく視線を向けたのだ。
 そして、三回『カウント』されたということは、六人の少女のうち三人が、その管へ音もたてずにオナラを送り込んだことを意味しており――、

「黙っていれば、誰がしたのかわからないのに。エレナってば本当に、嘘がつけないよね」

「ああ、そっか」

 肩をすくめるプリルの言葉に、エレナは「あはは……」と笑ってごまかす。

「まあ、気をつけたところで、エレナには意味がなさそうね」

「メリッサ、今のどういう意味さ」

「エレナったら、何をむくれているの? 裏表がないって、褒めてあげたんじゃない」

「そういう風には聞こえなかったけど?」

 と、エレナとメリッサが言い合っていると、

「まあまあ。っていうかエレナ、さっき何かの話を言いかけてなかった?」

「へ……?」

 プリムの言葉に、首をかしげるエレナ。
 だがすぐに彼女が行っている話を理解すると、

「ああ! そうそう! メリッサだよ! メリッサがさあ――」

 ~ ぷううぅぅううぅぅっ!

 と――放屁音が鳴る。
 メリッサの尻からだった。
 ちなみに、この場において、それば別に失礼なことではない。そういった特殊なルールがこの部屋にはあり、むしろその放屁こそが、彼女たちがこの場所で与えられている役割なのだから、誰一人、目くじらを立てるものはいないのである――本来ならば。

 *『カチッ』

 シルクハットの少年が今のぶんをカウントする、その目の前で、
エレナの顔が怒気によって赤くなっていった。

「もう! こんなタイミングでしないでよ!」

「なにを言ってるの、エレナ? 雑談よりも、与えられた役割の方が優先なのは、あなたにもわかるわよね?」

「そ、それは……! けど、今のは絶対わざと――」

「まったく、エレナってば。オナラなんて、狙ってだせるもんじゃないでしょ?」

 声を荒げるエレナと対照的に、メリッサは落ちついた口調で返していく。それを受け、エレナは、ふっと、我に返った様子で答えた。

「あ、そっか……。まあ、それは、たしかに……」
 
「でしょ? だから、仲直りしましょ?」

 メリッサはそう言うと、隣の席からエレナへと手を差し出す。
 それを受け、エレナはぎこちなくも笑みを返して言った。

「う、うん。っていうか、わたしもちょっと怒りすぎたかも、だから……」

 エレナはそう言って、メリッサの手元へと視線をおろし、「ん?」と疑問の表情を浮べた。
 握手を求めるかのように差し出されたメリッサの手が、グーに握られていたからだ。
 そして、首をかしげるエレナの鼻のほうへと、その手は伸びていき――ふわっ。
 メリッサはエレナの鼻先で――その手を優しく開いたのだった。
 とたん、

「――お!? ごへぇ!?」

 奇声を上げながら、顔を背けるエレナ。
 彼女の嗅覚に、どろっとしたような卵系の臭気が、染み渡っていったのである。
 理由は単純、メリッサが――握りっ屁をしたのだ。
 とんでもない臭いだと言わんばかりに、エレナは鼻をこすりながらメリッサを無言のままにらむ。
 くらっとくる臭いに堪えるのに精一杯で、声を出せないのである。
 そんな彼女の視線の先で、メリッサはくすっと、笑みを浮べると、

「ごめんあそばせ」

 と、優雅な素振りで、肩をすくめて見せたのだった。
 そんなメリッサの態度を受け、エレナの顔が、怒気で真っ赤になっていく。
 そして彼女は、少しずつ回復していく精神を振り絞ると、

「これだよ! これ! なんでかしらないんだけど! 最近メリッサってば、握りっ屁にはまっちゃって……っ! はしたないっていうか……ねえ! みんなもそう思うよねぇ!?」

 エレナはぐるりと、場にいる面々を見回し、同意を求めていく。
 そして、あはは、と苦笑いを浮べるプリルを見て。
 興味なさそうにあくびをするロゼリアへと視線を滑らせていき。
 シルクハットの少年。
 べランカ。
 と、最後にポーラに視線を向けようとしたとき――ふわっ。
 エレナの鼻が、何かに包まれた。
 そして、むわっとするような熱を感じたエレナが恐る恐る視線を下げると、そこにあったのは、ボーラの手だった。

