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一章 夢の中での出会い

11 堀口純菜5

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「そんなことある?」

 純菜は目覚めてから、昨日の夢が繋がった出来事を考えていた。ただ、晴美から起こすように頼まれていたのだから、そんなに時間を掛けている場合では無い。
 少し出遅れたが、パンとスープを準備し、後は紅茶を入れたら晴美の寝室へ。寝起きの悪い晴美をなんとか起こしたら、さっさと朝食を済ませて自分の部屋に戻る。

 そうして部屋を掃除したら、勉強机に座ってスマホを操作していた。

「やっぱりあんなにハッキリした設定を聞いた人なんて居ないわね……」

 純菜が何を調べているかと言うと、夢が繋がる現象。都市伝説レベルの話しかネットには載っていないので、昨夜の夢は現実だったのでは無いかと考えてしまう。

「でも、まぁ、もう会う事は無いでしょ……あっ! アイツの話で忘れていたけど、ビリビリした魔法の事を聞き忘れてた。なんかアイツも熱そうにしてたのよね……ああっ! キス……アイツが現実に居るって事は、アイツがファーストキスの相手!? 最悪だ~~~!!」

 更に怖い現実。聞き忘れが多々あるからもう一度会いたくなっていたが、ファーストキスを奪われた事を思い出したので、あんなヤツは現実に居ないと言い聞かせる純菜であった。


 部屋で騒いでいたのだから、晴美に心配されていたけど「掃除してたら蜘蛛が出た」との嘘で乗り切る純菜。
 それからは気分を変えよと好きなラノベや漫画を読むが、キスの場面でヤンキーの顔を思い出してその都度本を閉じてしまう。
 恋愛物以外に絞ってなんとかファーストキスを払拭した所で寝る時間になったが、明日から学校が始まる事を思い出して憂鬱ゆううつに。なので、昨日中途半端に終わった異世界逆ハーレム物を思い浮かべて寝たのだが……

「なんであんたが居るのよ!」
「なんでお前が居るんだよ!」

 お城を出た所で、昨日の勇者パーティとバッティング。せっかくの楽しい時間が台無しだと喧嘩になってしまった。
 ただ、喧嘩は昨日散々やったので、お互い早くに冷静になった。

「てか、私の邪魔しないでって言ったよね?」
「邪魔も何も、こんなに近くに城を持って来られたら、どうしろって言うんだよ。そっちこそ遠くに移動してくれよ」
「私のせいにしないでくれ無い?」
「僕のせいにするなよ」

 お互い罪のなすり付け合いに発展はしたけど、何も解決にならないので純菜は話題を変える。

「そういえばなんだけど、昨日、服が燃えて熱がってなかった?」
「うん。めっちゃ熱かった。いつもだったら、マグマが掛かっても熱く無いのにな~……てか、忘れてた! どうなってるんだ??」
「今気付いたんだ……その事、ちょっと話し合わない?」

 勇者も感触や痛みが気になったので、純菜の生温い目は逸らして話し合う。

「元々は……ア、アレよね?」
「アレ? あぁ~……キ、キス……」
「照れないでよ」
「そっちこそ真っ赤だぞ」

 始まりはキスなのだから、二人ともファーストキスをしてしまったのでは無いかと顔が真っ赤。しばらくモジモジしていたが、勇者が別の事にも気付いた。

「あ、その前にもあったよ。王子を殴ったり蹴ったりしたら、いつもの感触じゃ無かった」
「あの時の? てことは……あなたとだけが、リアルな感触じゃ無いんだ。でも、次の日はいつもの感触だったけどな~」
「僕も次の日はいつもの感触だった」

 とりあえずリアルな感触の謎を解明する為に、お互いを触る案で纏まったけど、純菜は胸を腕で隠した。

「何処触ろうとした?」
「握手だよ! 何考えてんだ!!」
「目がやらしいのよ」

 冤罪を掛けられたと勇者はキレていたけど、本当は純菜の胸に目が行っていたのでそれ以上は怒らずに右手を出した。

「さ、さっさと握れよ」
「わ、分かっているわよ」

 ただし、純菜はまた照れて中々触れられ無い。親以外の人間に触れるのは久し振りだから、緊張もしている。勇者も一緒。先に手を伸ばしたのは、自分から触れる勇気が無かったからだ。
 それからどっちから握るかを話し合い、やはり変な所を触られたく無いと思った純菜が立候補して、勇者の手を握った。

「温かい……」
「思ったより柔らかい……」
「変な言い方しないでくれ無い?」
「いや……ゴメン」
「謝られるとこっちが困るんだけど……」

 今回は女子と触れてるせいで、勇者は悪い事している気分になって素直に謝る。純菜も言い過ぎたと目を伏せた。

「やっぱり、これってリアルな感触だよな?」
「ええ。体とかも触っていい?」
「いいけど……触る場所は先に言ってくれ」
「じゃあ、二の腕」

 ここからは、純菜が宣言して体を触りまくる。なので勇者はカチンコチン。女子にこんなに触られた事が無いから、ド緊張だ。
 純菜は腕を握ったり揉んだり、足所かお尻まで触るので勇者は変な期待。心音がドッキンドッキン鳴っていたが、純菜が感謝しながら離れると少し残念そうな顔になった。

「えっと……そっちも触る?」
「い、いい!」
「ちょっと! そんなに真っ赤になって拒否しないでよ! 胸とか触らせる訳無いでしょ!!」

 勇者としては女子に触れるのが恥ずかしいから拒否しただけなのだが、純菜は胸を揉ませようとする痴女に見られたと思って怒ってしまうのであった。
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