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第一章:

目覚めたら負け犬令嬢①

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 ――なんだか、えらく悲しいモノローグを聞かされた気がする。

 (あー、ゆうべも結構遅くまでゲームしてたからなぁ)

 やりこみつづけてはや一ヶ月、とうとう夢にまで出てきてしまったようだ。

 何はともあれ今日は土曜日、部活はなし、ついでに日頃『寝ぎたなすぎ!』なんてひどいことを言ってくる家族も朝からお出掛け。こんなうれしい三拍子が揃ってるとなれば、心行くまで朝寝坊しなきゃもったいない。いそいそと布団を被り直し、寝返りを打とうとして、

 「あいたっ! いっ、だだだだ……!」

 突然、全身に走った痛みに悲鳴を上げた。あわてて飛び起きて身体を確認する。

 「……え、なんでミイラ状態?」

 思わず痛みも忘れてぽかんとする。昨日まで健康そのものでかすり傷すらなかったのに、両手両足が隙間なく包帯でぐるぐる巻きになっていたからだ。服で見えないけど、ごわつく感触的に胴体も同じような状態だろう。

 と、いうか。

 「ここ、どこだ……?」

 ようやく見渡した視界に入ってきたのは、明らかにいつもの自室ではない光景だった。

 天井も床も全てが板張りで、奥のすみにドアがひとつ、中央に丸い木のテーブルと椅子がひとつずつ。わたしが寝ていたベッドのわきにこれまた木製のテーブルと水差し、手が届くほど近くに窓がひとつあって、カーテンの隙間から日の光が射し込んでいた。

 ……うん、見たものは理解できた。でも状況がまったくわからない。

 「……どこかのログハウス? いや、県内のキャンプ場はお休み中だし。誕生日サプライズとか一回もされたことないし、そもそもまだ先だし」

 落ち着くためにあれこれ口に出してみると、気のせいか声にも違和感がある。まさかここもどうにかなってるのでは、と不安に駆られたところで、窓と反対側の壁に鏡がかかっているのに気づいた。

 慎重にベッドから降りて、素足のままそーっと近付いて覗き込む。中からは案の定、毎日のように対面している自分の顔が見つめ返して――こなかった。

 「、えっ」

 思わず二度見した鏡には、ひとりの女の子が映っていた。歳はわたしと同じくらいだけど、差し込む光にキラキラ輝く銀色のロングヘアとか、アメジストでもはめ込んであるのかというほど鮮やかで透きとおった瞳とか、指で撫でたらするっと滑りそうな白くてきめの細かい肌とか……とにかく華やかで鮮やかな色合いと、ちょっと人間離れした整いっぷりを持つ絶世の美人さんだ。許されるんだったらいくらでも眺めていたい。

 ただ問題なのは、その子がわたしの『えっ』と全く同時に口元を動かしたってことと。ついでにほんの数時間前、具体的には寝入る直前まで、テレビ画面越しにこれでもかと凝視していた推しキャラと全く同じ顔立ちだ、ってことなわけで……

 混乱のあまりちょっと気が遠くなった。いつの間にか息まで止まっていたのに寸でのところで気が付いて、あわてて深呼吸を繰り返す。やっぱり包帯まみれだった喉元に片手を当てて、慎重にことばを絞り出す。

 「なんでわたし、になってるの……!?」

 自分の口から出てきたのは、間違いなく。ここ一ヶ月ばかりゲームをやり込んで、セリフを丸暗記するほど聞きまくったキャラクターの声と、全く同じだった。

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