「……え?」

 エレナが丁度息を吐いたタイミング。
 疑問の表情を向けるエレナに、

「ごめん。ちょっと、やってみたくなっ……た」

 ポーラは感情の見えない表情で言った。
 そこで、エレナは反射的に息を吸い込んでしまい――、

「……っ!?!?」

 エレナは目を見開くと、自分の鼻を抑え、ポーラの手を避けるようにうずくまってしまった。

「だいじょう……ぶ?」

「いやいや、心配するならやらなきゃいいのに」

 ポーラの言葉に、プリルが苦笑いをする。

「だって。こんなになるとは、思わなかった……し。もしかして、わたしのオナラって、くさ……い?」

「そんなこと聞かれても困るよ。まあたぶん、それを把握してるのが、一人だけいると思うけど……」

 ポーラの問いを受け、プリルは意味ありげに、シルクハットの少年へと、視線を向ける。その視線に、少年は、ふ、と笑みを浮かべるだけで、何も答えなかった。
 なにやら知っているようではあるのだが、口にはしない様子で、そんな彼にたいして、プリルは肩をすくめると、

「まあ、オナラなんて、誰でも臭いでしょ?」

「――それは、どうかしら?」

 プリルの横から、ロゼリアが言う。
 そして、問うような視線を向けられる中、

「わたしのは――臭くないわ」

 ロゼリアは鋭さのある声で、そう口にした。
 そのあまりに堂々した態度に、言葉を失う一同。
 そんなわけがないと言うのもおかしな話であり、なにより彼女のもつ雰囲気が、一同の声を詰まらせていたのだ。
 しかし、一人だけ周りと違う反応をする人物がいた。
 その者へ、ロゼリアはにらむように目を向ける。

「……なによ」

 ロゼリアの視線の先には、唐突に帽子を深くかぶり、表情を隠すシルクハットの少年がいた。
 彼のその反応に、ロゼリアは怒ったように、顔を赤らめる。
 先ほどの態度を少し崩し、むすっとするロゼリアに、シルクハットの少年は返事をしようとし――くっくっ。
 とおかしそうに声を漏らし、肩を振るわせた。
 その様子に、ロゼリアの顔がますます赤くなっていき、そんな彼女へ、

「ごめん、なんでもないよ」

 シルクハットの少年は顔をあげて言う。
 その目じりには、笑ったあとのような、うっすらとした涙のあとがあり、それを見たロゼリアは――黙り込んでしまった。
 普段の彼女なら、思ったことは堂々と口にしていただろう。
 しかし彼の前では、思うようにいかないのか、何かを言いかけて、結局何もいわないままシルクハットの少年を視線の外にやると、ロゼリアは静かに溜飲を下げたのだった。
 だが、ほんの少し、もやっとしたものが残っていたのか、ロゼリアはその鬱憤を晴らすように、ぐっと腹に力を入れた。
 すると、

 ~ ぷううぅぅううぅぅ

「あっ……」

 ロゼリアの尻から高音が鳴り、彼女の口からは普段出さないような驚いたような声が漏れた。
 コントロールに失敗したといわんばかりに、彼女は慌てて視線を向けた先で、

 *『カチッ』

「へえ……、なるほど……」

 シルクハットの少年は『今の分』をカウントをすると、少しだけ驚いたように、手にしている小物に眼を向ける。
 その様子に、ロゼリアはなにやら顔を赤くすると、

「なるほど、って……、なにがよ?」

「ん? いや、なんていうか……」

 シルクハットの少年は、ロゼリアと手元の小物を交互に見ると、

「まあ……、なんでもないよ」

「――っ!?!?」

 濁された言葉に、ロゼリアの怒気は上昇する。
 言葉の中に何が含まれているのか、さっぱり読み取ることができないような少年の表情に、ロゼリアの中にあるもやもやは膨らんでいく一方であり、彼女は搾り出すような声で言った。

「本当に、こっちは恥ずかしい思いをしてまで、あなたの企みにつきあってあげてるっていうのに……。感謝が足りないんじゃないかしら?」

「うーん、感謝ならいつもしてるんだけど……。まあ確かに、ロゼリアの言うとおり、ちょっと足りないのかもしれないね」

 シルクハットの少年が言うと、ロゼリアは「へ?」と、驚きの声をあげた。
 だが何かを隠すように咳払いをすると、

「へえ……、そんなふうに思うのなら、その足りない分の感謝で、また……」

「ん? 何の話?」

 ロゼリアの話に、プリルが首をかしげる。
 その様子に、ロゼリアは、なんでもないといったふうに手をパタパタ、振ると、

「別に、たいしたことじゃないわ。ゲームに勝った時の、ちょっとした、あれよ」

「ん? ああ、あれね……。エレナが罰ゲームを受けた……」

 プリルは何かを思い出した様子でぽんと手を叩くと、エレナへと視線を向けた。
 その先で、エレナはようやく顔を上げると、

「うへぇ。酷い目にあった……。ポーラまで……、酷いよ」

「そんなに臭かった……の?」

 怒る元気すらないといったエレナに、ポーラは純粋な疑問を持って尋ねた。
 すると、エレナはやれやれといった風に口を開く。

「そりゃあ、オナラなんだし……。いや、それにしても、臭すぎだったような……」

 嗅いだ臭いがよっぽどのものだったのか、げんなりした様子でエレナは言うと、

「へえ……。ちなみに、メリッサと、どっちの方が臭かっ……た?」

「え? いや、どっちっていわれても……」

「あらあら。どうな臭いだったか、もう忘れちゃったの?」

 返事に困っているエレナに、メリッサが訊く。
 すると、エレナは「そうじゃなくて」と、表情をほんのりむっとさせてそちらに振り向き、

「そんなことをいきなり聞かれても――」

 と、そこで、エレナは言葉を失ってしまう。
 振り向いた先で、メリッサが唐突に、エレナの鼻を、手のひらで覆ったからだ。
 そして、その手の中にはもちろん――、

「――っ!? ぐひゃぁ……っ!」

 またもやメリッサの握りっ屁によって、エレナうずくまってしまった。
 すると、それを見ていたポーラがまたもメリッサに便乗しようと握りっ屁をしようとして、

「そのへんにしておきなさい」

 いつのまにか食事を終えていたべランカが、ポーラの手を押さえる。彼女はもう一方の手で鼻をつまみながらいった。

「部屋に臭いが散っちゃうでしょ」

「あ、確か……に」

 ポーラはくんと鼻をならし、今気づいたと言いたげに少しだけ顔を歪ませる。

「やっぱり、わたしのって……、くさ……い?」

「わかんないわよ。メリッサのぶんのも、混じっちゃってるし」

「そっ……か」

 べランカの言葉に、ポーラは納得する。
 そんな、彼女にべランカはやれやれと肩を竦めながら、なにやらもぞもぞと腰の位置を動かし、

「そんなことより、私達の役割は」

 ~ ぶむぶおおぉぉおおぉぉ!

「こっちに、空気を注ぎ込むことでしょ? “無駄うち”をしてる場合じゃないわ」

 *『カチッ』

 べランカは豪快なオナラを挟みながら言った。
 その様子に、ポーラは、「おお……」、と驚きの声を漏らすと、

「わたしよりも……、絶対にべランカのほうが、臭……い」

「は――はあ!? 何言ってるのよ!? わたしのは音は凄いけど――」

「いっぱい……、食べてる……し」

「そ、それは……っ」

 言葉に詰まるべランカ。
 先ほど、この場にいる面々より、だいぶ遅れて食事を終えたべランカだったが、それは彼女の食べるスピードが遅いからではなく、全員の倍近くの量の食事をとっていたからである。
 ポーラの言う理屈はでたらめではないので、言い返せなかったのだった。
 そんなべランカの様子を見て、ポーラは彼女の肩をぽんぽん、と叩くと、

「大丈夫……。オナラが臭くても、引いたりしないから……ね?」

「……ん?」

 唐突にポーラに話を振られ、首をかしげるシルクハットの少年。
 彼女は首を傾げたが、すぐに「ああ」と、いわれたことに気づくと、

「うん。まあ、それもそうなんだけど。一つ言っておくと、オナラの臭さっていうのは、食事の量だけでは決まらないんだ。だから、べランカのが、必ずしも“そう”とは限らないとだけ説明しておくよ」

「なんで、私の方を見て言うのかしら……」

 話の途中で唐突に視線を向けられ、ロゼリアがぎろりと、シルクハットの少年を見返す。
 その様子に、シルクハットの少年はいたずらっぽく笑うと、

「さあ、ね」

「…………」

 なにやら言いたげだが、やはり黙り込んでしまうロゼリア。
 そして、先ほどの話を聞き、べランカがぱっと表情を明るくしており、

「けど……、臭いことは、否定されてな……い」

 ポーラの言葉に、べランカが再び表情を曇らせる。そして、ポーラの様子に、シルクハットの少年は、やれやれといった風に肩をすくめると、

「なかなか、するどいね」

「それって……」

 言葉の意味を尋ねようとするべランカに、少年は、あははと、苦笑いを向けながら、

 *『カチッ』と、カウントをし。

 彼からの助け舟がなかったことに、べランカはがくっと方を落としたのだった。
 すると、そんな彼女を励ますように、プリルが言う。

「とりあえず、この椅子の上でやる分には、臭いはわからないんだから。気にすることないって」

 と、彼女の言うとおり、少女たちが座っている椅子にはとある細工がされてあり、しっかりと椅子に座った状態でオナラをしたのであれば、臭いが散ることはなく。それは物理的にではなく、シルクハットの少年だけが知っている、謎の理屈によって、そのようになっていた。
 その話をプリルがしていると、

「そうそう。だから、メリッサみたいに変なことしなければ、本来、臭いなんて気にしなくてもすむんだよ」

 いつのまにか復活していたエレナが、メリッサをにらみつけながら言った。だが、メリッサは笑みのままそれを受け流し、

「だって、エレナってば、いい反応するんだもん」

 その言葉に、エレナは肩を落とす。

「最近。ことあるごとに、メリッサが握りっ屁をしてくるから、本当にまいっちゃうよ……」

「あらら……」

 プリルが苦笑いを浮べる。
 そして、他の面々は、今の話に一切興味を持っていない様子で、そのことに、エレナはさらにげんなりとし、溜息をついた。

「そんなことより、さっきのは話はどうなっちゃったのかしら?」

「ん?」

 ロゼリアに言われ、首をかしげるシルクハットの少年。
 なんの話しをされているのか、わからないといった様子に、ロゼリアは少しだけむっとすると、

「まさか、自分で言ったことを、忘れちゃったんじゃないでしょうね?」

「自分で……?」

「…………」

 シルクハットの少年が尋ねるが、ロゼリアはなぜか黙り込んでしまった。そして、彼女は鋭い視線を少年へと向け、そこで――はっと、何かに気づいたような顔をする。
 よく見ると少年の口元が、ぷるぷると、笑いを堪えるように震えており、

「あ、あなた……」

「俺、なんていったっけ?」

「だから……」

「ん?」

「……」

 穏やな笑みを浮かべて首をかしげる少年に対し、なぜか言葉詰まらせるロゼリア。そんな彼女の様子に、うっすらと困惑の色を少女たちが浮べるが、誰一人、そのことを尋ねるものはいない。なんとなく訊きずらいのだろう。それに、悩んでいる風でもないのもあり、少女たちはさりげなく見守ることにしたようだ。
 そんななか、

「その……、ごほうび、というか……。一緒に、あの……」

「――どうしたのロゼリア? なんだか、ポーラの物まねしてるみたいだよ?」

 声を絞り出すように喋るロゼリアをみて、あはは、とおかしそうにわらうエレナ。
 どうやら少女たちの中に、一人だけ例外がいたようだ。
 そして、そんなエレナへ、

「――――」

 ロゼリアがぼそっとなにやら呟き、すっと視線を向けた瞬間、

「……ぇ?」

 まるで、あけてはいけない箱を開いてしまったかのように、エレナは表情を凍りつかせながら、問うような表情をロゼリアへ向けた。
 しかし、ロゼリアはそれに取り合わず、

「ねえ、メリッサ」

 そう呼んで、「ん?」と返事をするメリッサへ、ロゼリアは穏やかな笑みを向けて言った。

「あとで、ちょっと話しがあるんだけど」

「へえ……。話、ねえ」

 メリッサはそう言いながら、ロゼリアとエレナを交互に見ると、

「それって、素敵なお話?」

「ええ。メリッサが喜びそうな、素敵なお話よ」

 ロゼリアが言うと、メリッサは「へえ……」と、含みのある笑みを浮かべ、ふとポーラのほうをちらっと見た後、

「ええ、もちろん。っていうか、ポーラも、どうかしら?」

 と、唐突に話題を振られたポーラだったが、彼女はなぜかその言葉を待っていたかのように、

「うん……。さりげなく、ばかにされたような気がする……し」

 ポーラはそう言って頷く。
 そして、そんなやりとりに不穏なものを感じたエレナが、青ざめた表情をしていると――、

「さて。そういうことなら、さっさと終わらせちゃいましょ? ね、そろそろ頃合よね?」

 ロゼリアはシルクハットの少年へ、問うような視線を向ける。

「ん? うーん……。まあ……、なるほど……」

 シルクハットの少年はなにやら思考した後、「うん」と頷き、

「わかった。それじゃあ、今回はこんなところで――終わらせてあげよう」

「っていうことだから。皆、わかってるわよね?」

 ぐるりと、なぜか仕切るような視線を少女たちへ向けるロゼリア。それがなにやらしっくりきているのもあり、少女たち半ば流されるように頷き、ある準備をはじめたのだった――。
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